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【弁護士監修】名誉毀損に該当するネット書き込みと削除を依頼する方法
2019.11.09近年はTwitterやFacebookなどのSNSやブログ、掲示板などのように、インターネット上のコミュニケーションツールが誰でも手軽に使えるようになりました。そして残念なことに、そのようなツールの書き込みの中には、特定の個人や団体の名誉毀損にあたるようなものも散見されます。今回は、インターネット上の書き込みが名誉毀損にあたるケースと書き込みの削除を依頼する方法について解説します。
目次
インターネットで横行する誹謗中傷の書き込み
インターネット上で誰かに自分や自分のお店・会社の悪口を書き込まれると、たちまち拡散され、広く世の中に知れ渡ります。そうすると、社会的にさまざまな不利益を被る可能性が非常に高くなります。
誹謗中傷の書き込みにはどんなものがあるのか?
SNSや掲示板などでは、匿名でも使える手軽さからか、特定の個人や法人を攻撃したり誹謗中傷したりするような書き込みがされることも少なくありません。例として、以下のような書き込みが誹謗中傷にあたります。
- 「Aは前科者だ」
- 「○○社の営業部のBは経理部のCと不倫している」
- 「△△にあるラーメン屋Dの厨房でネズミが走り回っていたのを見た」
たとえ「ちょっと相手を困らせたかった」だけであっても、このような書き込みをすることは、その人の社会的評価を貶めることにつながります。
風評被害が広がると社会的不利益を被ることもある
一度インターネットに載せられた誹謗中傷の書き込みは、またたく間に世界中に広がります。そうすると、たとえその情報が根も葉もないデマであっても、誹謗中傷の対象となる個人・法人の社会的な信用を失墜させることになります。
個人であれば、結婚や就職・転職などのライフイベントの際に差しさわりが出てきたり、法人であれば売上が落ちたり、取引先と取引が停止になったり、最悪の場合倒産する可能性も考えられるでしょう。
誹謗中傷した人に対して責任を問うことができる
誹謗中傷をした人に対して、ドラマなどで「名誉毀損で訴えてやる!」という言葉を、誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。ドラマの中だけではなく、実際に誹謗中傷により不利益を被った人は、誹謗中傷する内容を書き込んだ人に対して、名誉毀損で訴えを起こすことが可能です。
ただ、誹謗中傷の内容によっては名誉毀損ではなく、侮辱や信用毀損などになることがあります。それぞれの内容については、後ほど詳しく解説します。
名誉毀損とは?書き込みが名誉毀損にあたるかどうかの判断基準
名誉毀損にあたるのは、他人の社会的信用をおとしめる書き込みになりますが、具体的にどのような書き込みが名誉毀損にあたるのでしょうか。ここでは、名誉毀損にあたるケースとあたらないケースを比較してみたいと思います。民事と刑事で要件が少し異なりますが、ここでは刑事の要件についてご説明します。
刑法第230条では、名誉に対する罪には次のように表記されています。
「公然」とは不特定多数の耳目にさらすことであり、「事実の摘示(てきじ)」とは具体的な事実を取り上げて言うことです。つまり、多くの人が見たり聞いたりできる公の場所(インターネット上を含む)で、特定の人にとって不利になるような事柄を言いふらすことをさします。
その内容が本当のことであっても、誹謗中傷された対象者の名誉を傷つけ社会的評価を低下させた場合は、名誉毀損にあたる可能性があります。ましてや、書き込み内容が事実無根で噂に過ぎない場合や投稿者の誤解や嘘、デタラメだった場合は、違法性が認められる可能性はより高くなります。
本名を書き込んでいない誹謗中傷なら名誉毀損は成立しないのか?
インターネット上には、相手の本名ではなくペンネームやハンドルネーム、源氏名(水商売のお店の中で使う名前)、イニシャル、伏字で誹謗中傷するケースが散見されます。本名を書き込んでいない場合の名誉毀損にあたるかどうかの判断は、同定可能性がポイントになります。
同定可能性とは、情報に触れた人が明らかに誰のことを指しているのか誰かわかる可能性のことです。読者が対象人物を特定できないような内容であれば、名誉毀損になる可能性は低くなります。しかし、有名なインフルエンサーのペンネームを取り上げて匿名掲示板に悪口を書き込むなどといったように、明らかに対象者が誰かわかる場合は名誉毀損が成立します。
過去に、「d党議員団の幹事長で中野区議会議員のCが性風俗のお店で買春をした」とインターネット上に書き込まれたという事件がありました。この事件で裁判所は、書き込みが行われた掲示板の性質も勘案し、「普通の読者の注意と読み方をもってすれば,『C議員』が原告を指すことは容易に理解することができる」と判断しました。
(東京地裁平成20年10月27日判決)
名誉毀損にあたるケース
インターネットの掲示板やSNSに「○○は逮捕歴がある」、「○○は風俗で働いている」など、他人をおとしめる内容の書き込みをすれば、名誉毀損にあたります。また、他人になりすまして、勝手に他人の写真や連絡先などをあげて「連絡待っています」などと書き込むことも同様です。
さらに、他人の名誉を傷つけるような書き込みをブログに転載したりSNSのタイムラインでシェアしたりすることも、名誉毀損にあたる可能性があります。他人の投稿を扱う際には注意しましょう。
名誉毀損にあたらないケース
一方で「◯◯はブス」、「◯◯は貧乏」のような、主観的な意見や個人の感想のような内容は名誉毀損にあたりません。ただし、後述の通り侮辱にあたることはあります。
また、SNSのDMで「殺すぞ」と書かれた場合も、偽計業務妨害罪などにあたることはありますが、名誉毀損にはあたらないケースになります(偽計業務妨害についても後述します)。名誉毀損は、書かれている内容が「具体的な事実」か「主観的な意見」かどうかで区別されます。
名誉毀損が違法とはならない3つの条件
公然と事実を摘示しながら他人の評価をおとしめるような書き込みをした場合でも、名誉毀損が違法とならないケースがあります。それは「事実の公共性」、「目的の公益性」、「内容の真実性」の3つの要件を全て満たす場合です。
1.「事実の公共性」がある
事実の公共性とは、摘示された事実が公共の利害にかかわる場合のことを指します。たとえば「大手上場企業Xが粉飾決算をした」、「有名大手企業Yの社長が大麻や覚せい剤を所持している」などの内容は、それがもし事実であれば、社員やその家族、取引先、取引銀行、株主などその企業を取り巻くステークホルダーに広く損害をもたらす可能性があるため、公共性があると考えられます。
2.「目的の公益性」がある
目的の公共性とは、書き込みをした目的が公益を図るためである場合のことです。たとえば誰かが「ある政治家Zが○○会社の役員から賄賂を受け取った」と書き込んだ場合、その目的が選挙のとき有権者に公正に投票先を判断してもらうことにあるのであれば、目的の公益性があると言えます。
3.「内容の真実性」がある
内容の真実性とは、書き込み内容が正しいことを指します。政治家や政府要人の贈収賄や不倫疑惑といった週刊誌に載るようなゴシップやスキャンダルでも、その内容の公共性や目的に公益性があり、摘示事実が真実であると認められれば、書き込まれた本人にとってどんなに不名誉なことでも違法性がないと判断されます。
名誉毀損で問われる法的責任
名誉毀損は、刑事と民事、両方で責任を問われる可能性があります。それぞれどのような責任を負うことになるのでしょうか。
刑法上では名誉毀損罪に問われる
刑法には「名誉毀損罪」という罪名があります。もし書き込みが名誉毀損罪に該当する場合は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
過去には、あるラーメンチェーン店を運営する甲野食品を名指しで「インチキFC甲野粉砕」「貴方が『甲野』で食事をすると、飲食代の4〜5%がカルト集団の収入に」などと書き込んだ事件がありました。この事件では第1審は無罪となったものの、控訴審では名誉毀損の成立を認め、30万円の罰金に処すとの判決が下り、次の最高裁でも控訴審の判断を支持し、罰金刑が確定しました。
(最一小判平成22年3月15日 判時2075号160頁、判タ1321号93頁)
ただし、名誉毀損罪は親告罪(被害者の刑事告訴がないと公訴提起ができない犯罪)なので、被害者が刑事告訴をしない限り、書き込みをした投稿者が罰せられることはないでしょう。
民事上では不法行為として責任を問われる
名誉毀損は民法上では不法行為にあたり、慰謝料や損害賠償を請求することができます。書き込んだ投稿者がわからない場合は、まず書き込み内容を保存(証拠保全)した上で、発信者情報を調査して投稿者を特定し、そこから慰謝料もしくは損害賠償請求をすることになります。具体的に慰謝料や損害賠償でいくらもらえる可能性があるのかについては、個々のケースで異なりますので、弁護士に一度相談されることをおすすめします。
名誉毀損にも時効がある
名誉毀損には時効期間がありますので注意が必要です。
刑事告訴できる期間
名誉毀損罪で相手方を刑事告訴できるのは、投稿者が特定できてから6ヶ月以内です。誹謗中傷の書き込みを発見した時点では投稿者が誰かわからなくても、発信者情報開示請求をするなどして投稿者が特定できるまではカウントされません。
慰謝料・損害賠償請求ができる期間
名誉毀損を理由として慰謝料や損害賠償請求をする場合は、以下の期間のうち、いずれか早いほうが時効期間となります。
- 損害と加害者(投稿者)の存在を知ってから3年
- 不法行為(誹謗中傷の書き込み)が発生してから20年
名誉毀損罪と混同しやすい犯罪や迷惑行為
名誉毀損罪とよく似た犯罪に、侮辱罪・信用毀損罪・偽計業務妨害罪があります。また、犯罪ではありませんが、プライバシー侵害も名誉毀損と混同しやすい迷惑行為です。それぞれの名誉毀損との違いについて、おさえておきましょう。
1.侮辱罪との違い
侮辱罪は、刑法第231条によると次のように定められています。
侮辱罪はたとえば「◯◯はブス」、「◯◯はうそつき」、「◯◯は不潔だ」などの発言や書き込みで、他人をおとしめる行為に対する罪のことを指します。近年の法改正で侮辱罪が厳罰化され、侮辱罪が認められれば、懲役等に処される可能性も出てくることになりました。
名誉毀損罪と侮辱罪は、ともに他人をおとしめる行為である点は共通しています。しかし、名誉毀損罪は具体的な事実を摘示するのに対し、侮辱罪は主観的な意見を述べるにとどまり、具体的な事実を摘示しないという違いがあります。
2.信用毀損罪との違い
信用毀損罪とは、刑法第233条によると次のように定められています。
信用毀損罪は虚偽の情報を流すことで、他人の信用をなくそうとする行為のことを指します。名誉毀損との違いは、流した情報の真偽です。名誉毀損では摘示した事実が真実であるかどうかを問いませんが、信用毀損罪は虚偽の事実であることになります。
また、ここでいう「信用」とは、支払能力や資力から商品・サービスの品質まで含む「経済的な信用」を意味します。たとえば、飲食店の口コミサイトに「レストラン◯◯では消費期限を過ぎた食材を使用している」というレビューを書き込まれたとします。もしこのレビューが虚偽ならば、書き込んだ人を信用毀損罪で訴えることができる可能性があります。信用毀損の対象は企業や団体になることが多いのですが、個人が対象になることもありえます。
3.偽計業務妨害罪との違い
偽計業務妨害罪は、前述した刑法第233条の後半部分にあたりますが、虚偽の情報を流すことで人の判断を誤らせ、営業妨害することを指します。ここでいう「業務」とは、会社やお店の業務のみならず、NPOやボランティア団体の非営利目的の活動も含みます。
名誉毀損罪との違いは、信用毀損罪と同様に虚偽の情報を流した場合、罪に問われる点です。信用毀損罪は嘘の情報を流すだけで成立しますが、偽計業務妨害罪は嘘の情報が流された結果、業務に支障が出たり売上が著しく下がったりした場合に成立するという違いがあります。
たとえば、ある消費者がSNSに「◯◯社の製品は品質がとても低いので買わない方がいい」と書き込んだ場合に、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
4.プライバシー侵害との違い
プライバシーの侵害は、私生活上の事実で、一般人の感受性を基準として他人に知られたくないと考えられる事実を公開されることを指します。プライバシー侵害の場合、個人情報や誰にも知られたくないプライバシーに関する情報が公開されてしまうことが要件に含まれます。
たとえば、「被差別部落の出身」「ゲイ(レズビアン)」という内容がプライバシー侵害の典型例です。名誉毀損は民事上だけでなく刑事上の責任も問われる可能性があるのに対し、プライバシー侵害で問われるのは民事上の責任のみという違いがあります。ただしプライバシー侵害が同時に名誉毀損にも該当すれば、刑事責任を問われる可能性がないわけではありません。
弁護士が名誉毀損の書き込みについて削除請求する方法
もしインターネット上で自分を誹謗中傷する書き込みを見つけたら、IT及びWEB関係で経験豊富な弁護士に相談しましょう。削除請求は次のような方法でできます。
1.書き込んだ本人に削除請求する
まず、書き込んだ本人を特定できていれば、その本人に対してメールもしくは専用のフォームから書き込みの削除を依頼します。ただし、掲示板や口コミサイトなどの場合は、書き込んだ本人でも削除できない場合があります。
個人で書き込んだ本人へ直に削除請求することは可能です。しかし、かえって逆恨みをされたり炎上したりして、逆効果になってしまうこともあるので注意が必要です。弁護士を間に立てれば、このようなリスクを減らすことができます。
2.運営会社や管理者に削除請求する
書き込んだ本人に削除を請求しても応じてもらえない場合や、本人に削除ができない場合は、SNSやブログ、掲示板の運営会社や管理者に削除請求をおこないます。各ウェブサイトのガイドラインや利用規約に削除方針が記載されているので、書き込み内容が方針に当てはまるか確認する必要があります。もし方針に当てはまっていれば、削除してもらえる可能性は高くなります。
この方法も個人で削除請求することは可能です。しかし、サイト管理人の対応が無い・遅い・悪いことも多く、一般の方の削除依頼は思うように受け付けてもらえない事例も頻繁に見られます。弁護士に依頼すれば、法律に則って書面や証拠を揃えて法的手続きを進めてもらえるので、サイトの管理人や通信事業者の対応が早くなることが期待できます。
3.裁判所への削除請求訴訟の提起や仮処分申立てをおこなう
書き込んだ本人にも運営会社にも削除してもらえない場合は、法的手段として裁判所に投稿の削除を求めて、訴訟提起や仮処分命令の申立てをおこなう方法があります。
一般的な訴訟の流れでは、裁判所に権利侵害を主張し立証し、訴訟内容を認める判決が確定した後に請求が実行されることになります。ところが判決はすぐに出るものではなく、判決を待つ間にも書き込まれた内容は、インターネット上で拡散されたままになってしまいます。そのため、判決を待つ間の被保全権利(守られるべき権利)を確保するため、仮処分命令の申立てによって訴訟手続きより早く、投稿を削除するよう裁判所から命令を出してもらうことができます。
ただし、仮処分命令の申立てには、権利保護が必要ありそうだと推測させるだけの証拠を裁判所に提出することと、担保金(10〜50万円程度)の支払いが必要です。その後、裁判所が仮処分命令を発令します。この時点で書き込みをした本人が削除に応じるケースは多く見られます。
インターネット上の誹謗中傷でお困りの方はご相談ください
インターネット上で自分や会社を誹謗中傷する書き込みを見つけたら、書き込みの削除を検討しましょう。ただちに削除しなければ、より多くの人の目に触れてしまい被害が拡大します。誹謗中傷に関する書き込みの削除は一刻を争うと言っても過言ではないため、そのような投稿を見つけたらすみやかにIT問題の経験豊富な法律事務所に相談しましょう。
インターネット上の誹謗中傷でお困りの場合は、ネット中傷記事の削除を得意とする弁護士が在籍している当事務所まで、お気軽にご相談ください。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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