名誉毀損

名誉毀損で逮捕されることはある?注意すべき2つのケース

2020.10.30
名誉毀損で逮捕されることはある?注意すべき2つのケース

インターネット上で他人を誹謗中傷した場合には、名誉毀損で訴えられることがあります。名誉毀損は、民事事件刑事事件の両方の可能性があり、被害者は慰謝料請求など民事事件のみで訴えることもあれば、これとあわせて名誉毀損罪として刑事告訴をすることもあります。そこで、名誉毀損が刑事事件となった場合に逮捕されることがあるのか、民事事件と刑事事件の違いなどについて説明します。

1.名誉毀損で逮捕されることはある?

名誉毀損で逮捕されることはある?

名誉毀損とは、他人の名誉を傷つける行為をいいます。名誉毀損をした加害者への責任追及の方法としては、民事事件刑事事件の2つがあります。被害者は、民事と刑事のいずれか又は両方により加害者を訴えることができます。

1-1.名誉毀損が刑事事件となった場合

まず、名誉毀損が民事事件となる場合、被害者は加害者に対して不法行為に基づく慰謝料請求をすることができます。これに対して、刑事事件となる場合には、被害者は警察に名誉毀損罪にあたるとして刑事告訴をすることができます。

刑事告訴が受理されて刑事事件として捜査が始まった場合、逮捕されるケースと逮捕されないケースがあります。一般的に、加害者に証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合には逮捕される可能性があります。もっとも、名誉毀損の場合には逮捕されることはそれほど多くはないでしょう。

1-2.民事事件と刑事事件の違い

民事事件とするか刑事事件とするかは、被害者の考え方次第です。被害者が、相手に慰謝料請求をしたいと考えれば民事事件となりますし、刑事告訴をしたいと考えれば刑事事件となります。

名誉毀損について刑事事件とした場合と民事事件とした場合とで、法律上の要件はそれほど大きく変わりません。ただし、刑事事件よりも民事事件の方が名誉毀損として責任追及できる範囲が若干広い傾向にあります。

例えば、刑事事件として名誉毀損罪が成立するためには、具体的な事実の摘示が必要です。具体的な事実の摘示とは、証拠等があれば一義的に真偽を判断できるような内容をいいます。例えば、「前科がある」といったものが具体的な事実の摘示にあたります。これに対し、具体的な事実の摘示を伴わない意見や論評による誹謗中傷については、刑事事件として名誉毀損罪は成立せず、より軽い罪である侮辱罪が検討されるにとどまります。

一方、民事事件としての名誉毀損では、具体的な事実の摘示がなかったとしても、人格攻撃に及ぶ場合など意見や論評として許される範囲を逸脱する場合には、不法行為に基づく慰謝料請求が認められることがあります。

2.名誉毀損で刑事事件に発展する2つのケース

名誉毀損で刑事事件に発展する2つのケース

もっとも、実際に被害者が刑事告訴をした場合、警察がなかなか告訴を受理してくれないことがあります。また、刑事告訴が受理されたとしても起訴されて有罪となることは多くありません。このため、名誉毀損の被害者は、刑事事件ではなく民事事件として加害者に慰謝料請求をすることが多いのが実情です。ただし、次のような場合には名誉毀損で刑事事件に発展することがあるため注意が必要です。

2-1.SNSをはじめとしたインターネット上の名誉毀損

最近増えているのがSNSや匿名掲示板などインターネット上での名誉毀損です。特にTwitterのようなSNSでは、匿名で投稿でき、リツイート機能によって簡単に不特定多数の人に投稿が拡散されます。このため、軽い気持ちでした誹謗中傷の投稿が拡散されて大きな問題に発展したり、誹謗中傷に複数の人が加担することで被害者が精神的に追い詰められたりしやすい側面があります。

実際に、有名人がインターネット上の誹謗中傷でうつ病になったとか自殺をしたという報道をよく目にするようになりました。このように、インターネット上の名誉毀損は大きな問題に発展しやすい傾向にあるため、名誉毀損罪として刑事事件となることがあります。

2-2.街中など多くの人が見ている場所での名誉毀損

名誉毀損が刑事事件となりにくいのは、証拠を残すことが難しいということも一つの理由です。あらかじめ名誉毀損が予測できる場合であればともかく、口頭で名誉毀損を受けた場合には、とっさに録音をするような時間的余裕はないためです。

しかし、街中での演説や、繁華街で野次馬が集まるような口喧嘩であれば、目撃者が多数いますし、通行人がスマホで動画を撮影している可能性もあります。このため、名誉毀損の証拠集めがしやすく、結果として被害者から刑事告訴をされる可能性が高まります。

3.名誉毀損で訴える場合も訴えられた場合も弁護士に相談

名誉毀損で訴える場合も訴えられた場合も弁護士に相談

名誉毀損の被害者が刑事告訴をする場合には、警察に告訴状などを提出することになります。その際に、刑事告訴を確実に受理してもらうためには、警察が被害の状況を正確に理解できるように法的なポイントを押さえた書類を作成することが必要です。

反対に、名誉毀損で刑事告訴をされた場合には、不起訴となるように早い段階から弁護士が動く必要があります。そのため、名誉毀損で訴える場合も、訴えられた場合も早めに弁護士に相談することをおすすめします。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。