掲示板の誹謗中傷・書き込み削除

ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法を弁護士が分かりやすく解説

2020.09.05
ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法を弁護士が分かりやすく解説

ホスラブは、夜の仕事であるホストクラブやキャバクラなどを中心的な話題として取り扱う匿名掲示板であり、正式名称は「ホストラブ」といいます。

ホスラブは匿名で気軽に投稿できることもあり、ホスト、キャバ嬢、風俗嬢など、個人が特定できる形での誹謗中傷の温床となっています。

ホスラブで誹謗中傷コメントを書き込まれる被害にあった場合、投稿者を特定して慰謝料請求もできます。投稿者を特定する際にまず必要となるIPアドレス開示請求の方法について解説いたします。

1.ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法

ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法

投稿者を特定するためにはホスラブの管理者に対して投稿に係るIPアドレスの開示請求をする必要があります。

1-1.IPアドレスの開示により投稿者が特定される仕組み

IPアドレスとは、投稿に使用されたパソコンや携帯電話等に個別に割り当てられた識別符号であり、インターネット上の住所ともいえるものです。IPアドレスから投稿者を特定するためには次の2つの段階を経る必要があります。

第1段階として必要となるのが、投稿に利用されたIPアドレスの開示を求める手続きです。IPアドレスは掲示板等の管理者が保有しているため、ホスラブの場合にはホスラブの管理者に対して開示請求をする必要があります。投稿に利用されたIPアドレスの開示を受けられれば、IPアドレスをもとに投稿者が利用したインターネットサービスプロバイダ(携帯電話会社等)を特定できます。

第2段階として、インターネットサービスプロバイダに対して投稿をした契約者の情報開示を求めます。会員登録が必要な掲示板でない限り、管理者は投稿者の個人情報を保有していません。これに対し、インターネットサービスプロバイダであれば通常は投稿者が利用契約を締結しているため投稿者の情報を保有しています。

1-2.ホスラブに対するIPアドレス開示請求

投稿者特定の第1段階としてホスラブの管理者に対してIPアドレスの開示請求を行います。IPアドレスの開示請求は、プロバイダ責任制限法に基づき掲示板等の管理者に対して直接開示を求めることもできます。ただし、掲示板等の管理者は開示に応じない可能性があります。

投稿者の特定における重要な問題として、インターネットサービスプロバイダが投稿者個人を特定するために必要となる接続ログを保存する期間が短いということがあります。保存期間は短い場合で3ヶ月程度と非常に限られています。接続ログの保存期間内にプロバイダを特定し情報を保全するよう請求する必要があるため、この前提として必要になるIPアドレスの開示請求はできるだけ迅速に進める必要があります。

掲示板等の管理者が直接の開示請求に応じてくれない場合にはかえって時間のロスになる可能性があるため、最初から裁判所をとおした仮処分手続きによってIPアドレスの開示請求をすることもよくあります。仮処分は、簡略化された訴訟手続きであり、申し立てから約1~2か月でIPアドレスの開示を受けられます。

2.IPアドレス特定後は契約者情報の開示請求を

IPアドレス特定後は契約者情報の開示請求を

ホスラブからIPアドレスの開示を受けたら、次に、WHOISというIPアドレスに関する情報が登録されているサイトに照会することで、そのIPアドレスが利用されたインターネットサービスプロバイダを割り出すことができます。これにより、投稿者が利用したプロバイダの会社名が判明します。

その後、インターネットサービスプロバイダに対して投稿者の情報開示を請求することになります。ただし、プロバイダが有する投稿者の情報はプロバイダにとっては顧客の個人情報です。このため、プロバイダに直接請求しても開示に応じてくれることはほとんどありません。したがって、基本的には、通常の民事訴訟によって投稿者の情報開示を求めることになります。訴訟を提起してから投稿者の情報が開示されるまで約6か月かかることが通常です。

3.まとめ

まとめ

3-1.慰謝料だけではなく誓約を求められる

インターネットサービスプロバイダから契約者情報の開示を受けることができれば、ホスラブで誹謗中傷をした投稿者の特定は完了します。特定されたホスラブへの投稿者に対しては、不法行為(民法709条)に基づき名誉毀損やプライバシー権の侵害等を理由として慰謝料請求ができます。インターネット上の誹謗中傷に対する慰謝料の相場は、投稿内容や相手の争い方によっても大きく異なりますが、一般的には100万円前後が多いようです。

また、慰謝料請求をするだけでなく、投稿者本人に対して二度と同様の行為をしないことの誓約を求めたり、悪質な場合には刑事告訴をしたりといった対応をとることもあります。単に誹謗中傷のコメントを削除するだけだと、また同じような誹謗中傷のコメントを書き込まれてしまうことがあります。このため、誹謗中傷の被害を根本的に解決したい場合には投稿者を特定することが有効です。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。