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ウィキペディア(Wikipedia)の記事削除方針と、中傷記事を削除依頼する方法

2019.06.26
ウィキペディア(Wikipedia)の記事削除方針と、中傷記事を削除依頼する方法

世界最大級のインターネット百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」はいまや、多くの人にとって最初に調べるツールになっていることでしょう。人物、事象、製品、政治、経済、思想など、まさに世の中の百科(あらゆる分野)が事細かに解説されています。しかもパソコンやスマホで簡単に検索でき、無料です。
ところがウィキペディア(Wikipedia)の記事には信頼性が低いという批判があり、ウィキペディア(Wikipedia)の運営者もその批判を認識しています。
したがって、自分のことや自社のことが間違ってウィキペディア(Wikipedia)に掲載される可能性があります。ウィキペディア(Wikipedia)の「記事掲載被害」に遭ったときの対処法を解説します。

1.ウィキペディア(Wikipedia)とは

ウィキペディア(Wikipedia)とは

ウィキペディア(Wikipedia)は2001年にジミー・ウェールズ氏とラリー・サンガー氏が開設した情報サイトで、現在はアメリカ・フロリダ州に本部を置くウィキペディア財団が運営しています。日本語版も2001年に開設しています

ウィキペディア(Wikipedia)の特徴は、1)百科事典の形態を取っていることと、2)誰でも記事を執筆、編集できることの2点です。各分野の専門家が記事を執筆すれば、多くの人々が簡単に一級品の資料を手に入れることができます。
その一方で、知識がない人がいい加減な内容の記事を投稿することもできますし、悪意をもって対象者や対象物を毀損する記事を投稿することもできてしまいます。

ウィキペディア(Wikipedia)の運営団体も、次のような弱点を認識しています。

  • 記事内容に権威がない
  • 記事の信頼性が低い
  • 「荒らし」行為が存在する
  • 不正確な情報源で執筆されてしまう
  • 存在しない情報源で執筆されてしまう

2.ウィキペディア(Wikipedia)で起こりうるトラブルの例

ウィキペディア(Wikipedia)で起こりうるトラブルの例

ウィキペディア(Wikipedia)で起こり得るトラブルを考えてみましょう。 まずはプライバシーの侵害です。ウィキペディア(Wikipedia)には人物に関する記事も多数掲載されていて、生年月日や年齢や顔写真はもちろんのことは、配偶者に関する情報も載っていることがあります。
例えばある著名人が雑誌のインタビューを受けたとします。雑誌であればそこで話したことが記事化されても、日が経てばその事実は次第に風化していきます。古い雑誌が存在しても、誰でも気軽にその雑誌を入手できるわけではありません。 ところが、誰かがその雑誌を基にしてウィキペディア(Wikipedia)に記事を投稿してしまったら、その情報はいつまでも人々の目にさらされることになります。

また、ウィキペディア(Wikipedia)の企業に関する記事には、過去の不祥事が事細かに掲載されることがあります。裁判所の判決が出て賠償金を支払うなどの償いを終えても、半永久的に「汚点」が明記されてしまいます。
事実であれば汚点が明記されてもやむを得ないかもしれませんが、ウィキペディア(Wikipedia)では存在しない汚点を記載することもできます。

さらにウィキペディア(Wikipedia)には常に事実誤認のリスクがつきまといます。
例えば、テレビ局のニュース番組では、取材記者やその上司たちが何重にも報道内容をチェックする仕組みがあり、さらに放送された内容については放送倫理・番組向上機構(BPO)という第三者機関が厳しく審査します。
一方で、ウィキペディア(Wikipedia)が記事の信頼性を確保するために採用している方法としては、執筆者に「信頼できる公刊された情報源」の使用と明示を呼び掛けることと、事実でない記事を削除することくらいです。
ウィキペディア(Wikipedia)の閲覧者は、記事の文末に掲載されている情報源を確認し、その情報源が信頼できたときに記事を信頼することができます。
例えば、新聞記事は新聞社がその内容が事実として発信します。もし記事が間違っていれば新聞社は訂正して謝罪します。しかし、ウィキペディア(Wikipedia)内に掲載されている記事は、ウィキペディア財団が「事実である」と承認しているわけではありません。ウィキペディア(Wikipedia)に書かれてある記事を信頼するかどうかは、まさに「自分次第」です。
これがウィキペディア(Wikipedia)の事実誤認リスクです。

3.ウィキペディア(Wikipedia)の削除方針

ウィキペディア(Wikipedia)は信頼性を確保するための自衛策として、記事の削除方針を次のように定めています。

  • 法令違反の可能性が50%以上ある場合
  • 削除しないリスクが削除することによる損失を上回るとき
  • 著作権、肖像権、商標権などを侵害するとき
  • プライバシーを侵害するとき
  • 他者の名誉を傷つけ、名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪に問われる可能性があるとき
  • 猥褻物など合法でないとき
※ネット上で著作権侵害となるケースや削除依頼方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。 ※ネット上で肖像権侵害となる条件については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

4.ウィキペディア(Wikipedia)記事の削除方法

ウィキペディア(Wikipedia)記事の削除方法

ウィキペディア(Wikipedia)に掲載された記事を削除するには、ウィキペディア(Wikipedia)に削除依頼を出す方法と、弁護士に相談する方法の2通りがあります。

4-1.ウィキペディア(Wikipedia)の運営者に削除依頼をする

ウィキペディア(Wikipedia)の記事を削除する場合は、依頼制になっています。記事で損害を受けている人や企業などがウィキペディア(Wikipedia)に削除依頼することで、削除の検討が始まります。

ウィキペディア(Wikipedia)の記事を削除する場合は、次の3ステップで行われます。

  • 【ステップ1】ウィキペディア(Wikipedia)に削除依頼を送る
  • 【ステップ2】削除依頼を受け、ウィキペディア(Wikipedia)の不特定利用者がどのように対処すべきか審議する
  • 【ステップ3】審議結果に基づき、ウィキペディア(Wikipedia)の管理者が削除する

3項目しかないのですが、すべてが高いハードルになっています。
まず【ステップ1】ですが、削除依頼の対象となるページに対して権利侵害されている部分を削除する事前編集を行い、削除依頼対象ページに専用のテンプレートを貼付しなければなりません。メールで「この部分の記述が権利侵害に該当するので至急削除されました」と送って済むわけではありません。
【ステップ2】では、削除依頼に対する投票が行われます。投票に参加できる「ウィキペディア(Wikipedia)の利用者」は、編集回数が50回以上の登録利用者に限られます。
【ステップ3】の管理者とは、ウィキペディア(Wikipedia)のコミュニティから投票で信任された人たちのことです(*7)。削除者とは、管理者のうち削除の権限を付与された人たちのことです。

ウィキペディア(Wikipedia)には、「削除依頼窓口」のようなページはないのでメールで削除依頼文を送信することはできません。
存在するのは、削除依頼の方法を解説したページだけです。

Wikipedia削除依頼

4-2.弁護士に依頼する

上記では、ウィキペディア(Wikipedia)の運営者に連絡し、削除依頼を進める難しさをお伝えさせて頂きました。一般ユーザーはウィキペディア(Wikipedia)の運営組織に対し「ベールに包まれている」と感じることでしょう。ウィキペディア(Wikipedia)には「連絡先」のページがありますが、ここには住所も電話番号もメールアドレスも代表者名も記されていません。

ウィキペディア(Wikipedia)の「連絡先」ページ

Wikipedia連絡先

メールアドレスは、かろうじて以下のURLに記載されていますが、メールを送るルールはとても複雑です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Info-ja

ウィキペディア(Wikipedia)の運営団体に連絡することは簡単なことではありません。そこでウィキペディア(Wikipedia)の「記事掲載被害」を受けていて、その被害が甚大である方は、インターネットのトラブルに詳しい弁護士に相談することを強くおすすめします。
一般のネットユーザーはウィキペディア(Wikipedia)をかなり信頼しています。したがって、事実でないことが、あたかも事実のように流布する可能性は十分あります。
そうなる前に弁護士に相談し、必要な手段を講じましょう。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。