開示請求

【2025年版】トレント関連で開示請求されている人が急増中?AVダウンロードの現状とリスクを弁護士が解説

2025.07.25
【2025年版】トレント関連で開示請求されている人が急増中?AVダウンロードの現状とリスクを弁護士が解説

「トレントを使ってAVをダウンロードしたら、突然、開示請求が届いた…」

近年、こうした相談が急増しています。

トレントは、便利なファイル共有システムとして広く利用されていますが、著作権侵害をしているケースが多く、トレント利用者に対する開示請求が相次いでいるのが現状です。特に、トレントでAVをダウンロードした経験がある方は、著作権者から開示請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

今回は、トレントの仕組みとAVダウンロードとの関係、トレント利用者への開示請求が増加している理由、開示請求を受けた場合に生じる具体的リスクなどを法律の専門家の視点でわかりやすく解説します。
トレント関連で開示請求を受け不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

「トレント」とは?仕組みとAVダウンロードとの関係

「トレント」とは、P2P(Peer to Peer)技術を活用したファイル共有の仕組みを指します。具体的には、BitTorrentなどのソフトウェアを使用することで、不特定多数の利用者が同じファイルを分割して同時にアップロード・ダウンロードすることが可能になります。

通常のダウンロードではサーバーから直接ファイルを取得しますが、トレントでは利用者同士がファイルの断片を交換するため、回線速度が速く、大容量ファイルのやり取りに適しているという特徴があります。その利便性から、動画や音楽、ゲームなどさまざまなデータがトレント上で共有されているのが現状です。

しかし、その際に問題となるのが著作権侵害です。市販のAV作品などをトレントにより無断で共有することは著作権法違反に該当します。また、トレントではダウンロードと同時にアップロードも行うため、単なる取得者ではなく違法アップローダーと同視されることになります。

トレント利用者に「開示請求」が増加している背景と理由

トレントを利用してAV作品をダウンロードする行為は、著作権侵害に該当するため、著作権者から開示請求をされる可能性があります。

近年、トレント利用者に開示請求が増加していますが、それにはどのような背景・理由があるのでしょうか。

著作権侵害に対する権利者側の対策強化

トレント利用者に対する開示請求が増えている理由のひとつは、権利者側が著作権侵害への対応を強化しているためです。

トレントを利用して市販のAV作品などが違法ダウンロードされてしまうと、AV制作会社は、当該作品を販売して得られるはずの利益を失い、莫大な損害を被ることになります。このような違法ダウンロードを放置していると、経営にも重大な支障を及ぼすことから、AV制作会社や映画会社、音楽レーベルなどは、(すべてではないですが)専門業者を通じて常時トレント上の侵害状況を監視しています。

以前に比べて権利者側が本格的に著作権対策に取り組んでいるため、それに比例して開示請求も増加しているのです。

プロバイダ責任制限法の改正により開示請求の負担が軽減

2022年のプロバイダ責任制限法改正により、従来の「発信者開示仮処分命令申立て」及び「発信者開示請求訴訟」の手続きに加えて、新たに「発信者開示命令申立て」という手続きが創設されました。

これにより権利者が開示請求を行う際の負担が一定程度軽減されたことも開示請求が増加した理由のひとつです。

トレントを利用してAVをダウンロードした場合に生じるリスク

トレントを利用してAVをダウンロードすると、以下のようなリスクが生じます。

発信者情報開示請求により権利侵害をした人が特定されるリスク

トレントでAVダウンロードを行った場合、発信者情報開示請求によって個人情報が特定される可能性があります。

権利者側はそれぞれの調査方法により侵害者のIPアドレスを把握します。権利者は、そのIPアドレスの契約者情報を取得するために、プロバイダに対して開示請求を行います。

プロバイダは、契約者本人に意見照会書を送り、開示可否について回答を求めますが、最終的に裁判所が開示決定をすれば、契約者の氏名・住所などの情報が権利者側に開示されます。

著作権者から損害賠償請求をされるリスク

発信者情報が開示された場合、次に想定されるのが損害賠償請求です。

権利者は「著作権侵害によって損害が生じた」として、数十万円規模の賠償を求めてくることが考えられます。また、損害賠償請求に応じない場合は訴訟に発展するケースもあり、裁判所から正式に賠償を命じられる可能性も否定できません。

著作権侵害を理由として刑事告訴されるリスク

トレントを利用した違法ダウンロードは、著作権法違反にあたりますので、著作権法違反を理由として刑事告訴されるリスクがあります。

刑事裁判により有罪になれば2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金またはこれらが併科されます。また、違法アップロードについては、法定刑が10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金またはこれらの併科とされています。

実際には、個人利用者に対する刑事告訴は多くありませんが、悪質な大量アップロードや商用目的と見なされた場合には、警察が捜査を開始する可能性があります。特に、近年は権利者が見せしめとして刑事告訴を選択する例も報告されているため、決して油断できない状況です。

身に覚えのない理由で開示請求されたときの対処法

トレント利用を理由とする開示請求をされた方の中には「身に覚えがない」という方もいるかもしれません。そのような場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

開示請求の意見書に不同意の回答をする

「身に覚えがないのにトレントで開示請求をされた」というケースも実際に存在します。たとえば、Wi-Fiの無断利用(タダ乗り)やIPアドレスの誤認、第三者による不正アクセスなどが原因の場合です。

このような場合、プロバイダから届いた意見照会書には、不同意の回答をすることが考えられます。不同意の理由としては、「当該著作権侵害行為を行っていない」など、事実に基づいて具体的に記載する必要があります。もっとも、同居家族などが利用している場合もあるため、まずは、自分以外の誰かがトレントの利用をしていないか、慎重に調査する必要があるでしょう。

損害賠償請求訴訟において争う

開示請求の意見書に不同意の回答をしても、裁判所の判断により開示請求が認容されることもあります。この場合、著作権者に契約者の氏名・住所が開示されますので、次の段階として著作権者から損害賠償請求がなされます。

著作権者から損害賠償請求を受けた場合であっても、身に覚えがないのであれば、損害賠償請求訴訟において争うことが考えられます。訴訟では、権利者側が「被告が著作権侵害行為を行った」という証明をする必要があります。証拠不十分であれば、請求が棄却される可能性もあります。

著作権者と示談をする

実際にトレントでAVダウンロードを行っていた場合は、示談による解決が現実的な選択肢となります。示談金を支払うことで、民事訴訟を回避できるだけでなく、刑事告訴を防ぐことも可能になることが考えられます。

ただし、示談交渉では過剰な金額を請求されることもあるため、弁護士を通じて適正額で解決することをおすすめします。

トレント関連で開示請求をされたときに弁護士に相談すべき3つの理由

トレント関連で開示請求をされた場合、以下のような理由から弁護士に相談することをおすすめします。

法的リスクの見極めと今後の流れをアドバイスできる

トレントでAVをダウンロードした場合、著作権侵害が成立する可能性がありますが、状況によって結論が異なる場合も考えられます。

弁護士に相談することで、自分の行為が法律上どのように評価されるか、どのような証拠がそろっているか、また刑事告訴や高額な損害賠償請求を受ける可能性がどの程度あるのかなど法的リスクを総合的に分析してもらうことが可能です。
さらに、今後の手続きの流れや対応方針をアドバイスしてもらえるため、漠然とした不安を解消できます。

特に、初めて開示請求を受けた場合には、冷静に状況を整理し、最善の対応を選択するために弁護士のサポートが欠かせません。

意見照会書に対する適切な回答ができる

プロバイダから届く意見照会書への回答は、開示可否を左右する重要な手続きです。

弁護士に依頼すれば、権利者側の主張内容を精査したうえで、もっとも効果的な回答内容を検討し、回答書を作成してもらえます。また、身に覚えがない場合には、その主張を裏付けるための証拠収集方法についてもサポートしてもらうことができます。

意見照会書への回答期限は通常2週間程度と短いため、意見照会書を受け取ったときは放置せず、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

示談交渉や訴訟対応を任せられる

発信者情報が開示されてしまった場合、多くのケースでは著作権者から損害賠償請求や示談の申し入れが届きます。こうした示談交渉では、相手方は法律の専門家である弁護士に依頼していることが多く、個人で交渉をすると不利な条件を押し付けられてしまう可能性があります。

弁護士に示談交渉を依頼すれば、請求金額の妥当性を検討し、減額交渉や分割払い交渉など、依頼者に有利となる解決策を模索してもらえます。
また、訴訟に発展した場合でも、訴状の内容を精査して適切に反論し、裁判所への対応も一任できるため、精神的負担が大幅に軽減されるでしょう。

さらに、刑事告訴の可能性がある事案では、示談を成立させることで不起訴処分に繋がるケースもあります。開示請求から示談、訴訟対応、刑事弁護までワンストップで対応できるのが、弁護士に相談する最大のメリットです。

まとめ

トレントによるAVダウンロードは、法的責任を問われる可能性があります。近年は権利者側の監視体制強化や法改正により、開示請求が急増しているのが現実です。

プロバイダからトレントの利用を理由とする発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合、自己判断で対応することはリスクがあります。法的知識を持つ弁護士に早期相談し、適切な解決策を検討することをおすすめします。

トレントを利用したことで開示請求をされたという方は、できるだけ早く弁護士法人アークレスト法律事務所までご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。