企業の風評被害

風評被害対策はどこに相談すればいい?主な窓口とサポート内容を解説

2025.09.05
風評被害対策はどこに相談すればいい?主な窓口とサポート内容を解説

企業が風評被害を受けた場合、放置すれば信用失墜や売上減少など深刻な損害に直結します。しかし、いざ被害に直面しても「どの時点で何をすべきか分からない」という企業も少なくありません。ここでは、風評被害の概要と、相談できる窓口や支援内容について解説します。

風評被害とは?具体例を紹介します

問題になることも多い風評被害とはどのようなものなのでしょうか。以下では、風評被害の内容とその事例をわかりやすく説明します。

風評被害とは

風評被害とは、事実無根の噂や誤情報が広がることで企業の信用やブランド価値が損なわれ、経済的損失が発生することを指します。

特に近年ではインターネットやSNSによる拡散スピードが速く、短期間で被害が拡大する傾向があります。あっという間に情報が拡散し、被害が拡大するリスクがあるため、早期の対策が重要となります。また、被害を受けたあとの対応だけでなく、予防のための対策も重要です。

最近見られた、風評被害の代表的な事例としては、以下の3つが挙げられます。

原子力発電所事故の事例

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、福島県産の海産物や農産物を取り扱う業者に風評被害がもたらされました。
風評被害を防ぐために、県や政府は、食品中の放射性物質の検査を実施し、安全上問題がないことを確認した上で、出荷をしている旨を公表していました。

しかし、根拠のない噂や誤った事実などがインターネットやSNSなどを通じて広がってしまったため、放射能汚染が怖いという理由で購入をためらう人が増える結果になってしまったのです。
最近では、厳しいモニタリング検査などにより徐々に信頼を回復してきていますが、風評被害による失われた信頼を取り戻すのは容易ではありません。

アサリの産地偽装によるハマグリの事例

外国産のアサリであるにもかかわらず、国産アサリとして市場に流通させていた産地偽装問題が発生したときに、ハマグリが風評被害を受けました。
アサリとハマグリは、まったくの別物であるにもかかわらず、正真正銘の国産品を流通させていたハマグリ業者も大量の返品を受けるなどの損害が発生してしまいました。

自分には全く非がないにもかかわらず風評被害により損害が生じた事例の一つです。

コロナ禍におけるコロナビールの事例

コロナビールは、メキシコビールの銘柄で日本でも人気のあるお酒の一つです。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、新型コロナウイルスと名前が似ているというだけで、コロナビールの買い控えが発生し、コロナビールは大きな損失が生じたとのことです。

これは、イメージのよくないものと同じ商品名というだけで生じた風評被害の事例です。

このように、自社に全く責任がなくてもタイミングや運としか言いようがない不可抗力で風評被害を受けてしまうことがあるのです。

だからこそ、普段からの対策がとても重要になります。

風評被害対策の相談先

企業が実際に風評被害を受けた場合、どこへ相談すればよいのでしょうか。ここでは主な相談窓口と、それぞれで受けられるサポート内容を紹介します。

警察署

ネット掲示板やSNSで受けた風評被害が犯罪に該当する可能性が高いという場合は、警察に相談できます。
ただし、単なる悪口や批判や単なるクレームの域を出ない場合は「事件性がない」と判断され、自力での解決を促されることがあります。警察が介入するかは「事件性の有無」で決まります。

例えば「従業員を殺してやる」といった投稿がある場合は、脅迫罪等に該当する可能性があるため、被害届の提出が可能となるでしょう。ですが「お金を出す価値がない商品だ」と言われる程度であれば、事件性があるとは認められないかもしれません。

違法・有害情報相談センター

違法・有害情報相談センターは、総務省の支援事業として運営される窓口です。
ここでは、ネット上の誹謗中傷や風評被害に関する相談を受け付けていて、専門知識と経験を持つ相談員から適切なアドバイスをうけることができます。
ただし、ここで得られるのはあくまで助言であり、具体的な削除手続きなどは自分で進める必要があるため注意しましょう。

違法・有害情報相談センターは、突然の風評被害で何から手を付けてよいか分からない場合に、相談する先として適しています。
違法・有害情報相談センター

誹謗中傷ホットライン

誹謗中傷ホットラインは、2020年6月にスタートしたサービスです。一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が開設したホットラインでネットの誹謗中傷の相談ができます。誹謗中傷や風評被害の内容を伝えると、サイトやSNSの運営に対して削除等の対応を要請してくれます。

誹謗中傷ホットラインは、民間のインターネット企業の有志による無料のボランティアサービスです。一般消費者などの立場の弱い個人への支援がメインであるため、企業として相談した場合は対象外となる場合があります。
誹謗中傷ホットライン

風評被害対策業者

風評被害対策を専門にしている専門業者に相談するという方法もあります。こうした専門業者は、風評被害や誹謗中傷の対策に特化しており、専門知識を持っているため適切な対応が可能です。例えば、検索順位を下げて目立たなくする「逆SEO」など、具体的な手法を用いて迅速に対応します。

ただし、捜査機関ではないため、加害投稿の削除や投稿者の特定といった根本的な解決は難しいです。

弁護士

風評被害に遭った際には、弁護士に相談するという方法があります。特にネットトラブルを取り扱っている事務所であれば、スピーディーな対応を期待できます。

弁護士ができる対応としては、原因となっている投稿の削除要請や、発信者情報開示請求を行って投稿者本人の特定が可能です。このような手続きは自分でできないわけではありませんが、法的な知識と手続きが求められるため、素人にとってはハードルが高くなってしまいます。

特に、誹謗中傷の程度が酷く、訴訟に発展する可能性を考慮するなら、最初から弁護士に相談しておくとよいでしょう。弁護士は手続きに慣れているというだけでなく、問題点を正確に認識し、依頼人の味方になって具体的な解決策の見通しを立ててくれます。

風評被害が発生したときに弁護士ができる主なサポート内容

風評被害に遭った際に弁護士へ相談した場合に、どのようなサポートが受けられるのでしょうか。ここでは、弁護士ができる対策を具体的に解説します。

口コミや記事の削除請求

弁護士は本人に代わって、口コミや記事の削除請求を行うことができます。 投稿や記事の削除依頼は、本人または代理人となる弁護士しか行えません。

削除請求をするときには、該当サイトの削除依頼フォームや窓口から申請します。これで削除請求を拒否された場合は特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(旧「プロバイダ責任制限法」)に基づいて削除要請することが可能です。

それでも応じてもらえないという場合は、裁判所に仮処分命令を申し立て、該当する投稿を削除するよう命じてもらうという方法があります。こうした一連の手続きは非常に専門性が高く手続きが煩雑ですが、弁護士に依頼すればすべて任せられるためスムーズに進められます。

サジェストの削除

弁護士はサジェストの削除もできます。
サジェストとは、検索エンジンでキーワードを入力したときに自動で表示される2語目や3語目のキーワードのことです。このキーワードは、検索エンジン側が提案しているキーワードなのです。

つまり、検索エンジンに企業名を入力すると、自動で関連キーワード(サジェスト)が表示されるわけです。そして、この中に「炎上」「事故」などネガティブな語句が含まれると、企業イメージに悪影響を与えてしまいます。

弁護士はそのサジェストが権利を侵害しているということを検索エンジンの運営者に伝えて、削除要請を行うことができます。

投稿者の特定

加害者責任を追及する場合、まず風評被害の原因となる書き込みをした人物の特定が必要となります。投稿者を特定できなければ、謝罪や損害賠償の請求、刑事告訴といった手段がとれないためです。
つまり、誹謗中傷を行った本人の責任を問うには、まず投稿者を特定しなければなりません。

発信者情報開示請求の一般的な流れは以下の通りです。

・サイト運営者に対して発信者情報開示請求を行い、IPアドレスを取得する
・取得したIPアドレスから利用プロバイダを特定する
・プロバイダに発信者情報開示請求を行い、個人情報を取得する

もし、上記流れの中で開示が得られない場合は、裁判手続に移ります。発信者情報開示請求はあくまでも特定のための作業であり、ここから示談や訴訟までには数か月以上かかるため、弁護士に依頼しておくことで業務への支障を最小限に抑えることができます。

最終的に、法的手段をとる可能性を考慮するのであれば、弁護士にあらかじめ相談しておくのがスムーズです。

損害賠償請求

投稿者特定後は、損害賠償を請求することが可能です。これは損害の回復だけでなく、再発防止という側面があるため抑止効果も期待できます。

損害賠償請求の手続きとしては、まず内容証明郵便で請求します。それでも、相手が応じない場合は協議・交渉へ移ります。それでも合意に至らなければ民事裁判に進みます。

弁護士に相談していれば、交渉から訴訟までスムーズに進めることができます。

刑事告訴

誹謗中傷や風評被害は、刑事事件になることもあります。風評被害が企業の社会的評価や信用を著しく損ない、業務に支障を生じさせた場合は以下の犯罪が成立する可能性があります。

・名誉毀損罪
・信用毀損罪
・偽計業務妨害罪

このような犯罪に該当する行為があった場合は、加害者を刑事告訴できます。刑事告訴をしても、損害が賠償されるわけではないため、直接的な損害回復はできません。ですが、加害者の処罰事実を公表することで失ってしまった信用回復につながるケースもあります。

また、風評被害に厳しく対応する姿勢を示すことは、被害抑止という社会的な意味があります。

刑事告訴は通常、警察署へ告訴状を提出する形で行いますが、受理されにくいというケースがあります。弁護士であれば、告訴状を作成して警察へ同行し、告訴状を受理してもらう可能性を高めることができます。

風評被害を防ぐために弁護士ができること

弁護士への依頼は、風評被害が発生した後の対応だけでなく、予防策としても効果的です。ここでは、風評被害を未然に防ぐために弁護士が提供できる主なサポートを紹介します。

従業員への研修の実施

風評被害は、外からの攻撃だけではありません。近年問題になっている「バイトテロ」と呼ばれるような従業員の不祥事によって風評被害が発生することがあります。バイトテロを防ぐためには、日頃から従業員への研修が不可欠です。

弁護士は、研修の際に実際の事例や判例を踏まえて「何をしてはいけないのか」「どういったリスクがあるのか」を従業員に丁寧に説明できます。従業員にとっても現実的で身近な問題として理解しやすくなるため、効果的な研修につながります。

SNSに関するソーシャルメディアポリシーやガイドラインの策定

風評被害の地盤になりやすいのがSNSです。企業アカウントは情報発信や告知にとても便利な一方、不適切な投稿をした場合は炎上するリスクがあります。

また、従業員が私的に利用するSNSであっても「〇〇でバイトしています」といった言葉や、どの企業かが分かる画像を投稿して、不適切な発言をした場合は企業の責任に発展するケースがあります。

こうしたリスクを避けるために、SNSの利用方法や注意点をまとめたソーシャルメディアポリシーやガイドラインを整備することができます。弁護士は、企業の実情に合わせた最適な内容でガイドラインの策定が可能です。

顧問弁護士によるリスクの排除

企業に顧問弁護士を置くことで、風評被害のリスクをより軽減できます。顧問弁護士があれば、常に風評被害の対策ができますし、もし被害が起こった場合には面談だけでなく、電話やメールでの迅速な相談も可能です。

ネットの風評被害の場合は特に、被害が表面化する前にリスクを察知して、対応する必要があるため迅速に対応できる弁護士がいるのは大きな安心材料になります。

また、SNSやネット掲示板をモニタリングし、炎上の兆候を早期発見して即時対応できる体制を作るといった予防的な対策もできます。継続的な風評被害の対策として、弁護士と顧問契約を結んでおくことは有益です。

違法な風評被害対策業者に注意

風評被害が問題になっている中で、風評被害対策をうたう業者も多く存在しています。そして、中には法律に違反している業者もあるため注意が必要です。

弁護士法では、弁護士資格のない者が弁護士業務を行い報酬を得ることは禁止されています。例えば、無資格者が代理人として交渉した場合などは「非弁行為」という違法行為に該当します。
また、業者が弁護士と提携している場合でも「非弁提携行為」という違法行為にあたる可能性があります。

こうした違法性がある業者に依頼すると、風評被害の対策をしていたはずが、さらなるイメージダウンを受けかねません。そのため、依頼先は必ず資格がある弁護士や適正な連携体制のある業者を選びましょう。

被害対策のご相談はアークレスト法律事務所へ

アークレスト法律事務所は、多様なネットトラブルに対応してきた経験豊富な法律事務所です。各種サイトやSNSでの風評被害投稿の削除はもちろん、検索エンジン上のネガティブな検索ワード削除にも対応可能です。
さらに、IPアドレス開示請求による投稿者特定、その後の損害賠償請求や刑事告訴まで、一貫して丁寧かつ迅速にサポートします。

ネット上の誹謗中傷や風評被害でお悩みの際は、ぜひアークレスト法律事務所にお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。