トレントを利用していると意図せず違法アップロードに加担してしまう可能性があります。トレントはダウンロードを行うと同時にファイルのアップロードも行うことになるためです。過去にトレントで著作物をダウンロードしたことがある場合、ある日突然、著作権者から損害賠償請求されるかもしれません。
本記事では、トレント利用の問題点とトレント利用から損害賠償に発展する可能性、またその場合の対策について解説します。
目次
トレントが違法ということではありませんが、トレントを利用したために、損害賠償請求を受けることはあり得ます。トレントなどのP2Pファイル共有サービスを利用すると、ダウンロードと同時にweb上にアップロードを行うことになるためです。
もし、トレントを利用してダウンロードしたファイルが著作権のあるアニメや漫画、テレビ番組、音楽ファイルなどであれば、違法アップロード(著作権法上の「公衆送信権」及び「送信可能化権」の侵害)に加担したことになります。
それでは、違法アップロードをしてしまうことによって、著作権者から損害賠償請求を受けた場合の流れを解説します。
そもそも著作物は著作権によって保護されており、著作物を使用する場合には著作権者や権利を管理する団体へ許可を申請しなくてはなりません。
しかし、トレントを使用した場合、インターネットなどの電子媒体へ、その許可を得ることなく違法アップロードしてしまうことになります。これは著作者の有する著作権を侵害する行為です。
違法アップロードにより著作権の侵害を受けた著作者は、ネットワーク監視システムを利用して、違法アップロードがどのIPアドレスからなされたかを突き止めます。あわせてアップロードされたファイルのタイトルなど、後々必要となる証拠を収集します。
次は特定されたIPアドレスから違法アップロードした人を特定する段階です。まず取得したIPアドレスを元に、Web上で公開されているプロバイダ特定サイトで、投稿者が違法アップロード時に使用していたプロバイダを特定します。そして、特定したプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、違法アップロードした人の個人情報(住所や氏名など)を開示するように求めていきます。
プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてくるのは、この発信者情報開示請求のタイミングです。開示請求を受けたプロバイダは、プロバイダ責任制限法第4条第2項に基づき、違法アップロードを行った発信者に意見照会書を送付します。その目的は発信者の個人情報を開示することについて、本人の意見を聴取することです。
プロバイダは意見照会書の回答等を加味して発信者情報の開示を判断します。プロバイダが開示を拒否した場合、著作権者は発信者情報開示請求訴訟を提起して開示を求めることになります。
ここまでのプロセスは違法アップロードをした人の責任を追及するための準備にすぎません。プロバイダが発信者情報を開示し、違法行為に及んだ人が特定できたら、著作権者は著作権侵害を理由として損害賠償請求訴訟を提起します。また、著作権法違反で告訴して、違法アップロードした人の刑事上の責任を問う可能性もあります。
著作権法違反によって損害賠償請求訴訟を提起された場合、どれくらいの金額を請求されることになるのでしょうか。著作権法第114条第1項には請求できる損害額の計算方法が規定されていて、ダウンロードされた回数に単位数量当たりの利益を乗じた額を損害額とするとができるとなっています。
アップロードされたファイルが無料でダウンロードされたとしても、実際に販売されたこととは違います。そのため、実際にどれほどの損害があったのかを立証することは非常に難しいのですが、上記計算式に当てはめて損害額を計算することは容易です。人気コンテンツをアップロードした場合、莫大な損害賠償金を請求されることになる可能性があります。
ここから、違法アップロードを行ってしまったために損害賠償請求にまで発展した実例を紹介します。
自社サイトに同人誌漫画をアップロードしていることが著作権侵害(公衆送信権)に当たるとして、原作者数名がサイトを運営していた会社に対し、損害賠償金1億9,324万3,288円を求める裁判を提起しました。判決は、219万2,215円についてのみ因果関係を認め、支払いを命じています。
アメリカの総合格闘技団体UFC(Ultimate Fighting Championship)の試合の様子を無断で計84回に渡って動画サイト「ニコニコ動画」にアップロードしていた事案があります。アップロード実行者に対し、大会の模様を撮影・編集した映像の著作権を持つ会社が1,000万円の損害賠償請求を求めて裁判を提起しました。2013年に出された判決は、1,000万円満額の支払いを命じるものとなりました。
手元に「発信者情報開示係る意見照会書」が届いた場合、それは著作権を侵害された著作権者が対策に着手したことを示します。もし、プロバイダから意見照会書が届いた場合はどう対処すれば良いのでしょうか。
意見照会書が届いたら、必ず拒否または同意の回答をします。拒否する場合は、「著作物性が認められない」、「著作権法の許容範囲である」などと理由を記載します。ここで注意すべきなのは、無視してはいけないということです。無視したからといって罰則があるわけではありませんが、一定の期間(2週間)を経過するとプロバイダは、反論や主張がないものと判断し、発信者情報を開示してしまう可能性があります。
発信者情報に係る意見照会書が届いたということは、著作者は権利侵害を侵害されたと考えている状態だということを意味します。つまり、発信者情報の開示を受けた後に、民事においては損害賠償請求を求めて裁判を提起することを考えているかもしれないということです。また、その権利侵害を重大に受け止めて、刑事告訴も考えている可能性もあります。
そのようなことも見据えて、意見照会書が届いた場合には、同意するにしても、拒否するにしても一度弁護士に相談することをおすすめします。
もし、意見照会書が手元に届いたのであれば早急に対策を考えなければなりません。過去にトレントを利用してデータをダウンロードしたことがあり、損害賠償を請求されるのではないかと不安な方も、弁護士に相談することを考えても良いと思われます。
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