詐欺の手法は年を追うごとに手口が巧妙になっており、自分では気をつけているつもりでも騙されてしまうことも。万が一引っかかってしまった場合にはどのような対処をすれば良いのでしょうか。
この記事では、特殊詐欺(オレオレ詐欺や還付金詐欺など、不特定多数の人から電話やハガキを通じて現金をだまし取る犯罪)を始めとする詐欺の被害にあった場合を想定し、被害回復する手続きとそのために必要な証拠などについて解説します。
目次
まずは、詐欺被害に遭ってから返金されるまでの流れを紹介します。詐欺被害に遭ってしまった場合の具体的な流れは以下のとおりです。
詐欺被害に遭ったことがわかったら、まずは警察に相談し、被害届を出します。被害届の提出先は最寄りの警察署で大丈夫です。ネット通販詐欺やフィッシング詐欺等、ネット犯罪に遭った際は、都道府県警察のサイバー犯罪窓口に相談が可能です。
また口座にお金を振り込んでしまった場合は、振込先の金融機関に相談してください。振り込め詐欺救済法(後述)の適用によって、振込先の口座凍結処置がなされ、そこから被害金を回収できる可能性があります。
次に、被害額の返金を求めるためには、加害者の身元を特定する必要があります。詐欺被害に遭った場合は、相手の身元や所在、財産を含めた状況など、調べられる限り早急に調査しましょう。連絡に使われた携帯電話の番号などがあれば、弁護士会照会制度によって氏名や住所がわかることもあります。
加害者の身元の調査を行いつつ、詐欺被害に遭ったことを証明する証拠を集めていきます。いくら相手の身元が判明しても、詐欺が立証できなければ返金請求が認められないかもしれません。事実を示すためにも、加害者とのやり取りの記録や契約書、録音した資料などは集めて保存しておきます。
また、これらの証拠は訴訟前の交渉段階で相手を追い詰める材料になることがあります。
加害者の身元の調査や、証拠資料の収集を終え、加害者の預金口座や財産が判明したケースでは、仮差押を裁判所に申し立てることを検討します。仮差押とは、訴訟の前に相手が財産を自由に処分できないようにすることです。
訴訟を提起すると、詐欺加害者は自分の財産を処分したり、隠匿したりしようとするかもしれません。裁判で返金命令が出ても、返金するお金がないと言われてしまっては意味がなくなります。返金の確実性を高めるためにも、仮差押が可能な場合は、仮差押を確実に行っておきましょう。
仮差押ができた段階で、加害者に返金を求める内容証明郵便を送付します。内容証明郵便を受け取った加害者が、自らの言い分を伝えるために連絡して来れば、実際の交渉に移行します。
交渉がまとまれば、返金金額や条件などを記載した合意書を締結し、合意書記載の金額を支払ってもらいます。
加害者側が交渉に応じない場合や、金額・条件などで折り合いがつかない場合は、勝利判決を求めて提訴します。
最終的には、裁判所が両者の主張を判断して判決を下し、事件が決着する流れです。判決で返金命令が出されても相手が支払わない場合は、強制執行の手続をとります。(相手の財産の所在が判明している場合)
詐欺被害に遭った際に被害額を取り戻すための流れを解説しましたが、裁判を起こすとなると費用や時間もかかるため、返金を諦めてしまう人も少なくないでしょう。
裁判を起こさなくても、「振り込め詐欺救済法」の手続きによって被害額を取り戻せることもあります。警察に被害届を出したあと金融機関に連絡して、加害者の口座を一時的に凍結。残ったお金を被害回復分配金として被害者間で分配するという手続きです。
ここでは、振り込め詐欺救済法の利用に必要な申請書類や、注意点を紹介します。
振り込め詐欺救済法は、加害者が被害者をだまして現金を得る際、預金口座への振り込みを利用した場合に対象となります。たとえば、下記のような詐欺被害に遭った方は、振り込め詐欺救済法の救済対象です。
振り込め詐欺救済法を利用するためには、申請書のほかにも、身分証明書などの提出が必要です。申請に必要な具体的な書類などは、以下を参考にしてください。
上記3点を金融機関に相談の上、提出しましょう。
先ほど紹介した書類などを金融機関に提出すれば、被害額の全部または一部が「被害回復分配金」という形式で返還される可能性があります。しかし、申請のタイミングや加害者の口座残高によっては返還されないこともあるため注意が必要です。
まず、振り込め詐欺救済法で被害回復分配金を受けるには、被害者からの申請が必要です。また一定の申請期間内に申請しなければなりません。振込先の金融機関に被害を申し出た場合、申請開始時には金融機関から個別に連絡が行われます。
訴訟を起こすにしても、振り込め詐欺救済法の手続きをとるにしても、返金を求める客観的な証拠が必要です。ここでは、詐欺被害を解決するために準備するものを紹介します。
被害の内容や被害額の詳細などは、わかるようにしておきます。具体的には、下記の資料があると良いでしょう。
また、加害者といつ、どこで、どのように出会い、どういったいきさつでお金を払うことになったのかをまとめておきます。被害の証拠を集めるだけでなく、被害内容を詳細に語れるようにしておくことが必要です。
解決の方法に関わらず、加害者の情報はできるだけ詳しく集めておきましょう。具体的には、以下の情報があると返金を求める際に役に立ちます。
これらの情報はできる限り揃えておくのがおすすめです。
詐欺被害の返金交渉は難易度が高いため、残念ながらお金の回収ができないこともあります。ここでは、返金が難しくなるケースを解説します。
詐欺被害に関する十分な情報や資料が揃っていない場合、被害の回復はできないかもしれません。よくある事例としては、加害者の情報が不十分なケースです。加害者が誰なのかがそもそも特定できなければ、誰を相手に返金請求すれば良いのかがわからないでしょう。
また、詐欺の立証は、加害者が騙すつもりで詐欺を行ったといえるか、の立証が困難である場合も少なくなく、証拠不十分でそもそも立証できない場合もあります。
詐欺被害から時間が経過していると、返金されないケースが増えます。被害に遭ってから何ヵ月も経過しているケースでは、加害者はだまし取ったお金をすでに使っていたり隠匿していたりする可能性が高くなるからです。
このような場合は実際に提訴しても、加害者に支払い能力がないとして何も回収できない可能性があります。詐欺被害で返金を求める際には、スピード感を持った対処が大切です。
今回は詐欺被害の返金方法を解説しました。このように、詐欺の被害回復はハードルが高く、慣れない手続きに手間取って時間がかかればかかるほど、返金される可能性は低くなってしまいます。
詐欺被害に遭った際は、スピードと正確性を重視して、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士法人アークレクト法律事務所では、随時詐欺被害の相談を受け付けています。無料で相談を受け付けており、土日も対応しているので、まずはお気軽にご相談ください。