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日本版DBSとは?制度が導入されたらどんなことがおこるのか

近年、学校や保育施設などで子どもが性犯罪の被害者となる事件が少なからず起こっているという実態があります。そのような中で注目されているのが「日本版DBS」という制度の導入です。

DBSとは、イギリスですでに導入されている制度で「Disclosure and Barring Service」の略称です。この制度では、特定の職業に就こうとするときに、過去の性犯罪歴などを事業者が確認し対策をとるという制度です。性犯罪を犯すリスクが高い人を特定して犯罪を予防するという考え方です。
日本でもイギリスのDBSを参考に、子どもを性犯罪から守る新たな法制度の導入が2026年に施行される予定です。

この記事では、「日本版DBS」の目的と、導入されたあとにどのような変化が起こるのかをわかりやすく解説します。

日本版DBSとは?

子どもを性犯罪から守るための新しい制度として注目されている「日本版DBS」の背景や目的、制度の概要についてわかりやすく解説します。

「こども性暴力防止法」について

日本版DBSは、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(通称「こども性暴力防止法」)で定められています。

この制度は、学校などの教育機関の設置者や民間教育保育等事業者の責務を定めたものです。学校や児童福祉施設だけでなく、民間教育保育等事業者に該当する学習塾、放課後児童クラブ、認可外保育施設等と幅広い施設が対象です。

対象となる事業者に対して、職員の性犯罪の犯罪歴のチェックなどを義務づけています。

子どもを対象にした性犯罪を予防する目的

この制度は、教員や保育士などの子どもと直接接する職業につく人の犯罪歴をチェックできる体制を作って、犯罪を防止するのが目的です。

性犯罪は再犯率が高く、子どもと接する場合のリスクが高いと考えられます。リスクが高いと評価される人物を特定して対策することで、子どもを性犯罪が守ろうというものです。

参考:令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査についてhttps://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1411820_00007.htm

子どもと接する職業の人の犯罪歴を確認する

日本版DBSが施行されると、保育士や教員、学童スタッフ、塾講師などの子どもと接する職業の採用時には、その人物が過去に性犯罪歴を有しているかどうかを確認する手続きが義務となります。

確認の方法については、行政機関や警察が管理する犯罪歴データベースと照合する形で行うものとしています。
事業者が採用前に犯罪歴を把握できる仕組みを作ることでリスクが高い人物をあらかじめ教育の現場から遠ざけることができるため、子どもを対象にした性犯罪の予防という観点からはとても理にかなっているといえるでしょう。

雇用する側が性犯罪のリスクの有無をチェックする

日本版DBSの制度が施行されると、採用前に性犯罪歴の有無を確認しなければならないため、事業者にとっても「安心して雇用できる環境」が整備されることになります。

この制度の導入は、広範な業界に影響を与えることになります。ここで注意したいのが、対象者の義務ではなく事業者側の義務であるという点です。

対象となる児童等とは

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律によると、児童生徒等は「学校に在籍する幼児・児童又は生徒、十八歳未満の者」とされています。
こども性暴力防止法における「児童等」も上記の「児童生徒等」が含まれます。

日本版DBSが導入されたらどうなるのか

この制度が施行されたあと、事業者にとって具体的に何が変わるのでしょうか。メリットや課題、現場で起こりうる変化を解説します。

相談・被害の申告がしやすくする

日本版DBSでは、過去の犯罪歴のチェックだけでなく事業者に対して、研修や児童等との面談、そして、子どもが相談を行いやすくするための措置が義務づけられています。
こうした体制が全国で取られるため、被害者が声を上げやすい環境を作ることができます。

こうした制度が整うことで、性加害の問題に社会全体が敏感になると同時に、被害者が「声を上げても守られる」という安心感が広がる可能性があります。

事業者にとっても、性犯罪が知らないうちに水面下で進行してしまうリスクを下げることができます。

被害者支援

日本版DBSでは、被害が出てしまった場合の対策についても定められています。

被害者の保護や被害の調査を行う義務が事業者に課されることとなります。具体的にどのような方法で保護するのか、また調査の方法についてはさまざまな関係する制度を相互補完することで確立されます。

例えば、被害児童の心のケアのためのスクールカウンセラーの増員、心理ケアを担う専門機関との連携、性被害専用ホットラインの設置などが一例です。また、被害者支援の取組として、ワンストップ支援センター等における被害者支援の強化や法的な支援の枠組みもあげられています。

犯罪歴のチェックや被害者の保護は事業者の義務

日本版DBSでは、過去の犯罪歴が確認された者による児童対象性暴力等が行われるおそれありと認められる場合は児童対象性暴力等の防止等のための措置が事業者の義務となります。

学校設置者等及び民間教育保育等事業者の責務

・教員等及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止に努める
・児童対象性暴力等の被害児童等を適切に保護する

具体的には、該当する人物を教育、保育等の業務に従事させないといった対応をとらなければなりません。また、被害が発生した場合は適切に保護して調査を行います。

性嗜好障害への治療と更生

ただし、日本版DBSは、過去に犯罪歴がある人物を単に排除するための制度ではありません。
こども・若者の性被害防止のための総合的対策は、以下の4つを柱としています。

①加害の防止
②相談・被害申告をしやすくする
③被害者支援
④治療・更生

このように、単なる排除ではなく、治療と更生も制度の中に組み込まれているのです。性嗜好障害とされる人に対しては、精神科的・心理的治療を通じた再発予防が不可欠とされています。
法制度の中に「治療と支援」のプロセスを組み込むことで、社会的排除にならないバランスの取れた制度となることでしょう。

プライバシーや人権に関する問題

日本版DBSは、子どもを対象にした性犯罪の防止という社会的な要請に応える制度ですが、プライバシーに関する問題や職業選択の自由との兼ね合いが問題になる可能性があります。

過去の性犯罪歴が、個人にとって極めてセンシティブな情報であること、そして、過去の犯罪歴であるため「すでに罪を償ったあとである」という点も考慮しなければなりません。
例えば、情報の漏洩、誤った適用、不正利用や差別的な運用がされると、本人の社会生活に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

事業者には、こうしたプライバシーへの配慮と情報管理に関するリスク管理が求められます。

対象者が多くなる可能性

日本版DBSでは、対象となる事業者の範囲が広いため実務上の運用にも大きな影響が出てくる可能性があります。
仮に「子どもと接する可能性があるすべての職業」が対象となれば、学習塾、芸術教室、スポーツクラブ、子ども食堂など、非常に広範囲にわたる場面で過去の犯罪歴のチェックやその他の義務を事業者が負います。

制度の目的は社会の要請に添ったものですが、事業者側の負担が増加するため、特にスタート時は混乱が生じる可能性があります。また、行政側の支援業務の煩雑化や遅延も懸念されています。

まとめ

日本版DBSは、子どもを性犯罪が守るための制度として導入される制度です。学校や保育施設だけでなく、子どもと接する様々な業種が対象となります。
性犯罪歴のある人物が教育・保育の現場に経つことを防ぎ、被害を防止するという目的は、多くの人が共感できるものでしょう。

ですがその一方で、プライバシー保護、情報管理の適正性、更生支援のあり方など、慎重な設計が求められる点も数多くあります。また、事業者側の負担が大きくなることも懸念されています。
対象となる予定の事業者は、この制度のルールを把握しつつ具体的にどのような措置が必要なのかを事前に検討する必要があります。

参考: 内閣府男女共同参画局「こども性暴力防止に向けた総合的な対策の推進」https://www.gender.go.jp/kaigi/sonota/pdf/kyouka/10/01.pdf

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