子どもを取り巻く環境は時代によって大きく変化します。インターネット普及以前は、子どもの意思疎通の手段は、電話や訪問等に限られ親が把握することは容易でした。しかしインターネット利用率が上がるにつれ、子どもたちがインターネット上で親のあずかり知らぬ場所で交友関係を広げることが増え、様々な問題を引き起こしています。その1つが学校裏サイトです。
本記事では、学校裏サイトの問題や書き込みの削除方法などを解説します。子どもが学校裏サイトの問題で苦しんでいる方や誹謗中傷を書き込まれて困っている方は、本記事を参考に適切な対策をとりましょう。
目次
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学校裏サイトとは、小学校や中学校、高等学校などの学校の非公式サイトのことを言います。生徒や卒業生などの有志が無料のサーバーなどをレンタルして開設することが多く、正常な判断ができる管理者が不在なため無法地帯になることが少なくありません。
特定の子どもに対する誹謗中傷や、個人情報の無断掲載、援助交際の助長などが社会問題化しました。学校裏サイト問題が顕在化したのが平成19年頃です。
すでに10年以上が経過しており、当時より数多くのSNSが誕生していますので、現在では学校裏サイトは減少しています。
しかしながら、学校裏サイトへの不適切な投稿がなくなったわけではなく、現在も継続しています。
東京都では平成21年から学校裏サイトの監視を続けており、その結果によると平成28年度に調査した学校は2160校、そのうち学校裏サイトが検出されたのは742校でした。平成30年度は2145校を巡回し、494校に学校裏サイトが存在することが確認されています。
不適切な投稿も依然として続いており、学校裏サイト問題は解決したとは言えない状態です。
学校裏サイトで数多くの不適切な書き込みが行われています。東京都の調査結果を参考に、学校裏サイトの問題を確認していきましょう。
平成28年度不適切書き込みの件数は全体で9797件となり、そのうち97%が自分自身の個人情報を書き込むものでした。
学校裏サイトは、「裏」と言いながら誰でもアクセスできるものです。しかし、子どもたちは学校裏サイトが世界に開かれたものという認識がないため、自分の個人情報を自ら投稿しているのです。氏名や住所といった情報だけでなく、自宅が特定できる写真などの投稿も危険です。現在の学校裏サイトにおける問題は個人情報の書き込みがメインと考えられます。
学校裏サイトは、以前は誹謗中傷等の書き込みが大きな問題となっていましたが現在では、誹謗中傷の占める割合はそれほど大きくありません。平成27年度も全体の0.3%、平成28年度は全体の0.2%と、不適切な書き込みに対する割合はそれほど高くありません。
とはいえ、現在でも誹謗中傷書き込みは存在しますので、被害にあうもしくは加害者になってしまう可能性はあります。
学校裏サイトは、裏というだけあって簡単に検索で探すことができません。学校裏サイト全盛期であれば、google検索や「裏2ちゃんねる」の検索によってある程度確認することができました。しかし現在では、当時は隆盛を誇った裏2チャンネルも存在しません。
現在、学校裏サイト確認する方法は「裏サイトチェッカー」での確認や、口コミによるものがほとんどです。裏サイトチェッカーには、ある程度の情報が集約されていますので、こちらのサイトでご自身のお子様が通われている学校の学校裏サイトを確認しておきましょう。
裏サイトチェッカー
http://schecker.jp
学校裏サイトで我が子の不適切な書き込みを発見したら、削除しなければなりません。我が子についての誹謗中傷だけでなく、加害者になったもの、または自分で個人情報を書き込んだものも含めて削除が必要です。
学校裏サイトに不適切な書き込みを発見した場合の削除手順がこちらです。
まずは書き込みをスクリーンショット等で保存してください。削除するだけでなく、訴訟等を検討している場合は証拠が重要となります。
次に、サイト運営者に削除を依頼します。ほとんどのサイトで、削除申請フォームやお問い合わせ窓口がありますので、そこから削除の理由とともに削除を依頼しましょう。
運営者に削除を依頼しても応じてもらえない場合は、プロバイダに直接削除を申請する方法もあります。
プロバイダが削除に応じない場合は、裁判所に「仮処分」を申し立てることで、訴訟よりも短期間で解決できる可能性があります。仮処分の申し立ては、個人で行うことも不可能ではありませんが、証拠や必要書類が必要である事と手続きも煩雑ですので、難しい場合は弁護士に依頼しましょう。
削除の仮処分には以下の書類が必要です。
申立が完了すると、裁判官との面談である「審尋」が行われます。審尋では申立てた当事者だけでなく、相手方(書き込んだ当事者)も呼び出されて面接されます。
学校裏サイトで子どもが誹謗中傷の対象になったときは、削除以外にも刑事告訴や慰謝料請求が可能になるケースもあります。
これらのケースは「名誉毀損罪」に問える可能性があります。名誉毀損罪は刑法に規定された犯罪です。相手が20歳未満の未成年の場合は、刑事裁判ではなく少年審判で裁かれることになります。以下のケースでは侮辱罪に問える可能性があるでしょう。
名誉毀損罪や侮辱罪に該当する場合は、慰謝料の請求ができる場合も考えられます。未成年には法的責任能力はないものの、保護監督すべき親にその責任を負わせることは可能です。
学校裏サイトは子どもが被害者になるだけでなく、加害者となって他の子どもや教師に対して誹謗中傷してしまうこともあります。その場合も削除しなければなりませんが、すでに相手の子どもや親が書き込みを発見した場合は、彼らへの対応も必要になります。
万が一相手が、被害届や告訴状を提出した場合に警察が捜査した結果、子どもが逮捕されてしまう可能性もゼロではありません。未成年の子どもが起こした少年事件では「全件送致主義」といって、すべての事件が家庭裁判所に送致されます。
被害届や告訴状の提出を回避するためには、被害者との話し合いが有効です。妥当な慰謝料等を支払うことで示談が成立すれば、刑事告訴等の恐れはなくなります。
現在の学校裏サイトにおける問題の多くが「自分自身による個人情報の書き込み」です。ただし、誹謗中傷等もなくなっているわけではないので、我が子が被害者だけでなく加害者になる可能性も秘めています。
学校裏サイトチェッカーなどで、学校裏サイトを確認して問題がある書き込みを発見した場合、しかるべき対処をしていきましょう。
削除対策を弁護士に代行して欲しい場合や、投稿者の特定・訴訟を視野に入れている場合は、弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください。