爆サイや5ちゃんねるなどのネット掲示板やSNSで誹謗中傷を受けた場合、加害者のIPアドレスから投稿者を特定できれば、損害賠償請求や示談交渉に持ち込むことができます。
悪いことをした人なら、警察が取り締まるのが筋ではないかと思うかもしれませんが、実際は必ずしも警察が出動するとは限りません。そこで本記事では、IPアドレスの開示と警察の対応について解説していきます。
目次
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結論から言うと、名誉毀損などの事実があれば、警察が捜査の中でIPアドレスの開示を関係サイトなどに請求する可能性はあります。ただし被害者自身で投稿者を特定しないと警察は動いてくれないことが多い印象です。
ネット記事の削除依頼を警察に対応してもらうことは、原則できません。警視庁のホームページには、インターネット上で誹謗中傷等の被害を受けたときの対応に関して、下記のように記載されています。
「誹謗中傷を受けたり、自分のメールアドレスや電話番号などの個人情報が載せられたような場合は、その掲示板のアドレスを確認し、当該掲示板の管理者、もしくはサーバ管理者に削除依頼をする」
引用元:警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/nettrouble/jirei_other/slander.html
これはつまり、「ネット上の誹謗中傷や個人情報暴露は、自らサイト管理者やプロバイダ(通信業者など)に削除依頼して解決するように」ということです。基本的に掲示板やSNSなどに書き込まれた投稿の削除依頼は、自分自身で、あるいは弁護士を通してすることになります。
ただし、あわせて下記のようにも記載されており、書き込み内容が犯罪に関わるときは、警察で対応してもらえる可能性があります。
「名誉毀損や業務妨害等の犯罪に該当するような場合は、お住まいの地域を管轄している警察署で相談する。」
引用元:警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/nettrouble/jirei_other/slander.html
ネット上で名誉毀損や業務妨害などの被害を受けた場合、地域の警察署に相談が可能です。刑事事件化した場合は、警察の捜査過程で書き込みをした犯人が特定され、逮捕や起訴の段階で住所・氏名が公になります。
警察が動くのは書き込みに犯罪性が疑われるときです。警察でIPアドレスの開示請求の対応ができる可能性のある例をいくつか紹介します。
ネット上のトラブルでよくあるのが、名誉毀損罪や侮辱罪に当たる内容の書き込みです。名誉毀損罪は事実を摘示して他者を貶める内容に適用されるのに対し、侮辱罪は事実を摘示せずに中傷した場合に該当します。
上記のような書き込みに対して、証拠とともに被害を警察に訴えれば、捜査をしてもらえる可能性があるでしょう。しかし、罪を立件するのは難しいため、民事で解決するように警察から促されるケースも多いです。
ネット上で、生命や身体、財産、名誉などに危害を加えると脅された場合、脅迫罪が成立する可能性があり、刑事事件の対象となります。例えば、以下のような書き込みがなされた場合です。
威力(暴力や脅しなど)を用いて業務を妨害するのが、威力業務妨害罪です。例えば、下記のような無差別殺人や放火の犯行予告は威力業務妨害罪に当たる可能性があります。
こういった書き込みを見つけたら、すぐに警察署に相談するようにしてください。面白半分で書き込む人もいますが、過去には予告通りに実行した犯人もいるため、放置しておくのは危険です。
事実無根の指摘やデマで業務を妨害するような書き込みを見つけたら、偽計業務妨害罪の疑いで警察が動く可能性があります。例えば、以下のような書き込みです。
前述の犯罪に該当する書き込みを見つけた場合や、それ以外でも警察への相談が適当だと判断した際は警察に相談してみてください。
最寄りの警察署を訪ねるほか、電話で相談することもできます。電話番号は全国共通で、短縮ダイヤル「#9110」です。事情を説明すれば、サイバー犯罪対策課につないでもらえるはずです。
なお、被害届を提出するときは必ず警察署に足を運ぶことになります。
警察に相談する際は、事前に名誉毀損や誹謗中傷を受けたことを証明するものを準備しておく必要があります。もし可能ならばパソコンで投稿をプリントアウトし、それが難しければ、スマホのスクリーンショットで画面を保存するなどして、提出できるように印刷しておくのがよいでしょう。
また、実際にネット上に該当の書き込みが存在するのかを確認してもらうために、サイトページのURLを控えておくことが大事です。
該当の書き込みがなされたサイト運営者に対して「ログの保存」を依頼しておくことも重要です。ネットにアクセスした際のログ情報は、一定期間を過ぎると削除されてしまうため、急がないと犯人を特定できなくなる可能性があります。
警察で対応を断られた場合や前向きな返事をもらえなかった場合は、誹謗中傷に該当する書き込みをした犯人を自ら特定し、その責任を追及することになります。
その場合は、プロバイダ責任制限法に基づきサイト運営者にIPアドレスの開示を請求し、IPアドレスからプロバイダを割り出した後、投稿者の個人情報の開示をプロバイダに請求します。
投稿者の情報開示を求める際は、まず自分がどのような権利侵害にあったかが明確でなければなりません。権利の侵害があったことを証明できる証拠も必要です。
また、プロバイダに残されている投稿者に関する情報が一定期間を過ぎると削除されてしまうため、書き込みの日時が古くないかも確認しておきましょう。
投稿者の個人情報は、プロバイダ(投稿者が契約しているインターネット通信会社など)が保有しています。そのプロバイダを特定するために必要なのが、サイトにアクセスしたときの投稿者のIPアドレスです。
そこで、まずはサイト運営者に対して、投稿者のIPアドレス開示を請求します。
問題となる書き込みをした人が利用したプロバイダを特定できたら、そのプロバイダにアクセスログの保存を要請します。一定期間を過ぎるとログ情報は削除されてしまう可能性があるためです。
なお、プロバイダに対してアクセスログの保存を要請する際は、以下の2つの方法が考えられます。
アクセスログ保存要請ができたら、プロバイダに投稿者の情報を開示するよう請求します。情報開示請求を行う方法は、以下の2点です。
プロバイダに投稿者の個人情報を開示するよう書面で要請しても拒否されることが多いため、結果的に「発信者情報開示命令申立て」を裁判所に申し立て、裁判所より開示決定を出してもらうのが一般的です。
警察でIPアドレスの開示請求に対応してくれないときは、弁護士に依頼するのがおすすめです。
警察に相談しても明らかに犯罪に該当するものでなければ、告訴を受理してもらえず、IPアドレスの開示に対応してもらうことはできません。IPアドレスの開示にあたっては、ログの保存期間内に開示請求を行わなければなりませんので、警察に相談する方法ではログの保存期間内に対応してもらえず、IPアドレスの開示ができなくなってしまうリスクがあります。
弁護士であれば、IPアドレスの開示請求の依頼があればすぐに開示請求の手続きに着手することができますので、迅速にIPアドレスの開示を実現することができます。
IPアドレスの開示請求や投稿者の発信者情報開示請求により、投稿者を特定することができたら、投稿者に対して、損害賠償請求を行っていきます。
弁護士に依頼すれば、投稿者との交渉や裁判手続きなどをすべて任せることができますので、ご本人の負担を大幅に軽減することができます。不慣れな方が交渉や裁判の手続きを行うのは非常に困難ですので、専門家である弁護士に任せるのが安心です。
インターネット上の掲示板やSNSなどで悪質な投稿がなされた場合には、損害賠償請求などの民事上の責任追及だけでなく、刑事告訴の検討も必要になります。
被害者個人が警察に相談しても、さまざまな理由を付けて告訴の受理を拒まれてしまうケースが多いため、より確実に告訴を受理してもらうには専門家である弁護士のサポートが不可欠になります。
弁護士であれば告訴状の作成や警察署への提出・事情説明などにより刑事告訴のサポートを行うことができます。
なお、刑事告訴は犯人が分かってから6か月以内に対応しなければいけないので(刑事訴訟法235条)、犯人が分かってから素早く行う必要があります。
IPアドレスの開示請求を弁護士に依頼すると、弁護士費用の支払いが必要になります。以下では、弁護士費用の内訳と一般的な相場について説明します。
弁護士費用は、一般的に以下のような内訳になっています。
法律相談料とは、弁護士にIPアドレスの開示請求に関する相談をしたときに発生する費用です。
最近では、インターネット関連のトラブルについて無料相談を受け付けている法律事務所もありますので、法律相談料の負担を抑えたいという場合には、無料相談を受け付けている事務所に相談してみるとよいでしょう。
着手金とは、弁護士にIPアドレスの開示請求を依頼したときに発生する費用です。実際にIPアドレスの開示を受けられたか否かにかかわらず、発生するので、IPアドレスの開示を受けられなかったとしても返金されることはありません。
報酬金とは、弁護士に依頼した事件が終了したときに、その成果に応じて発生する費用です。IPアドレスの開示請求を依頼した場合には、サイト運営者からIPアドレスの開示を受けられた場合に報酬金が発生します。IPアドレスの開示が受けられなければ報酬金は0円です。
日当とは、弁護士が事件処理のために事務所所在地から移動するなどして、時間的に拘束される際に支払われる費用です。
日当には、裁判所に出廷するごとに支払われる「出廷日当」や出張するごとに支払われる「出張日当」などがあります。日当は、交通費や宿泊費とは別に支払う必要のある費用です。
実費とは、弁護士が事件処理のために支出した費用のことをいいます。具体的には、以下のような費用があります。
・収入印紙代
・郵便切手代
・コピー代
・交通費
・通信費
・宿泊料
では、実際にIPアドレスの開示請求を弁護士に依頼するとどのくらいの費用が掛かるのでしょうか。以下で一般的な弁護士費用の相場を説明します。
サイト運営者にIPアドレスの開示請求をする方法としては、サイト運営者に任意開示を求める方法と裁判所に発信者情報開示の仮処分を申し立てる方法があります。それぞれの費用相場は、以下のようになっています。
着手金の相場 | 報酬金の相場 | |
任意開示を求める方法 | 5~10万円 | 10~20万円 |
発信者情報開示の仮処分の申立て | 20~40万円 | 10~20万円 |
サイト運営者からIPアドレスの開示を受けただけでは、投稿者を特定することはできませんので、次はプロバイダに対して投稿者の発信者情報開示請求を行います。プロバイダに対する発信者情報開示請求は、基本的に裁判所に対して発信者情報開示命令を申し立てる方法で行いますので、その場合の費用相場は、以下のようになっています。
着手金の相場 | 報酬金の相場 | |
発信者情報開示命令の申立て | 20~40万円 | 10~20万円 |
警察は犯罪捜査を行う機関であるため、悪質な書き込みであっても犯罪立件できない案件で捜査を進めることはほとんどありません。投稿者を特定するには、自分自身で発信者情報の開示請求を進める必要があります。
といっても、実際は弁護士に手続きを依頼するのが一般的です。なぜなら、IPアドレスや個人情報の開示請求は、損害賠償請求や示談交渉といった法的手続きのための準備に過ぎません。IPアドレスや個人情報の開示請求も、弁護士を通したほうがサイト運営者・プロバイダとスムーズにやりとりできるケースが多いです。
アークレスト法律事務所は、匿名掲示板やSNSをはじめとする様々なネット問題に取り組んできた弁護士集団です。ネットの誹謗中傷等でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。