名誉毀損の被害を受けた場合、警察に刑事告訴をすることや相手に慰謝料を請求することができます。このような請求に必要となるのが、名誉毀損を証明する証拠です。そこで、名誉毀損で相手を訴える場合に必要となる証拠の種類や集め方について解説します。
名誉毀損には、職場など公衆の面前で直接相手から誹謗中傷されたようなケースと、SNSや匿名掲示板などインターネット上で誹謗中傷を受けるケースとがあります。
公衆の面前で相手から誹謗中傷を受けたケースで、相手を名誉毀損で訴えるために必要な証拠としては次のようなものがあります。
したがって、職場で特定の人との間でトラブルが起きているなど、相手から名誉毀損を受けることが予測される場合には、相手にばれないように録音や録画の準備をしておくとよいでしょう。また、職場などであれば名誉毀損を目撃した人からの目撃証言が得られることがあります。
例えば、被害者が参加していない会議などのように被害者の知らないところで名誉毀損をされていたという場合には、会議に参加した同僚から報告を受けて名誉毀損の事実を把握することがあります。この場合には、同僚からの報告のメッセージ等を保存しておき証拠とすることもできます。これも、一種の目撃証言といえます。
インターネット上で名誉毀損をされた場合には、比較的証拠の収集はしやすいといえます。この場合に証拠となるのは次のようなものです。
名誉毀損の投稿は投稿者が削除してしまうことがあります。このため、名誉毀損となる可能性のある投稿を見つけた場合には、すぐにスクリーンショットを保存する必要があります。このとき、投稿されたページのURLや投稿日時などが一緒に映るように保存することがポイントです。
また、インターネット上の名誉毀損では加害者が誰かがわからないことが多々あります。インターネットでは匿名での投稿が可能であるためです。投稿者を特定するためには、裁判所の仮処分手続などを利用して開示を求める方法があります。
もっとも、SNSであれば投稿者のアカウントはわかりますので、アカウントのプロフィールページのスクリーンショットなど加害者の特定につながる情報も念のため保存しておくとよいでしょう。
名誉毀損が成立するためには、「公然と」誹謗中傷が行われたことが必要です。「公然と」とは、不特定又は多数の人に対してという意味です。このため、相手との一対一の電話やメールで悪口を言われたような場合には、「公然と」とされたものといえず、名誉毀損は成立しません。
ただし、特定かつ少数の人に対して誹謗中傷された場合であっても、不特定又は多数の人に伝播する可能性がある場合には、「公然と」という要件を満たすとした判例があります。
メールでの悪口が、加害者から被害者以外の少数の第三者に送られたような場合には、メールの転送が容易であることからすれば伝播可能性があるとして、「公然と」名誉毀損がされたと判断される余地があります。
上でSNSであればアカウントのプロフィールページが加害者の特定につながる可能性があると説明しました。もっとも、アカウントが完全な匿名で運用されている場合には、それ以上加害者の住所や氏名を特定することが難しいのも事実です。
このような場合に、加害者の住所や氏名を特定するためには、投稿に紐づくIPアドレスの開示請求を行い、そこから投稿者が利用したプロバイダ経由で投稿者の個人情報を開示してもらう必要があります。この投稿者を特定するための手続は、裁判所を介して行う必要があるため、名誉毀損の被害者が自分で行うことには困難が伴います。
名誉毀損で相手を訴えたい場合には、早い段階で弁護士に相談しておくことをおすすめします。
インターネット上の名誉毀損の場合、加害者を特定するための手続が必要となるところ、この手続はプロバイダにおけるログ保存期間との関係で短期間にミスなく行う必要があります。また、どのような証拠を収集する必要があるのかについても、早く弁護士に相談すればその分、適切な証拠を集められる可能性が高まります。
インターネット上の名誉毀損に関しては、インターネットの仕組みなどIT技術に関わる専門知識が必要です。このため、SNSや匿名掲示板等で名誉毀損の被害を受けている場合には、インターネット上の名誉毀損の取扱い実績が豊富な弁護士に相談することが大切です。