リベンジポルノとは、男性もしくは女性が交際相手や知人等の性的な写真をインターネットなどにアップロードする行為をいいます。警察庁の統計によると、リベンジポルノ被害者、加害者ともに20代が多く、若年層を中心にリベンジポルノが広がっていることがわかります。警察庁が発表している統計データによると、令和5年には、2,144件もの相談が警察に寄せられています。
では、リベンジポルノの被害にあったらどうすればよいのでしょうか。また、知らずにリベンジポルノに該当する行為を行ってしまった場合は何をすべきなのでしょうか。今回は、リベンジポルノの定義や具体例、対処法を解説します。
目次
リベンジポルノとは、現在もしくは過去の交際相手や配偶者、肉体関係にあった相手などの性的な画像を同意なくインターネット上に公開する行為です。交際中に撮影した性行為最中の写真や裸の写真、動画などを、別れや離婚などの腹いせにアップロードする行為がリベンジポルノとされています。
リベンジポルノは、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(以下「リベンジポルノ防止法」といいます。)」という法律によって規制されている行為で、違反した場合は罪に問われる可能性があります。リベンジポルノ防止法では、第三者に公開することを撮影対象者が認めていないにも関わらず、私事性的画像記録をインターネットなどに投稿する行為を禁じています。
私事性的画像記録とは、性交渉やそれに類する行為を撮影したもの、衣服を身につけていない状態の性的部位を撮影したもの、性器等を触っている様子を撮影したものなどです。また、衣服を着ている状態でも、性器などを強調する画像は、私事性的画像記録とみなされることもあります。
リベンジポルノ防止法は、元交際相手や配偶者による性的画像の公開を禁じる法律ではありますが、撮影者および対象者は限定されていません。つまり、盗撮などの犯罪行為によって入手した画像を公開しても、リベンジポルノ防止法違反に問われる可能性があるのです。
また、全く関係ない第三者が、掲示板の投稿をまとめサイトに転載する、各種SNSで拡散するなどの行為も、リベンジポルノ防止法に抵触すると考えられていますので、注意が必要です。
この法律では、「電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数者に提供した者」と、「行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者」がそれぞれ罪に問われます。
例えば、友人から「元カノの全裸写真を拡散してほしい」と頼まれて、拡散に協力した場合も罪に問われるので注意が必要です。こちらのケースでは、画像拡散の協力を求めた友人、拡散に協力した本人の両方が、リベンジポルノ防止法に違反していると考えられます。
私事性的画像記録を投稿した方が逮捕されて有罪になると、「3年以上の懲役または50万円以下の罰金」に問われる可能性があります。この罪は親告罪とされており、告訴がなされていなければ、起訴することはできません。
画像を提供した方は、「1年以上の懲役または30万円以下の罰金」とされています。
リベンジポルノの被害や相談については、平成26年に、「リベンジポルノ防止法」が施行されてからの相談件数を警察庁が公開しています。年度ごとの相談件数の推移がこちらです。
※出典元:警視庁の統計データ「私事性的画像」を参照(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/dv.html )
リベンジポルノの被害者は女性が多く、全体の84%以上を占めています。令和5年では、女性が1527人、男性が285人でした。また、加害者の48.60%が元交際相手です。次点で多いのが、「ネット関係の知人・友人(21.10%)」となっており、「インターネット掲示板やSNSで知り合った相手に、性的写真の送信を求められ応じたのち、関係が破綻したら公開されたケース」が考えられます。「加害者が元配偶者、もしくは配偶者」というケースは非常に少なく全体の3.90%です。
また、年齢層は、被害者加害者ともに20代以下が多く、30代以降になると、被害者は減少しています。
こちらの統計から、リベンジポルノは20代以下の女性が被害を受けることが多く、加害者は20代以下の男性で、元交際相手が多いということが分かります。
リベンジポルノ防止法の施行を受けて、リベンジポルノ防止法違反で逮捕される事例が増加しています。5ちゃんねるや、ホスラブ、爆サイなどの匿名掲示板でも、時折リベンジポルノ防止法で禁じられている私事性的画像記録と見られる画像がアップロードされており、多くの女性や男性の人権が侵害されている様子が伺えます。では実際にどのような被害事例があるのでしょうか。実際の逮捕事例を確認してみましょう。
令和元年7月17日、宮崎県でインターネットで知り合った女性の性的な画像をホームページに投稿したとして、56歳の男性が逮捕されました。被害者の女性が、自分の写真が投稿されている旨を警察署に相談したことで事件が発覚したとのことです。
平成30年10月、東京都の男性がトイレにカメラを仕掛けて女性の排泄動画を撮影し、投稿したとしてリベンジポルノ防止法で逮捕されました。
出会い系サイトで出会った女性との性行為中の動画を、インターネット動画投稿サイトに投稿したとして、30代の男性が逮捕されました。有料動画として投稿して、男性は約8800万円の収入を得ていたとのこと。被害者は複数にわたり、30人以上が無断で動画を投稿されていた可能性があるようです。
リベンジポルノは主にリベンジポルノ防止法違反となりますが、それ以外にも様々な罪に該当する可能性があります。リベンジポルノ防止法違反以外の罪について解説します。
裸の画像や性行為中の画像などを不特定多数が閲覧できるインターネットに公開することで、被害者の名誉が傷つけられたと認められると、刑法230条の「名誉毀損罪」に該当し、有罪になれば3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処されると規定されています。リベンジポルノ防止法違反とともに名誉毀損罪に問われる可能性もあります。
名誉毀損罪は「親告罪」であり、被害者が告訴しなければ、起訴することができません。
アップロードした性的な画像や動画が、18歳未満の青少年のものだった場合は、児童ポルノ禁止法違反となります。児童ポルノに該当する画像や動画を投稿すると、リベンジポルノ防止法違反よりも罪が重く、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰に処される可能性があります。 ただし、被写体が18歳未満であることを把握していなかった場合は、罪には問われないと考えられます。
性的な画像をインターネットに公開する、道路にばらまくなどの行為を行なった場合は、わいせつ物公然陳列罪に問われ、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性があります。
リベンジポルノ被害に遭ってしまったときはどのように対処したらよいのでしょうか。以下では、リベンジポルノ被害に遭ったときの具体的な対処法を説明します。
リベンジポルノ被害に遭ってしまったときは、早急に画像や動画の削除を行うことが重要です。リベンジポルノ画像や動画がインターネット上にアップロードされてしまうと、あっという間に拡散されてしまい、回復困難な被害が生じるリスクが高くなります。被害を最小限に抑えるためにも、一刻も早くリベンジポルノの削除請求をする必要があります。リベンジポルノの削除請求の方法としては、主に、以下の方法が挙げられます。
リベンジポルノ画像や動画が流出した場合、権利侵害が明白であり、かつ被害が深刻ですので、基本的には任意の削除依頼に応じてくれるサイトが多いといえます。そのため、まずは速やかに対象サイトに削除依頼を出すようにしましょう。
ご自身で対象サイトに削除依頼をすることはハードルが高いため、弁護士に相談し、弁護士から対象サイトに削除交渉をしていくことも可能です。
サイト運営者が削除に応じない場合は、裁判所に対して仮処分申立てを行う必要がありますので、速やかに弁護士に相談してください。
リベンジポルノの投稿者に対して、法的な責任追及を行うためには、まずは投稿者を特定する必要があります。
リベンジポルノの投稿者は、元交際相手など被害者と一定の関係にある人に限られますので、誰が投稿者であるかを予想するのは容易です。
しかし、リベンジポルノの投稿者を問い詰めたとしても「自分はやっていない」としらを切られる可能性が高いため、法的手続きにより投稿者を特定する必要があります。
このような場合には、発信者情報開示請求という手続きにより、投稿者の特定を行います。
発信者情報開示請求にあたっては、プロバイダのログの保存期間が短いため、リベンジポルノが判明したときはできるだけ早期に手続きを進めることが重要です。
リベンジポルノの投稿者が特定できたら、次は、投稿者に対して、損害賠償請求を行います。リベンジポルノの事案については被害者に生じる精神的苦痛が大きいため、一般的な誹謗中傷の事案に比べて慰謝料が高額になると考えられます。
リベンジポルノの投稿者に対する損害賠償請求は、まずは投稿者との交渉により賠償金の支払いを求めていきますが、投稿者が任意の支払いに応じてくれないときは、裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起することになります。
すでに説明したとおり、リベンジポルノは、犯罪行為に該当しますので、リベンジポルノの投稿者を刑事告訴することが可能です。警察庁の統計によると、令和5年のリベンジポルノでの罪名別の検挙状況は、以下のようになっています。
・脅迫……57件
・児童買春・児童ポルノ禁止法違反……55件
・強要……28件
・ストーカー規制法違反……24件
・名誉毀損……11件
・わいせつ物頒布……7件
・その他……71件
・リベンジポルノ防止法違反……62件
このようにリベンジポルノを行った場合には、さまざまな犯罪が成立する可能性がありますので、自らの行為の責任を取らせるためには、刑事告訴を検討するとよいでしょう。
上記のように、リベンジポルノの被害に遭ったときの対処法を説明しましたが、リベンジポルノの被害者自身で迅速に適切な対応をするのは困難ですので、まずは以下のような相談先に被害の相談をしてみるとよいでしょう。
セーファーインターネット協会とは、インターネットの悪用に対する実効的な対策を立案し、実行していく団体です。セーファーインターネット協会では、インターネット上の誹謗中傷に対して、サイト運営者への削除などの対応を促す通知を行う「誹謗中傷ホットライン」を運営しています。
そのため、セーファーインターネット協会に相談をすれば、無料でサイト運営者に対し、リベンジポルノの削除を促す通知を行ってくれるでしょう。
リベンジポルノの投稿者の刑事責任追及を希望する場合には、警察に相談しましょう。
被害が明白な場合には、警察も迅速に対応してくれるでしょう。
法務省では専門の相談員がリベンジポルノを含めた人権に関する相談を受け付けています。「女性の人権ホットライン」といった女性の人権問題に関する専用電話相談も設けられていますので、相談してみるとよいでしょう。
リベンジポルノ被害に遭った場合には、迅速な削除請求が必要になります。また、投稿者に対して法的責任を追及するためには、投稿者の特定が不可欠です。
このような対応をするためには、専門的な知識と経験が不可欠となりますので、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に依頼をすれば、弁護士が代理人として手続きを行ってくれますので、被害者自身では難しい法的手続きについても、適切かつ迅速に行い、リベンジポルノの被害を最小限に抑えるよう尽力してくれるでしょう。
リベンジポルノ行為は、リベンジポルノ防止法だけでなく様々な法律に抵触する可能性があります。しかし、被害を受けた女性の性的画像や動画は簡単にインターネットから抹消することができず、しかるべき対策を行わなければ、デジタルタトゥーとして一生インターネットに残ってしまうことになります。
リベンジポルノの被害に遭った場合は警察などの公的機関に相談するとともに、速やかに削除要請を行うなどの対策が必要です。
アークレスト法律事務所は、様々なネット問題に取り組んできた弁護士集団です。
ぜひお気軽にご相談ください。