ネット誹謗中傷被害を受けたとき、「削除代行業者」に対応を依頼してしまうケースがあります。削除代理業者は弁護士法違反の業者であり、そういった業者に支払った費用は本来支払う必要がなかったものと考えられるので、「不等利得」として返還請求できる可能性があります。
今回は、非弁行為を行っている削除代行業者に支払ってしまった費用を返還請求する方法を解説します。
ネット誹謗中傷対策業者を利用して記事の削除を依頼すると、料金が高すぎるケースが多いです。誹謗中傷被害を受けている場合には、「どうしてもすぐに削除したい」と考えて気持ちが焦っているので、高額な費用を支払ってでも業者に削除依頼してしまうものです。
しかし、誹謗中傷対策業者に依頼しても、実際には削除できないケースもありますし、業者がサイト管理者に連絡を入れると「違法業者から連絡が来た」と騒がれて、余計に投稿内容が広まってしまうケースもあります。
このようなとき、誹謗中傷対策が業者に対して「不当利得返還請求権」にもとづいて、支払った代金を返還請求できる可能性があります。
不当利得とは、法律上の原因なくして得られた利益です。たとえば他人をだましてお金をとったり、無効な契約にもとづいてお金を受けとったりした場合などに「不当利得」となります。
そして、不当利得によって損失を被った場合、不当利得した受益者に対し、利得の返還請求ができます。この請求権のことを「不当利得返還請求権」と言います。
不当利得返還請求する場合には、相手が不当利得した金額の中でも「現存利益」を請求できることが原則です。現存利益とは、請求時に現に残っている利益です。
ただし相手が「悪意」の場合には、得た利得を全額返金する必要があり、さらに年5%の利息が課されます。悪意とは、不当利得であることを知っていることを意味します。
また、不当利得返還請求権の時効は10年なので、10年以内に他人の不当利得によって損失を被ったのであれば、返還請求をして取り戻すことができます。
それでは、ネット誹謗中傷対策業者へ支払ったお金は「不当利得」になるのでしょうか?
このとき問題になるのは、ネット誹謗中傷対策業者に支払ったお金が「法律上の原因」にもとづいて支払われたかどうかということです。もしも法律上の原因によって支払われたのであれば、不当利得にはならないので返還請求はできません。
この点、裁判所はネット誹謗中傷業者との記事削除に関する契約は無効であると判断しています。その理由は、ネット誹謗中傷対策業者による削除請求の代行が、弁護士法違反になるからです。
ネット誹謗中傷対策業者とは、ネット上で風評被害を受けた被害者から依頼を受けて、対象サイトの管理者と交渉をするなどして削除させる業者です。もちろん、依頼者から報酬の支払いを受けますし、報酬が高額になるケースも多いです。
そして、弁護士資格のないものが他人から報酬をもらって法律業務を行うことは「弁護士法違反」です。報酬額が高額過ぎても公序良俗違反になる可能性があります。このように弁護士法違反の違法行為であり、公序良俗違反となるので、依頼者とネット誹謗中傷対策業者との間の契約は無効であると考えられているのです。
契約が無効ですから、その無効な契約によって支払われたお金は本来支払い義務がなかったということになります。以上より、ネット誹謗中傷対策業者が受け取ったお金は「不当利得」となり、返還請求の対象となります。
ネット誹謗中傷対策業者は、通常自らの違法行為について「悪意」です。すなわち、自分が弁護士法違反の違法行為を行っていることを知っているということです。
そこで、ネット誹謗中傷対策業者に支払い済みの代金を返還請求するときには、支払った代金の全額に足して、年5%の法定利息をつけて支払を請求できる可能性が高いです。
誹謗中傷対策業者がネット中傷記事の削除に失敗した事例のみならず、削除に成功した場合でも返金請求が可能です。
10年以内に誹謗中傷対策業者を利用したのであれば、きちんと権利を行使して支払った代金を返金させましょう。
以上のように、ネット誹謗中傷対策業者に依頼して記事削除を求めた場合、支払った費用の返金を求めることができます。
ただ、そのためには相手業者との示談交渉や訴訟などの手続きが必要となります。自分で対応することは難しく、専門的な法律知識とノウハウが必要となります。
一般の弁護士に依頼するよりも、IT法務を得意とする弁護士に依頼した方が、スピーディーかつ効果的に返金を受けることができるものです。
ネット誹謗中傷対策業者を使ったことがある場合、削除に成功した事例でも失敗した事例でも、まずはIT問題を得意とする当事務所の弁護士までご相談ください。