トレント(BitTorrent)を利用してAV(アダルトビデオ)をダウンロードすると、トレントの仕組み上、同時に自動的にアップロードも行われます。この違法アップロードは著作権法第119条第1項により10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金の対象となる重大な著作権侵害行為です。
著作権者は、発信者情報開示請求によってトレント利用者を特定し、損害賠償請求を行うケースが増えています。もし開示請求の意見照会書が届いた場合、身に覚えがあってもなくても、まず弁護士に相談することが最も重要な対処法です。
今回は、身に覚えがないのにAVのトレント利用で開示請求が届いたときの原因と正しい対処法について、ケース別に解説します。違法ダウンロードをしてしまった場合にどうすればいいか悩んでいる方も参考にしてください。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷の投稿をした場合や他人の権利を侵害した場合などに被疑者が違法な投稿をした人物を特定するための手続きです。
・誰かがSNSや掲示板に自分に関する悪い噂を書き込んだ
・ネット上に自分の写真を無断でアップされた
・口コミサイトに根拠のないデマを書かれた
などのケースでは、基本的に匿名で投稿がなされるため誰が投稿したのかがわかりません。投稿者に対して法的な責任追及をするには、投稿者の名前と住所がわからなければなりませんので、インターネット上の権利侵害ではその点がネックになります。
しかし、発信者情報開示請求の手続きを利用すれば匿名での投稿だったとしても、プロバイダなどから契約者情報の開示を得ることで投稿者を特定することが可能です。
トレント(BitTorrent)のようなP2P型ファイル共有ソフトでは、ダウンロードと同時に自動的にアップロード(他のユーザーへのファイル送信)が行われます。この点が最大の法的リスクです。
以下の表は、違法ダウンロードと違法アップロードの刑事罰の違いを整理したものです。
| 行為 | 根拠条文 | 法定刑 | 親告罪 |
| 違法アップロード | 著作権法第119条第1項 | 10年以下の拘禁刑 又は 1,000万円以下の罰金(併科あり) | 非親告罪(一部) |
| 違法ダウンロード | 著作権法第119条第3項 | 2年以下の拘禁刑 又は 200万円以下の罰金(併科あり) | 親告罪 |
トレントでは「ダウンロードしただけ」のつもりでも自動的にアップロードが行われるため、より重い違法アップロードの罰則が適用される可能性があります。著作権者がトレントモニタリングシステム等でIPアドレスを特定し、プロバイダへの発信者情報開示請求を行うことで利用者の個人情報が明らかになります。
トレントの利用自体は違法ではありませんが、トレントを利用してダウンロードをすると同時にアップロードも行うため、著作権で保護された作品をアップロードした場合、権利者から発信者情報開示請求がなされることがあります。
もっとも、ごくまれに身に覚えがないトレント利用でプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くことがありますが、それには主に以下のような理由があります。
| ケース | 内容 | 賠償義務を負う人 |
| 1. 同居家族がトレント利用 | 家族が自宅の回線でトレントを利用。契約者に意見照会書が届く | トレントを利用した家族 |
| 2. 友人がWi-Fiを使用 | 友人に自宅Wi-Fiのパスワードを教え、友人がトレントを利用 | トレントを利用した友人 |
| 3. 不正アクセス・乗っ取り | Wi-Fiの無断使用やウイルス感染による中継利用 | 不正アクセスした第三者 |
| 4. よくわからず利用していた | トレントの仕組みを理解せず利用。実際には権利侵害の主体 | 本人(自覚がなくても違法) |
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの1つ目は、同居する家族がトレントを利用していたケースです。
自宅のインターネット回線を利用して家族がトレントで違法なアップロードをしていた場合、プロバイダからの意見照会書は、トレントを利用した家族ではなくプロバイダの契約者に対して届きますので、身に覚えがない開示請求だと感じるはずです。この場合、まずは同居の家族にトレント理由の有無を確認してみるとよいでしょう。
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの2つ目は、友人が自宅のWi-Fiを使用してトレントを利用していたケースです。
友人と自宅でレポートの作成やネットゲームなどをする際に自宅のWi-Fiのパスワードを教えてネット回線を利用させることがありますが、最初のケースと同様に、友人がトレントを利用しているとプロバイダの契約者であるあなたのもとに意見照会書が届きます。
これも身に覚えがない開示請求がなされる理由の一つとなります。
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの3つ目は、不正アクセスによりネット回線の乗っ取り被害に遭ったケースです。
自宅のWi-Fiにパスワードが設定されていないまたは設定されているパスワードが簡単なものだった場合、近隣住民によりWi-Fiの無断使用がなされることがあります。また、パソコンがウイルスに感染した場合、侵害情報の中継地点として利用されることもあります。
このようなケースでは、あなたにトレント利用の身に覚えがなかったとしても、自宅のネット回線を利用してトレントが利用されているため、プロバイダから意見照会書が届くことになります。
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの4つ目は、よくわからずトレントを利用していたケースです。
友人から便利なソフトとしてトレントを勧められたような場合、トレントの仕組みをよく理解せずに利用していることがあります。これは、自分では権利侵害の認識がないものの、実際には権利侵害を行っているケースで、これまでの3つのケースとは異なり、あなたが権利侵害の主体になります。
【重要】トレントの仕組みを知らなかったとしても、違法アップロード行為の責任を免れることはできません。東京地裁令和3年8月27日判決(令和2年(ワ)第1573号)では、トレントの仕組みを理解していなくても著作権侵害が成立すると明確に判示されています。
以下では、身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求がされた場合の対処法について説明します。
意見照会書が届いたら、まず以下の3つを行ってください。
(1) トレント等のファイル共有ソフトの利用を即時停止し、自動起動設定もオフにする。
(2) 意見照会書の内容・回答期限・請求者情報を確認し、書類を全て保管する。
(3) 自己判断で回答せず、発信者情報開示請求に詳しい弁護士へ速やかに相談する。
自分でトレントを利用したことがなく開示請求に身に覚えがないなら、プロバイダから届いた「発信者情報開示に係る意見照会書」に不同意の回答をしましょう。
不同意の回答をすればプロバイダから請求者に対して任意に契約者情報が開示されることはありませんが、発信者情報開示請求訴訟において契約者情報の開示を命じる判決が確定すると不同意の回答をしてもあなたの情報が開示されてしまう点に注意が必要です。
トレントを利用していた場合、身に覚えがなくても違法行為をしていますので、プロバイダから届いた「発信者情報開示に係る意見照会書」に同意の回答をするべきでしょう。
同意の回答をするとプロバイダから請求者に対して契約者情報が開示されますので、後述するようにトレントで権利侵害された被害者との間で示談交渉を進めていきましょう。
開示請求に身に覚えがないからといって意見照会書を無視するのはやめた方がよいでしょう。
なぜなら、意見照会書を無視して何も回答をしないと、発信者情報の開示をプロバイダに委ねることになりますので、権利侵害が明白な事案では任意に開示がなされてしまうリスクがあるからです。
また、後々の示談交渉や裁判でも無視したことが不利になることもあるため、必ず同意または不同意の回答をするようにしてください。
以下では、具体的なケース別に身に覚えがない開示請求が認められてしまったときの対処法を説明します。
同居の家族がトレントを利用して権利侵害をしていた場合、被害者に対する賠償義務を負うのは開示請求により特定されたプロバイダの契約者ではなく、同居の家族になります。
そのため、被害者に対しては同居の家族による権利侵害であった旨を伝えて、同居の家族と被害者との間で示談交渉をしてもらうようにしましょう。
友人がトレントを利用して権利侵害をしていた場合、上記と同様に賠償義務を負うのはプロバイダの契約者ではなく、トレントを利用した友人です。
そのため、被害者に対して友人がトレントを利用して権利侵害をしていた旨を伝えて、友人と被害者との間で示談交渉をしてもらうようにしましょう。
不正アクセスにより権利侵害がなされた場合、被害者にはその旨を説明して、損害賠償請求を取り下げてもらうよう交渉していきます。
しかし、被害者が納得しないときは、訴訟提起されてしまいますので、訴訟の対応が必要になります。
訴訟において不正アクセスがあったことを立証できれば損害賠償の支払い義務を免れることができますが、そのような立証は容易ではありませんので早めに専門家に相談するべきです。
自分でトレントを利用していた場合、被害者との示談交渉を行うようにしましょう。
被害者から権利侵害により生じた損害の請求がなされますので、被害者の請求内容を精査した上で、金額や支払い方法について交渉をしていきます。被害者との交渉で合意が成立したときは、合意書を作成し、合意内容に従って示談金の支払いを行います。
【参考】トレントによるAV等の著作権侵害の示談金は、1作品あたり40万〜150万円程度の提示が多いとされています。知財高裁2022年4月20日判決では1人あたり約1.6万〜6万円台が認容されており、弁護士を通じた交渉で適正な金額での解決が可能です。
違法ダウンロードをしてしまった場合や、開示請求の意見照会書が届いた場合は、以下の手順で対処してください。
| 順番 | 対処法 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ファイル共有ソフトの利用を即時停止 | 利用を継続するとアップロードも続き侵害行為が拡大する |
| 2 | 違法ダウンロードしたデータを削除 | 著作権侵害をやめたとみなされる可能性が高まる |
| 3 | 違法ダウンロードしたコンテンツを共有しない | SNS等での共有は違法アップロードに該当し罪が重くなる |
| 4 | 意見照会書が届いたら期限内に回答 | 無視すると不利になる。同意・不同意いずれかを回答 |
| 5 | 弁護士に速やかに相談 | 法的リスクの把握、示談交渉、訴訟対応の全てにおいて専門家のサポートが不可欠 |
| 6 | 正規の方法でコンテンツを取得する | 今後の再発防止。ABJマーク・エルマークのあるサイトを利用 |
身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求をされた場合、本当にトレントを利用したことがないのであれば、被害者から賠償請求を拒否できる可能性があります。
しかし、それには法的観点から適切な主張・立証をしていかなければなりませんので、専門家である弁護士のサポートが不可欠となります。プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたときは、ご自身で対応する前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば今後の対応についてアドバイスしてもらうことができ、依頼すれば意見照会書への回答や被害者との交渉、訴訟手続きなど一連の対応をすべて任せることができます。
トレント利用に身に覚えがなかったとしても具体的な状況によっては、法的責任が生じるケースもありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
身に覚えのないトレント利用で開示請求が届いた場合、意見照会書を無視してはいけません。身に覚えがない理由は主に4つ(同居家族の利用・友人のWi-Fi使用・不正アクセス・トレントの仕組みを理解せず利用)であり、それぞれ対応方針が異なります。
違法ダウンロードをしてしまった場合は、まずファイル共有ソフトの利用を停止し、違法データを削除した上で、速やかに弁護士に相談してください。トレントでは違法アップロードも自動的に行われるため、著作権法第119条第1項により10年以下の拘禁刑又は1,000万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
いずれのケースでも、プロバイダから意見照会書が届いたら、自己判断で対応せず、発信者情報開示請求に詳しい弁護士へ速やかに相談することが最も重要です。弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください。
A. まずファイル共有ソフトの利用を即時停止し、違法ダウンロードしたデータを削除してください。意見照会書が届いている場合は期限内に回答し、自己判断で対応せず速やかに弁護士に相談することが最も重要です。弁護士を通じた示談交渉で逮捕・起訴を回避できる可能性があります。
A. はい、著作権で保護された作品を権利者の許可なくアップロードする行為は著作権法第119条第1項により10年以下の拘禁刑又は1,000万円以下の罰金の対象です。トレントではダウンロードと同時に自動的にアップロードが行われるため、ダウンロードだけのつもりでもアップロードの責任を問われるリスクがあります。
A. 意見照会書を無視せず、必ず同意または不同意の回答をしてください。身に覚えがない場合は不同意と回答し、弁護士に相談した上で対応方針を決めることが重要です。同居家族のトレント利用、友人のWi-Fi使用、不正アクセスなどが原因の可能性があります。
A. 著作権侵害で開示請求や損害賠償請求を受けた場合は、弁護士に相談して示談交渉を進めることが基本的な対処法です。早い段階で示談が成立すれば、刑事告訴の取り下げや損害賠償額の減額が期待できます。自己判断での回答や示談は避け、専門家のサポートを受けてください。
A. 意見照会書を無視すると、プロバイダの判断で個人情報が開示されてしまうリスクがあります。また、後々の示談交渉や裁判で無視したことが不利に働く可能性もあります。必ず期限内に同意・不同意いずれかの回答をし、弁護士に相談した上で対応してください。