過去に罪を犯した人の氏名や罪名などの情報は、「犯罪者リスト」にまとめられて保管されています。犯罪歴がある方は、犯罪者リストが公開されて自分の犯罪歴が周囲の人にばれるのではないかと、気がかりなことでしょう。
そこで今回は、犯罪者リストで犯罪歴がばれるのか、犯罪歴がばれないようにするためにはどうすればよいのかについて、弁護士が解説します。
公的機関が保管している犯罪者リストには、主に次の4種類があります。
警察庁には、今までに認知した被疑者の犯罪歴に関するデータが保管されています。データの内容は、被疑者の氏名や生年月日、罪名、逮捕の有無、処分の内容(検察官に送致したかどうか)などです。
これらのデータは、警察が行う様々な捜査に役立てられています。
検察庁には、今までに取り扱った被告人の前科に関するデータが保管されています。データの内容は、被告人の氏名や生年月日、前科の罪名、刑罰の内容などです。
これらのデータは、検察官による様々な捜査や、同じ人が再び犯した事件についての起訴・不起訴の判断、刑事裁判での求刑の内容を決める際の資料として役立てられています。
全国の市区町村の役所には、その地域に住民登録している人のうち、罰金以上の前科がある人のデータを掲載した「犯罪人名簿」が保管されています。
犯罪人名簿に掲載されたデータは、対象者の選挙権・被選挙権の有無や、一部の職業に関する欠格事由に該当しないかを確認するためなどに使用されています。
警察庁では、一般的な犯罪歴のデータとは別に、指名手配容疑者のリストも保管されています。
指名手配とは、一定の重大な事件で逮捕状が発付されているものの、逃亡するなどして検挙できていない被疑者について、その情報を広く公開して国民全体から情報提供を募る仕組みのことです。
警察庁のホームページで、重要指名手配被疑者の氏名、年齢、身長、顔写真が公表されています。
前記でご紹介した4種類の犯罪者リストのうち、指名手配被疑者のリストを除く3つの犯罪者リストにおいては、周囲の人に犯罪歴がばれることはありません。なぜなら、これら3つの犯罪者リストは、一般の人に対しては公開されていないからです。
指名手配被疑者のリストだけは、国民全体から情報提供を募るという性質上、広く公開されています。
つまり、犯罪歴があっても逃げ隠れしていない限り、犯罪者リストが公開されて周囲の人に犯罪歴がばれるという心配はありません。
犯罪者リストは非公開ですが、以下の原因で犯罪歴が周囲の人にばれる可能性はあります。
犯罪歴がばれる原因として最も多いのは、新聞やニュースなどで実名報道されることです。事件の内容によっては、前科や前歴など過去の犯罪歴まで報道されることもあります。
ただ、あらゆる刑事事件が実名で報道されるわけではありません。しかし、殺人や強盗など凶悪な事件や、性犯罪など社会的な関心が高い事件、一部の公務員など公的立場にある人が犯した事件などでは、実名で報道されやすい傾向にあります。
インターネットが普及した現在、事件の方法は新聞やテレビだけでなく、ネットでも公開されます。さらに、実名の報道記事が掲載されると、その内容を転載または引用した記事がSNSや掲示板サイト、個人ブログなどに投稿されることもあります。
そのため、検索エンジンで人の氏名を検索することで、その人の犯罪歴を調べることがある程度は可能となっているのです。
インターネット以外では、様々な人の口コミによって犯罪歴が広まってしまうこともあります。
親族が犯罪歴を言いふらすことは通常ありませんが、職場の同僚や友人・知人、近所の人たちなどの間で、口から口へと犯罪歴が伝わってしまうことはあるでしょう。
特に、実名が掲載された報道記事という情報源が存在する場合には、口コミが広まりやすくなります。
探偵事務所や興信所は、犯罪歴に関する調査も受け付けているところが多いです。したがって、婚約者や転職活動で応募した先の企業などが調査依頼をした場合には、犯罪歴がばれる可能性があります。
探偵は関係者への聞き込みなど様々な調査を行いますが、現代においてはインターネット検索が最も有効な調査方法だと言われています。
したがって、実名が掲載された報道記事やその他のネット記事が存在していると、探偵によって犯罪歴が暴かれてしまう可能性が高いといえます。
犯罪歴がばれる最も大きな要因は、ネット上で実名記事が公開されていることです。そのため、犯罪歴がばれないようにするためには、ネット上の実名記事を速やかに削除することが最も有効な手段です。
そのための方法として、次の3つが挙げられます。
実名記事が掲載されているサイトに、お問い合わせフォームや通報機能があれば、そこから削除を依頼するメッセージを送信する方法があります。
ただし、報道機関やサイト運営者にも表現の自由があるため、確実に削除してもらえるとは限りません。
そんなときは、弁護士を通じて削除の必要性を法的に説明してもらい、交渉してもらうことで、削除される可能性を高めることが可能です。
お問い合わせフォームなどからの削除依頼に応じてもらえなかった場合は、プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼の手続きが有効です。
送信防止措置依頼をすれば、サイト運営者は適切に対応しなければ損害賠償のリスクを負うと考えます。そのため、実名記事を削除してもらえる可能性がより高まります。
任意の手段で実名記事が削除されなかった場合は、裁判手続きが必要となります。
裁判手続きの中でも、早期の削除が期待できる手続きが「仮処分」です。仮処分とは、訴訟の判決などによる解決を待っていたのでは深刻な被害が生じる恐れがある場合に、裁判所が暫定的な措置を命じる処分のことです。
実名記事が公開され続けることによって想定される被害の内容を具体的に説明できれば、裁判所の強制力を持って実名記事を削除してもらうことも可能となります。
仮処分が認められなかった場合には、削除請求訴訟などの正式な裁判を提起し、判決による解決を図ることも考えられます。
犯罪歴がばれないようにするためには、公的機関の犯罪者リストを気にするよりも、ネット上の実名記事を速やかに削除することを検討すべきです。
ただ、一般の方がサイト運営者に削除依頼をするだけでは、なかなか削除してもらえないことも珍しくありません。
だからといって実名記事を放置していると、情報が拡散されてしまい、犯罪歴が広く知れ渡る恐れがあります。このような事態を回避するためには、早めに弁護士の力を借りて法的に対応することをおすすめします。
犯罪歴がばれないか心配な方は、インターネット関連のトラブル解決に精通した弁護士に相談してみましょう。