地域の口コミに特化した掲示板サイト、「爆サイ」上で誹謗中傷の被害にあった場合、投稿者のIPアドレスを知ることができれば、投稿者を特定できます。しかし、残念ながら、爆サイのサイトには投稿者のIPアドレスを表示させる機能はありません。そのため、投稿者本人を特定するためには、複数の手続きを踏む必要があります。
本記事では、投稿者特定の「仕組み」と「開示フロー」に特化して解説します。誹謀中傷対応の全体的な流れについては「関連記事」をご参照ください。
目次
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爆サイへ書き込んだからといってIPアドレスが公開されることはありません。ナレッジコミュニティのサイト上でも、「爆サイに投稿した人のIPアドレスが知りたい」、「爆サイ上で複数の投稿をしている人を同一人物と特定したい」という要望を見かけますが、爆サイでは運営者がIPアドレスを非表示としているため、私たちがIPアドレスを気軽に知ることはできないのです。
爆サイの書き込みをしたIPアドレスを知りたい場合は、発信者情報開示請求などの正式な手続きを行うことになります。
IPアドレスの表示といえば、5chを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。5chではスレッドによってはIPアドレスがIDとして表示されることがあり、同一人物の投稿かどうかが分かる仕組みになっています。しかし、爆サイにはそのような機能がなく、IPアドレスが表示されることはありません。
投稿者特定の仕組みを理解するために、3つの基礎概念を図解します:
IPアドレスとは、ネット上の住所のようなものと説明できます。ネットが利用できる端末、例えばパソコンやスマホをネットに接続するたびに、それぞれに割り当てられる識別番号です。IPアドレスが分かれば契約している電話会社等が分かるため、そこから利用者の住所や氏名が割り出せます。
| 概念 | 定義 | 具体例 |
|---|---|---|
| IPアドレス | インターネットに接続した端末に割り当てられる一意の識別番号 | 192.168.1.1 のような形式 |
| 静的IP | 接続するたびに同じIPアドレスが割り当てられる(企業向け) | 法人契約など |
| 動的IP | 接続するたびに異なるIPアドレスが割り当てられる(個人向け) | 一般的な家庭用インターネット |
アクセスログ(IPアドレス、タイムスタンプ、SIMカード識別番号等の通信記録のこと)は、投稿者特定の重要な証拠です。しかし、プロバイダが無期限保存する義務はなく、一般的には以下の期間でしか保存されていません:
| プロバイダの種類 | ログ保存期間 | 対応 |
|---|---|---|
| 固定回線プロバイダ(docomo・au・SoftBank等) | 約3~6ヶ月 | 投稿から3ヶ月以内に対応開始が必須 |
| 格安SIM・MVNO | 約3~6ヶ月 | 同上 |
| 公共WiFi・インターネットカフェ | 数日~1ヶ月程度 | 特に迅速な対応が必要 |
プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律。現行法は通称「情報流通プラットフォーム対処法」))は、以下の目的で制定されました:
爆サイに書き込まれた投稿のIPアドレスを知るための最初のステップが「発信者情報開示請求」(情報流通プラットフォーム対処法に基づく正式な手続き)です。サイト内のログ照会フォームから任意でのログの開示を求めていきましょう。
もし、ログの開示請求を拒まれた場合は、裁判所に仮処分の申し立て(プロバイダが任意開示に応じないときに、裁判所の決定で強制的に開示させる手続き)をすることになります。
爆サイに書き込まれた口コミに対して、IPアドレスの開示請求ができることはお分かりいただけたと思います。ただし、どのような書き込みでもIPが開示されるわけではありません。では、どのような書き込みがIPアドレスを開示してもらえるのでしょうか。その特徴を見ていきましょう。
当然のこととして、他人の権利を侵害している書き込み(名誉権・プライバシー権・肖像権など法律で守られた権利に対する攻撃)に対しては、IPアドレスを開示してもらえる可能性が高くなります。例えば、「〇〇さんは『この投資は儲かる』と言って、多くの人を騙しているから気を付けた方が良い」などの書き込みがなされた場合、名誉や社会的信用、プライバシーを侵害していますので、権利侵害の度合いが強いと判断され、IPアドレスが開示してもらえる可能性が高いでしょう。
爆サイでは、利用規約に禁止事項を明記しています。その禁止事項に抵触する場合は、IPアドレス開示の対象となりやすいでしょう。以下に、爆サイの利用規約内の禁止事項から主な項目を紹介します。
他人の名誉、社会的信用、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、著作権その他の知的財産権、その他の権利を侵害する行為(法令で定めたもの及び判例上認められたもの全てを含む)
引用元:利用規約|爆サイ.com
http://bakusai.com/rule/
本名、住所、メールアドレス、電話番号の記載(一般に公開されている情報・公人に関してはこの限りではありません)
引用元:利用規約|爆サイ.com
http://bakusai.com/rule/
犯罪予告、自殺への誘引その他他人を威迫・脅迫する旨が看取される内容を含むもの
引用元:利用規約|爆サイ.com
http://bakusai.com/rule/
IPアドレスが分かっただけで個人情報が特定されることはありません。IPアドレスから取得できる情報は、端末やプロバイダ、最寄りのルーターや書き込みがされた地域です。ただし、会社や学校のパソコンを利用した場合は、企業名や組織名が分かる場合もあります。
| IPアドレスから判明する情報 | 個人特定に使える? | 次のステップ |
|---|---|---|
| プロバイダ名(docomo・au・SoftBank等) | ×いいえ | プロバイダに発信者情報開示請求を行う |
| 地域情報(都道府県など) | ×いいえ | 同上 |
| 企業名・組織名(会社・学校から投稿) | △場合による | 企業内の特定の部署に絞られる、さらに組織内調査が必要 |
| 契約者の住所・氏名・電話番号 | ○はい | プロバイダからの情報開示により判明 |
爆サイに発信者情報開示請求を行い、IPアドレスが開示されたとしても、それだけで投稿者本人が特定できるわけではありません。以下のフローで段階的に情報が開示されていきます:
| 段階 | 対象 | 開示内容 | 必要な手続き | 期間 |
|---|---|---|---|---|
| ① | 爆サイ(コンテンツプロバイダ) | 投稿時刻、IPアドレス、タイムスタンプ等のログ | • 任意請求(ログ照会フォーム) • 仮処分申立て(応じない場合) | 1~2ヶ月 |
| ② | 通信事業者(プロバイダ・携帯電話会社) | 契約者の住所、氏名、電話番号、メールアドレス | • whois検索でプロバイダ特定 • 発信者情報開示請求訴訟(通常は訴訟が必要) | 2~6ヶ月 |
| ③ | 投稿者本人 | 住所・氏名が判明→損害賠償請求・刑事告訴が可能に | プロバイダからの情報開示後、投稿者に直接対応 | 即時 |
重要:各段階の詳細説明
はじめに、爆サイから開示されたIPアドレス情報を「IP SEARCH」等のIPアドレス検索ができるサイトで検索します。その目的は、投稿者がインターネットに接続したプロバイダを特定することです。
次に検索によって判明したプロバイダに対して発信者情報開示請求(訴訟により請求することが原則)を行います。
重要な注意点:ただし、「発信者情報開示請求」は、できるだけ早くする必要があります。というのも、アクセスログの保存期間は短く、プロバイダで半年程度、携帯電話会社では3ヶ月という所もあるためです。
プロバイダがこの請求に応じれば、投稿者の住所、氏名、メールアドレスなどの情報を取得することができます。では、個人情報開示請求にプロバイダ側が応じなかった場合はどうすれば良いのでしょうか。この場合は、訴訟を提起し、情報開示を命令する判決を出してもらう流れとなります。
投稿者のプロバイダから個人情報が開示され、問題の書き込みをした投稿者が特定できた段階で、投稿者の責任を追及できるようになります。被害者側が投稿者の責任を追及する方法のひとつは、損害賠償請求という民事責任の追及で、もうひとつは投稿者を告訴して罪に問う刑事責任の追及です。
ネットの書き込みの被害者は、投稿者に損害賠償を請求することができます。たとえ安易に行った書き込みだとしても、人や企業の名誉を傷つけたり、個人のプライバシーを侵害したりする行為は、民事上の不法行為に該当します。このような場合、加害者に損害の責任を負わせるのは当然の処置です。
損害額(慰謝料額)は、誹謗中傷の内容・程度などにより異なります。損害賠償請求については、民事上の問題となり、警察に対応を求めることはできませんのでご注意ください。
悪質な誹謗中傷の書き込みに対しては、告訴することで刑事事件として立件するよう訴えることができます。ネット上で人を誹謗中傷した場合は、その内容により侮辱罪や名誉毀損罪で罰せられる可能性があります。
悪質な書き込みを放置すると、誹謗中傷の書き込みをしても問題ないという誤解をネット利用者に与え、ネット社会の健全化を損なうこともあるので、誹謗中傷を受けた際には、上記のような対応を真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
IPアドレスの開示手続きは、自分自身で行うことも可能です。しかし、ほとんどの場合は裁判所を通じた手続きが必要となってきます。裁判にならなくても、IPアドレスの開示手続きは弁護士に依頼した方が良いと思われます。その理由は以下のとおりです。
ログ情報の開示請求や個人情報開示請求は、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)や個人情報保護法などの法律が絡んできます。ゆえに、非常に難解で複雑なものです。手続きを無理なくスムーズに進めていくには、法律に通じた弁護士の助力が必要です。
裁判所への仮処分の申し立てを行う場合、裁判所に理解してもらえるような書き方や法律知識が必要となってきます。また、プロバイダと交渉する際にも法律的な知識が必要です。弁護士に一任しておけば、難しい法律の知識がなくても手続きを進めてもらえます。
もしも手続きに時間がかかってしまうと、発信者の情報が削除され失われる可能性があります。また、同一人物が誹謗中傷を繰り返していることもあるため、素早く対応しないと被害が拡大することも考えられるのです。弁護士が間に入ることで、サイト運営者やプロバイダが迅速に動いてくれる可能性が高くなります。
以上のことからも、弁護士に依頼をした方がメリットが多いことがお分かりいただけたと思います。私たち弁護士法人アークレスト法律事務所は、これまでネット上のトラブルの解決に鋭意取り組んできました。様々なケースに応じて適切で迅速な対応を提案することが可能ですので、誹謗中傷対策にお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。
本記事で「IPアドレス開示の仕組み」について理解いただけたら、以下の関連記事で対応策をご確認ください