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プレステージ作品をトレントでDLして開示請求された!過去事例と対応方法を解説

動画共有サイトやファイル共有ソフトを使って著作権が保護されている動画などを無料でダウンロードする行為は、著作権を侵害する違法な行為に該当するおそれがあります。もちろん「プレステージ(PRESTIGE)」の作品についてもダウンロードやアップロードは違法です。
違法ダウンロードに利用されることが多いのがファイル共有ソフトであるトレントですが、著作権を侵害するファイルをダウンロードして共有したケースでは、権利者が発信者情報開示請求を行う例も報告されています。

この記事では、プレステージの作品を、トレントを使ってダウンロードして開示請求された場合にどうすればいいのか・・・。ダウンロードの違法性、開示請求を受けた際の正しい対処法などを解説します。

プレステージとトレントについて

まずここでは、プレステージやトレントについての基本知識を解説します。

プレステージとは

プレステージ(PRESTIGE)とは、日本国内でも知名度の高いアダルト映像メーカーのひとつです。動画配信サービスやオンラインストアも展開しているメーカーであり、DVD通販、アダルトグッズ等を販売しています。

プレステージは、その映像作品を不正に共有・配布した個人に対して発信者情報開示請求をする事例が知られている会社であり、映像作品の共有による著作権侵害に対して法的な対処を行っています。トレントのようなファイル共有ソフトを介してプレステージの作品を不正に入手した場合は、発信者情報開示請求や損害賠償請求を受けるリスクがあります。

トレントとは

トレントとは、インターネット上で大容量のファイルを分割し、複数のユーザー間で同時に送受信するシステムのことです。

実は、トレントのようなファイル共有ソフトそのものは違法なソフトではなく、利用すること自体が違法というわけでもありません。たとえば著作権を侵害しない適法なソフトウェアの配布やオープンソースのデータ共有、自分で作成したファイルの共有など、適法かつ正当な用途にも利用されています。

しかし、このトレントにはその大きな特徴として、ファイルのダウンロードと同時に自動的に他のユーザに対してファイルをアップロードするという点があります。これにより、ファイルをダウンロードした本人が意図していなくても「違法アップロードの加担者」になってしまうのです。違法アップロードの加担者になることで、発信者情報開示請求や損害賠償請求の対象になるリスクが高まります。
トレントを利用するケースの中には、映画や音楽、アニメやアダルト動画など著作権で保護されているコンテンツを共有するものもあります。権利者の許可なくトレントでファイルをダウンロードする行為は著作権法に違反する違法行為です。

トレントでのダウンロードだけでも違法

トレントを利用して著作権で保護されている作品をダウンロードする行為は、たとえ「自分で見るためのもの」でも違法です。
日本の著作権法第30条1項では、私的使用のための複製は一定範囲で認められています。例えば、テレビ放送をハードディスクなどに録画して自分が視聴するだけであれば「私的使用」ということになります。

ですが、違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードする行為はこの「私的使用」に含まれません。権利者の許可を得ていない動画をトレントで取得して、自分1人で視聴している状態でも違法となります。

また、前述したとおりトレントの仕組みでは、ダウンロードと同時にアップロード(送信)も行われるようになっています。仮に「自分だけが見るために入手した」であっても、実質的にはアップロードもしており、この点でも著作権法に違反することとなります。

プレステージ作品をダウンロードしたら開示請求されるのか

プレステージなどのアダルト映像メーカーは、違法に作品を共有・配布したユーザーに対して、積極的に法的措置を取る傾向があります。トレントを利用してダウンロードした場合も例外ではなく、著作権侵害の疑いがあれば、発信者情報開示請求が行われる可能性があります。

違法性がある場合は開示請求の可能性がある

プレステージのような映像制作会社は、著作権者として自社の作品を不正にアップロード・共有した者を特定し、損害賠償を請求する法的権利を持っています。特にトレントのように「ダウンロードと同時にアップロードが行われる」仕組みを持つサービスの場合、利用者本人が意図していなくても送信可能化権の侵害(著作権法第23条)にあたる可能性が高くなります。

このような行為が確認されると、権利者は通信事業者(プロバイダなど)に対して、発信者情報開示請求を行うことができます。この請求が認められれば、利用者の氏名・住所・連絡先が開示されるのです。

特に、プレステージはこれまでに複数の開示請求を行っており、自社が権利を持つアダルト映像コンテンツの「無断共有・無断ダウンロードを許さない」姿勢を明確にしています。そのため、軽い気持ちで作品を入手しただけでも、法的な手続きの対象となるリスクは十分にあるといえるでしょう。

開示請求とは

発信者情報開示請求とは、インターネット上で他人の権利を侵害するような投稿をした人や、著作権などの権利を侵害するようなファイルを共有した人を特定するために、プロバイダ(通信事業者)に対して権利者が投稿者・ファイル共有者等の氏名・住所・IPアドレスなどの開示を求めるための法的手続です。

通常、利用者の情報は個人情報保護法で守られているため簡単には第三者に開示されません。ですが、開示請求という手続きを踏むことで法律に則って「誰が違法ダウンロードをしたのか」という情報を開示できるのです。

トレントのように著作権侵害が強く疑われる場合は、情報流通プラットフォーム対処法に基づいて、開示が認められることが多いです。開示請求は、あくまでも「他人の権利を侵害するような投稿・ファイル共有等をした個人を特定するための手続き」であり、開示により個人が特定された後には示談交渉や民事裁判を通じて損害賠償金が請求されることとなります。

開示請求の流れ

トレントを通じてプレステージ作品を違法に共有・ダウンロードした場合、違法な共有行為を行った者に対する発信者情報開示請求はおおむね次のような手順で進みます。

1 権利者による違法配信ログの特定
著作権者(今回のケースではプレステージ)が、違法にアップロード・ダウンロードを行った者のIPアドレスやアクセス日時を特定します。最近では、権利者側が専門業者を通じてトレント上の通信ログを常時監視しているケースも少なくありません。

2 プロバイダへの開示請求
違法行為を確認した権利者は、取得した通信ログをもとに、プロバイダ(通信事業者)に対して発信者情報の開示を求めます。開示請求は、裁判所を通じて正式に行われるのが一般的です。

3 意見照会書の送付
開示請求が行われると、プロバイダから契約者宛に「発信者情報の開示請求がありました」という通知が届きます。契約者は、この通知に対して開示に同意するか、拒否するかを選択して回答します。

4 開示請求を拒否した場合
意見照会書で開示を拒否した場合、権利者は情報開示のための「発信者情報開示請求訴訟」を提起します。裁判所が著作権侵害の可能性を認めて正当な開示請求であると判断すれば、プロバイダに対して開示命令が出されます。

5 開示が認められた場合
発信者情報が開示されると、権利者は契約者の氏名・住所などを取得できます。その後、権利者が権利侵害者に対して損害賠償や示談金の支払いを求めるという流れになります。ここで権利を侵害した側が示談に応じてお金を支払えば、民事訴訟を避けられることもあります。

6 損害賠償請求訴訟
違法ダウンロードを行った本人が示談に応じない場合は、権利者は損害賠償請求訴訟を起こすことがあります。請求額は作品数や配布状況によって異なりますが、1件あたり数十万円規模になることもあります。

7 刑事事件に発展する可能性
違法ダウンロードについては民事だけでなく刑事事件になる可能性があります。内容が悪質な場合には、著作権者が刑事事件として捜査機関に被害届を出したり告訴したりするケースもあるのです。
たとえ、民事上の示談が成立していても、刑事告訴が行われる可能性は残っています。

このように、開示請求は正式な司法手続きを経て行われるため、利用者が通知を受けた段階ではすでに法的リスクが非常に高い状態にあります。軽視せず、早めに専門家へ相談することが重要です。

トレントでの違法ダウンロードの事例

トレントでの違法ダウンロードによる著作権侵害を認めた裁判の事例について解説します。

トレントの違法ダウンロードは著作権の侵害

この訴訟は、東京地方裁判所に提起されたものです。
トレントを利用した違法ダウンロードは「著作権の侵害に該当する」という判断を裁判所が明確にした事例として知られていて「トレント訴訟」と呼ばれることもあります。

たとえ、利用者がトレントの仕組みを理解していなかったとしても、違法であるという判断が下されました。

ダウンロードした時点で自動でアップロードされるという仕組みを理解してなくても、違法となるということです。もし「自分は意図的にアップロードしていない」「単にダウンロードしただけである」と主張してもトレントを利用してダウンロードした時点でその主張は認められないのです。

この判決は、トレントを利用したダウンロードが「私的使用の範囲」を超えていること、そして、ファイル共有をした結果に配布を伴う著作権侵害が成立すると明確に示した点で重要です。

東京地裁令和3年8月27日判決/令和2年(ワ)第1573号

開示請求された場合の対処法

開示請求された場合、プロバイダから「意見照会書」という通知が届きます。この時点で利用者は自分に対しての開示請求が行われたことを知ることになります。

「意見照会書」を受け取った場合は、冷静に対応することが重要です。この段階は「開示請求がされた」だけであり、損害賠償金の支払いなどが確定しているわけではありません。ですがすでに著作権者が法的手続きに移行しているのは明確です。

通知書を受け取った場合の対処法を解説します。

利用停止する

まず、最初に行うべきことは、トレントの使用を継続している場合はただちに停止することです。トレントの利用を継続していると、ダウンロードするたびに同時に自動的にアップロードがなされてユーザーにファイルが共有され、違法アップロードを行っているという状態が継続してしまいます。

すでに開示請求を受けている場合であっても、まずは利用をやめることで「今後の侵害行為を防ぐ意思がある」「違法行為を重ねない」ということになります。これは、プロバイダや権利者に対しても、誠実な姿勢を見せるうえで重要なポイントです。

弁護士に相談する

開示請求を受けたら、自分で対処しようとせずに弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、通知書の文面や返答内容には法的な意味合いがあり、誤った対応をすると不利な結果につながる可能性があるためです。

弁護士に依頼することで、適切な対応ができ、開示請求という慣れない事態でサポートを受けられるため精神的にも助けになります。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリットは以下の通りです。

  • どのような場合にどのような法的リスクがあるのかを正確に把握できる
  • 場面に応じて最適な対応方針を立てられる
  • 権利者からの請求への対応や示談交渉を任せられる

弁護士に相談する最大のメリットは、法的リスクを正確に把握して対応できることです。
弁護士は、著作権法や情報流通プラットフォーム対処法の仕組みを理解しているため、現在どのような責任を負う可能性があるのかを具体的に把握できます。 そのうえで、意見照会書に同意すべきか拒否すべきか、今後の訴訟リスクを見据えた最適な対応方針を立てることができます。

また、権利者との示談交渉が必要になった場合でも、弁護士を通すことで不要なトラブルを避けながら、適正な条件で解決を図れる可能性が高まります。開示請求は法的手続きの入口であるため、早い段階で専門家の支援を受けることが、トラブルを最小限に抑えるための最も確実な方法といえるでしょう。
仮に権利者から連絡が来た場合、弁護士を通して交渉を進めることで、不要なトラブルを避けつつ適正な金額で解決できる可能性が高まります。

このとき、弁護士なら誰でもいいというわけではありません。弁護士によっては開示請求への対応に詳しくないこともあり、開示請求や著作権の侵害に精通した弁護士に依頼することが大切です。アークレスト法律事務所には、開示請求や著作権についてのトラブルに強い弁護士が在籍しています。もし、開示請求をされたという場合はまずご相談ください。

まとめ

トレント(BitTorrent)を利用してプレステージ作品をダウンロードする行為は、たとえ自分だけで視聴する目的であっても著作権侵害と判断される可能性があります。トレントの仕組み上、ダウンロードと同時に自動的にアップロードが行われるため、「配布したつもりはない」という主張が通らないケースが多いのが現実です。

開示請求の通知を受け取った場合は、まず落ち着いて内容を確認しましょう。そして、弁護士に相談し、適切な対応方針を立てることが最も重要です。早い段階で専門家に相談することで、訴訟や高額な賠償を回避できる可能性が高まります。

違法ダウンロードは「知らなかった」「少しだけ」のつもりでも、結果として重大な法的責任を問われる行為です。もし、開示請求された場合は早い段階で弁護士に相談しましょう。

井尻