ネット上に企業の悪評を書き込まれた場合、「手続きが面倒そうだから」といった理由で放置するのは危険です。悪評は企業イメージが悪くなったり、売上の減少につながったりします。
総務省によると、2019年のインターネット利用率は89.8%でした。そのうちスマートフォンを利用しているのは63.3%で、誰でも気軽にインターネットへ接続できるようになり、利用率が上昇したとわかります。[注1]
インターネット利用率が上がったため、企業の悪評が人の目に触れやすくなりました。悪評を放置すると、売上や顧客の減少だけでなく、従業員や就職希望者への影響も懸念されます。
今回は、ネット上に書き込まれた企業の悪評を放置するリスクを解説し、削除したほうがよい悪評の例を紹介します。
目次
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ネット上に書き込まれた企業の悪評を放置すると、次のような影響を企業に与える恐れがあります。
上記以外にも、悪評を見た人から大量のクレームが入ったり、恐喝や脅迫など新たなトラブルが起こったりする可能性もあります。
ここでは、企業の悪評を削除せず、放置することによって起こりうるデメリットを5つ紹介します。
ネット上の悪評は、企業イメージの悪化を招きます。書き込まれた悪評だけでは、内容が真実なのか虚偽なのか、見た人に判断できません。証拠がなくても、悪評が広まることで信じてしまう人がいるのも事実です。
企業イメージの悪化は、次に述べる売上の減少や取引拒否、内定辞退などにもつながります。
企業イメージが悪化すると、悪評とは関係ない商品やサービスの売上が落ちる可能性もあります。せっかくよい商品やサービスを提供していても、「あの企業のものは買わない」と不買運動が起こるリスクも高まります。
ウイグル自治区の強制労働問題で話題になったユニクロや、人種差別発言が問題となったDHCなどが記憶に新しいでしょう。[注2][注3]
2社の不祥事はSNSを中心に広まり、ハッシュタグを用いて拡散されました。実際に、ユニクロは米国税関当局から輸入差し止めを受けています。
ネット上の悪評は取引先からの信用を低下させ、取引停止や取引数の減少を引き起こす可能性があります。とくに事業内容や運営状況に関する悪評は、倒産のリスクに鑑みて、取引を拒否されるケースもあることを理解しておきましょう。
また、悪評が事実でないとわかっても、取引先は取引停止の判断をする場合もあります。消費者が悪評を信じてしまう可能性があり、影響は取引先にもおよぶ恐れがあるためです。
企業の悪評が広く知られてしまった場合、従業員やその家族への社会的影響も懸念されます。場合によっては、近所で噂されたり嫌がらせを受けたりして、精神的苦痛を感じ、離職や休職に発展する可能性もあるでしょう。
また離職後に、企業の悪評が原因で再就職が難しくなるケースも考えられます。
就職希望者が減少することも、ネット上の悪評による被害として挙げられます。就職・転職者が就職前に、ネットで情報収集をすることは一般的です。就職・転職情報サイトも多く、口コミやレビューが掲載されています。
検索したときに、悪評が目立つ企業には応募を控えようと思うのが一般的な心情でしょう。とくに「サービス残業させるブラック企業だ」「求人情報と実態に違いがあった」など、勤務に関する悪評は就職希望者減少の原因になります。
ネット上に書き込まれた企業の悪評は、半永久的に残ります。放置すると悪評が残るだけでなく、さらに情報が拡散される可能性もあります。
とくにSNSは、ボタン1つで情報を拡散できるため、被害が大きくなりやすいです。総務省によると、過去1年間でインターネットを利用した人のうち、69.0%はSNSを使っています。[注1]
SNSは誰でも簡単に情報を発信できるため、悪意なく企業の悪評を広めてしまうケースもあり、注意が必要です。
ネット上で企業が悪評を書き込まれやすいサイトは、主に以下のとおりです。
具体的には、転職会議・マンションコミュニティ・e戸建てドットコム・爆サイ・5ちゃんねる・Googleレビューなどが挙げられます。
とくに匿名のサイトやSNSでは、投稿してもバレないと考え、曖昧な情報や誹謗中傷を書き込む例も少なくありません。
口コミやレビューにおける個人の感想は、「表現の自由」の観点から削除することは困難です。しかし、事実ではない悪評や誹謗中傷を放置すると、企業の運営に大きなダメージを与える可能性があります。
ここでは、削除したほうがよい悪評の例を紹介します。ただし状況に応じて影響の大きさは異なるため、まずはネットトラブルに詳しい弁護士へ相談するのがおすすめです。
事業内容に関する悪評は、取引停止や拒否、就職希望者の減少に影響をおよぼします。具体的には、以下のような例が挙げられます。
とくに、近年では反社会的勢力排除に向けた取り組みがいっそう強化されています。そのため、反社会的勢力と関係があるとの悪評が広まれば、取引停止や売上減少につながる可能性があります。
事実ではない悪評をネット上に書き込まれた場合は、放置せずに適切に対処しましょう。
SNSや口コミサイトでありがちなのが、商品やサービスに対する悪評です。具体的に、次のような例があります。
すぐに壊れる事実はないのに「壊れやすい」と投稿したり、実際には注文していないのに「商品が届かない」と書き込んだりすることは、売上減少につながる原因です。個人の感想ではなく、事実に反する悪評は削除しましょう。
職場環境に関する悪評も、削除を検討すべき事案です。たとえば、以下のような例があります。
元従業員による投稿だけでなく、現職者がSNSに書き込む事例も散見されます。投稿に企業名が書かれていなくても、プロフィールや過去の投稿から企業を特定されるケースもあります。
上記のような悪評が拡散すると、就職希望者が減少し、企業の存続に大きく影響をおよぼすリスクとなるでしょう。
上述したように、ネット上に書き込まれた悪評は、企業に大きなダメージを与えることがあります。できるだけ迅速に削除しましょう。
悪評を削除する方法は、主に3つあります。ここでは、それぞれの削除方法を紹介します。
悪評を書かれたサイトの削除依頼フォームから、削除依頼をするのが最も簡単な方法です。
大手掲示板や情報サイトには、スレッドや投稿の削除を依頼するための窓口が用意されています。必要な内容を入力するだけで削除依頼でき、数日~数週間で削除されます。
ただし、依頼すれば必ず削除されるものではないことを理解しておきましょう。掲示板やサイトにそぐわない投稿や、誹謗中傷を目的とした投稿の場合は、削除依頼フォームからの依頼で削除される可能性が高いと考えられます。
削除依頼フォームやメールで悪評の削除を依頼しても対応してもらえない場合は、送信防止措置手続で削除請求できます。
送信防止措置手続は、プロバイダ責任制限法第3条にもとづく手続です。所定の書類をサイト運営者に送付し、悪評の削除を依頼できます。
書類は自分で書くこともできますが、主張する権利を記載する必要があるため、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
送信防止措置手続には、法的強制力がありません。そのため、手続を行っても対応してもらえないときは、裁判所に仮処分を申し立てる必要があります。
仮処分とは、裁判が長引いて被害が大きくなることを避けるための措置です。悪評を放置すると、企業への被害も大きくなるため、仮処分で裁判所から削除命令を出してもらいます。
ネットに書き込まれた企業の悪評は、売上の減少や取引先からの信用低下、就職希望者の減少などにつながります。ネット上の悪評は半永久的に消えることはなく、放置すればするほど拡散するリスクがあり危険です。被害が大きくなる前に、悪評を削除しましょう。
ネット上の悪評は、サイト運営者とコンタクトを取り、削除してもらう必要があります。
一般的には、サイト内の削除依頼フォームやメールで依頼をしますが、削除されるかはサイト運営者の判断に任されます。削除してもらえないときは、送信防止措置手続きや仮処分の申立が必要です。ネット上の悪評は初期対応が重要なため、まずは弁護士に相談し、判断を仰ぎましょう。
[注1]総務省:令和2年情報通信白書総務省|令和2年版 情報通信白書|インターネットの利用状況 - www.soumu.go.jp |
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