ホスラブは、夜の仕事であるホストクラブやキャバクラなどを中心的な話題として取り扱う匿名掲示板であり、正式名称は「ホストラブ」といいます。
ホスラブは匿名で気軽に投稿できることもあり、ホスト、キャバ嬢、風俗嬢など、特定の個人に対する書き込みが日々行われています。
ホスラブで誹謗中傷コメントを書き込まれる被害にあった場合、投稿者を特定して慰謝料請求を試みることが可能です。投稿者を特定する際にまず必要となるIPアドレス開示請求の方法について解説いたします。
目次
投稿者を特定するためには、ホスラブの管理者に対して問題となる投稿に係るIPアドレスの開示請求をする必要があります。
IPアドレスとは、投稿に使用されたパソコンや携帯電話等に個別に割り当てられた識別符号であり、インターネット上の住所ともいえるものです。IPアドレスから投稿者を特定するためには次の2つの段階を経る必要があります。
第1段階として必要となるのが、投稿に利用されたIPアドレスの開示を求める手続です。IPアドレスは掲示板等の管理者が保有しているため、ホスラブの場合にはホスラブの管理者に対して開示請求をする必要があります。投稿に利用されたIPアドレスの開示を受けられれば、IPアドレスをもとに投稿者が利用したインターネットサービスプロバイダ(携帯電話会社等)を特定できます。
第2段階として、インターネットサービスプロバイダに対して投稿をした契約者の情報開示を求めます。会員登録が必要な掲示板でない限り、管理者は投稿者の個人情報を保有していません。これに対し、インターネットサービスプロバイダであれば通常は投稿者が利用契約を締結しているため投稿者の情報を保有しています。
「IPアドレスが開示されれば、すぐに相手の自宅や名前がわかる」と誤解されがちですが、実際には、IPアドレスのみでは個人を特定することはできません。
| 項目 | 判明する内容(わかること) | 判明しない内容(わからないこと) |
| IPアドレスから | 投稿に使用された端末の識別番号、経由したプロバイダ(ドコモ、SoftBank等) | 投稿者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス |
| 契約者情報から | 投稿者の氏名、住所、電話番号(プロバイダが保有する情報) | (特になし) |
IPアドレスは、いわば「インターネット上の住所」ですが、それはあくまで「どの通信網を通ったか」を示すものです。その通信網を「誰が契約して使っていたか」は、プロバイダ(携帯電話会社など)が持つ契約者名簿と照合しなければ判明しません。
そのため、ホスラブへの開示請求(第1段階)の後に、プロバイダへの開示請求(第2段階)という「二段階の手続」が必要になるのです。
なぜホスラブの投稿者は特定可能なのか。その裏側には、掲示板システム特有のログ管理メカニズムがあります。
ホスラブへの投稿が行われると、サーバー内には「書き込み内容(データベース)」とは別に、「アクセスログ(Webサーバー側)」が記録されます。
ホスラブでは、一見匿名に見えても、内部的には投稿ごとのIDやIPアドレスが一定期間保持される設計になっています。
一部の投稿者はIPアドレスを隠蔽するためにVPN等を経由しますが、ホスラブのサーバーログにはその「出口IP」が記録されます。
弁護士がホスラブの管理者や裁判所に対して手続を行う際、以下の資料が揃っているほど、特定までのスピードと確実性が向上します。ご自身でスクリーンショット等を保存する際は、以下の項目が漏れなく含まれているか確認してください。
掲示板のどのスレッドの、どの発言かを特定するために不可欠です。
ホスラブ上の各レス(書き込み)に割り振られた数字です。
いつ書き込まれたかの記録です。
ブラウザで表示されている画面を画像として保存します。
ホスラブは他の掲示板と異なり、独自の構造を持っています。そのため、投稿の形式によって開示請求の難易度が大きく変わるのが特徴です。
ホスト個人のスレッドから、地域別の店舗板や「雑談板」へ中傷が拡散するケースです。
短時間に何度も投稿を繰り返すケースです。
直接名前を出さず、「>>100(レス番号)は枕営業している」といった形式の書き込みです。
ホスラブ側に開示を強制するには、単に「嫌なことが書かれた」だけでは足りず、法的な**「権利侵害」**が認められる必要があります。裁判所は主に以下の3つの観点から違法性を判断します。
「事実」を示して、その人の社会的評価を下げる投稿です。
具体的な事実がなくても、受忍限度(我慢できる範囲)を超える内容は侮辱に当たり得ます。
他人に知られたくない個人情報を勝手に公開する行為です。
投稿者の特定には、ホスラブ(サイト運営者)への請求と、プロバイダ(通信事業者)への請求の2ステップがありますが、実はそれぞれで「裁判所に認められるための条件」が異なります。
目的は「投稿者のIPアドレスとタイムスタンプ」を得ることです。
目的は「契約者の氏名・住所」を得ることです。
ホスラブでの誹謗中傷被害において、最も注意すべきなのは「ログ(接続記録)の保存期間」です。これを過ぎてしまうと、どれだけ悪質な書き込みであっても、弁護士でも特定することは物理的に不可能になります。
特定が困難になる理由は、主にプロバイダ(通信事業者)側の事情にあります。
ホスラブは膨大な書き込みが行われる巨大掲示板であるため、サーバー負荷を軽減するために古い投稿データの管理が厳格です。特に以下のケースでは、3ヶ月以内であっても特定が難しくなる「実務上の壁」が存在します。
IPアドレスは、世界中で数が限られているため、同じ番号が数時間〜数日単位で別のユーザーに割り当て直されます。プロバイダ側のログが消えてしまうと、「その瞬間に、誰がそのIPを使っていたか」を証明する証拠がこの世から消滅してしまうのです。
ホスラブでの投稿が開示されるかどうかは、過去の裁判例から導き出された「特定の要素」をクリアしているかで決まります。
抽象的な悪口ではなく、事実を摘示している場合、以下の要素が検討されます。
ホスラブでよくある「本名」や「過去の経歴」の暴露については、以下の3点がポイントです。
事実の摘示がない場合、その表現が社会的に許容される範囲を逸脱しているかが問われます。
弁護士が介入しても、以下のようなケースでは開示が認められない(あるいは物理的に不可能な)場合があります。
ホスラブの管理者は、任意の開示請求には応じないケースがほとんどです。そのため、裁判所を通じた以下のいずれかの法的手続を選択することになります。
① 発信者情報開示命令(2022年改正法による新制度) 2022年10月からスタートした、サイト運営者への請求とプロバイダへの請求を一つの裁判手続で行う「一体型」の手続です。
② 仮処分(迅速なログ保存を優先) 裁判所からホスラブ側に対し、「直ちにIPアドレスを開示せよ」という命令を出してもらう手続です。
参考:インターネット上の違法・有害情報に対する対応https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html
投稿者が特定されたら、そこが「解決のスタート」です。被害の内容やご希望に合わせて、以下のフローで責任を追及します。
弁護士名で、相手方に「二度と書き込まない旨の誓約書」や「謝罪」「解決金の支払い」を求めます。裁判をせずに迅速に解決したい場合に有効です。
相手が示談に応じない場合、裁判を起こして損害賠償を請求します。
投稿が著しく悪質な場合、警察に告訴状を提出し、刑事罰(罰金や拘禁刑)を求めます。
インターネットサービスプロバイダから契約者情報の開示を受けることができれば、ホスラブで誹謗中傷をした投稿者の特定は完了します。特定されたホスラブへの投稿者に対しては、不法行為(民法709条)に基づき名誉毀損やプライバシー権の侵害等を理由として慰謝料請求ができます。インターネット上の誹謗中傷に対する慰謝料の相場は、投稿内容や相手の争い方によっても大きく異なりますが、一般的には数十万円程度が多いようです。
また、慰謝料請求をするだけでなく、投稿者本人に対して二度と同様の行為をしないことの誓約を求めたり、悪質な場合には刑事告訴をしたりといった対応をとることもあります。単に誹謗中傷のコメントを削除するだけだと、また同じような誹謗中傷のコメントを書き込まれてしまうことがあります。このため、誹謗中傷の被害を根本的に解決したい場合には投稿者を特定することが有効です。