世界最大級のインターネット百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」はいまや、多くの人にとって最初に調べるツールになっていることでしょう。人物、事象、製品、政治、経済、思想など、まさに世の中の百科(あらゆる分野)が事細かに解説されています。しかもパソコンやスマホで簡単に検索でき、無料です。
ところがウィキペディア(Wikipedia)の記事には信頼性が低いという批判があり、ウィキペディア(Wikipedia)の運営者もその批判を認識しています。
したがって、自分のことや自社のことが間違ってウィキペディア(Wikipedia)に掲載される可能性があります。ウィキペディア(Wikipedia)の「記事掲載被害」に遭ったときの対処法を解説します。
目次
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ウィキペディア(Wikipedia)は2001年にジミー・ウェールズ氏とラリー・サンガー氏が開設した情報サイトで、現在はアメリカ・フロリダ州に本部を置くウィキペディア財団が運営しています。日本語版も2001年に開設しています
ウィキペディア(Wikipedia)の特徴は、1)百科事典の形態を取っていることと、2)誰でも記事を執筆、編集できることの2点です。各分野の専門家が記事を執筆すれば、多くの人々が簡単に一級品の資料を手に入れることができます。
その一方で、知識がない人がいい加減な内容の記事を投稿することもできますし、悪意をもって対象者や対象物を毀損する記事を投稿することもできてしまいます。
ウィキペディア(Wikipedia)の運営団体も、次のような弱点を認識しています。
ウィキペディア(Wikipedia)で起こり得るトラブルを考えてみましょう。
まずはプライバシーの侵害です。ウィキペディア(Wikipedia)には人物に関する記事も多数掲載されていて、生年月日や年齢や顔写真はもちろんのことは、配偶者に関する情報も載っていることがあります。
例えばある著名人が雑誌のインタビューを受けたとします。雑誌であればそこで話したことが記事化されても、日が経てばその事実は次第に風化していきます。古い雑誌が存在しても、誰でも気軽にその雑誌を入手できるわけではありません。
ところが、誰かがその雑誌を基にしてウィキペディア(Wikipedia)に記事を投稿してしまったら、その情報はいつまでも人々の目にさらされることになります。
また、ウィキペディア(Wikipedia)の企業に関する記事には、過去の不祥事が事細かに掲載されることがあります。裁判所の判決が出て賠償金を支払うなどの償いを終えても、半永久的に「汚点」が明記されてしまいます。
事実であれば汚点が明記されてもやむを得ないかもしれませんが、ウィキペディア(Wikipedia)では存在しない汚点を記載することもできます。
さらにウィキペディア(Wikipedia)には常に事実誤認のリスクがつきまといます。
例えば、テレビ局のニュース番組では、取材記者やその上司たちが何重にも報道内容をチェックする仕組みがあり、さらに放送された内容については放送倫理・番組向上機構(BPO)という第三者機関が厳しく審査します。
一方で、ウィキペディア(Wikipedia)が記事の信頼性を確保するために採用している方法としては、執筆者に「信頼できる公刊された情報源」の使用と明示を呼び掛けることと、事実でない記事を削除することくらいです。
ウィキペディア(Wikipedia)の閲覧者は、記事の文末に掲載されている情報源を確認し、その情報源が信頼できたときに記事を信頼することができます。
例えば、新聞記事は新聞社がその内容が事実として発信します。もし記事が間違っていれば新聞社は訂正して謝罪します。しかし、ウィキペディア(Wikipedia)内に掲載されている記事は、ウィキペディア財団が「事実である」と承認しているわけではありません。ウィキペディア(Wikipedia)に書かれてある記事を信頼するかどうかは、まさに「自分次第」です。
これがウィキペディア(Wikipedia)の事実誤認リスクです。
ウィキペディア(Wikipedia)は信頼性を確保するための自衛策として、記事の削除方針を次のように定めています。
近年はSNSや動画サイトなどの利用が一般的となり、誰でも簡単に写真や動画、文章をアップロードできるようになりました。企業だけでなく個人のクリエイターも情報発信が容易となり、様々なコンテンツがあふれています。創作・制作側、読者・ファンともに... 【弁護士監修】ネット上で著作権侵害になるケースとは?削除や対処の方法 - 弁護士法人アークレスト法律事務所 |
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ウィキペディア(Wikipedia)に掲載された記事を削除するには、ウィキペディア(Wikipedia)に削除依頼を出す方法と、弁護士に相談する方法の2通りがあります。
ウィキペディア(Wikipedia)の記事を削除する場合は、依頼制になっています。記事で損害を受けている人や企業などがウィキペディア(Wikipedia)に削除依頼することで、削除の検討が始まります。
ウィキペディア(Wikipedia)の記事を削除する場合は、次の3ステップで行われます。
3項目しかないのですが、すべてが高いハードルになっています。
まず【ステップ1】ですが、削除依頼の対象となるページに対して権利侵害されている部分を削除する事前編集を行い、削除依頼対象ページに専用のテンプレートを貼付しなければなりません。メールで「この部分の記述が権利侵害に該当するので至急削除されました」と送って済むわけではありません。
【ステップ2】では、削除依頼に対する投票が行われます。投票に参加できる「ウィキペディア(Wikipedia)の利用者」は、編集回数が50回以上の登録利用者に限られます。
【ステップ3】の管理者とは、ウィキペディア(Wikipedia)のコミュニティから投票で信任された人たちのことです(*7)。削除者とは、管理者のうち削除の権限を付与された人たちのことです。
ウィキペディア(Wikipedia)には、「削除依頼窓口」のようなページはないのでメールで削除依頼文を送信することはできません。
存在するのは、削除依頼の方法を解説したページだけです。
上記では、ウィキペディア(Wikipedia)の運営者に連絡し、削除依頼を進める難しさをお伝えさせて頂きました。一般ユーザーはウィキペディア(Wikipedia)の運営組織に対し「ベールに包まれている」と感じることでしょう。ウィキペディア(Wikipedia)には「連絡先」のページがありますが、ここには住所も電話番号もメールアドレスも代表者名も記されていません。
ウィキペディア(Wikipedia)の「連絡先」ページ
メールアドレスは、かろうじて以下のURLに記載されていますが、メールを送るルールはとても複雑です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Info-ja
ウィキペディア(Wikipedia)の運営団体に連絡することは簡単なことではありません。そこでウィキペディア(Wikipedia)の「記事掲載被害」を受けていて、その被害が甚大である方は、インターネットのトラブルに詳しい弁護士に相談することを強くおすすめします。
一般のネットユーザーはウィキペディア(Wikipedia)をかなり信頼しています。したがって、事実でないことが、あたかも事実のように流布する可能性は十分あります。
そうなる前に弁護士に相談し、必要な手段を講じましょう。