風評被害・誹謗中傷

リベンジポルノの被害の実態

2019.11.01
リベンジポルノの被害の実態

リベンジポルノとは、男性もしくは女性が交際相手や知人の性的な写真をインターネットなどにアップロードする行為をいいます。警察庁の統計によると、リベンジポルノ被害者、加害者ともに20代が多く、若年層を中心にリベンジポルノが広がっていることがわかります。平成29年には、1,243件もの相談が警察に寄せられています。

では、リベンジポルノの被害にあったらどうすればよいのでしょうか。また、知らずにリベンジポルノに該当する行為を行ってしまった場合は何をすべきなのでしょうか。今回は、リベンジポルノの定義や具体例、対処法を解説します。

1.リベンジポルノの定義は?どんな行為がリベンジポルノになる?

リベンジポルノの定義は?どんな行為がリベンジポルノになる?

リベンジポルノとは、現在もしくは過去の交際相手や配偶者、肉体関係にあった相手などの性的な画像を同意なくインターネット上に公開する行為です。交際中に撮影した性行為最中の写真や、裸の写真や動画などを、別れや離婚などの腹いせにアップロードする行為がリベンジポルノと定義されています。

1-1.リベンジポルノを禁じる法律「私事性的画像被害防止法」とは

リベンジポルノは、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(私事性的画像被害防止法)」という法律によって規制されている行為で、違反して逮捕された場合は罪に問われる可能性があります。私事性的画像被害防止法では、第三者に公開することを撮影対象者が認めていないにも関わらず、私事性的画像をインターネットなどに投稿する行為を禁じています。

1-2.私事性的画像被害防止法における「私事性的画像」とは

私事性的画像とは、性交渉やそれに類する行為を撮影したもの、衣服を身につけていない状態の性的部位を撮影したもの、性器や乳首などを触っている様子を撮影したものなどです。また、衣服を着ている状態でも、性器などを強調する画像は、私事性的画像とみなされることもあります。

1-3.全く関係ない第三者による投稿や拡散でも罪に問われる可能性があります

こちらの法律は「リベンジポルノ防止法」と呼ばれることもある通り、元交際相手や配偶者による性的画像の公開を禁じる法律ではありますが、撮影者および対象者は限定されていません。つまり、盗撮などの犯罪行為によって入手した画像を公開しても、リベンジポルノ防止法違反に問われる可能性があるのです。

また、全く関係ない第三者が、掲示板の投稿をまとめサイトに転載する、各種SNSで拡散するなどの行為も、リベンジポルノ防止法に抵触すると考えられていますので、注意が必要です。

2.罪に問われるのは「投稿した人」と「提供した人」

この法律では、「画像をインターネットに投稿したもの」と、「公表させる目的で画像を提供したもの」がそれぞれ罪に問われます。例えば、友人から「元カノの全裸写真を拡散してほしい」と頼まれて、拡散に協力した場合も罪に問われるので注意が必要です。こちらのケースでは、画像拡散の協力を求めた友人も、拡散に協力した本人も両方が、私事性的画像被害防止法に違反していると考えられます。

2-1.私事性的画像被害防止法違反で有罪になった場合の量刑

私事性的画像を投稿した方が逮捕されて有罪になると「公表罪」として「3年以上の懲役または50万円以下の罰金」に問われる可能性があります。「公表罪」は親告罪とされており、被害者が警察に被害を届け出なければ、捜査機関は加害者を逮捕することはできません。
画像を提供した方は「公表目的提供罪」に問われ、「1年以上の懲役または30万円以下の罰金」です。

3.リベンジポルノの実態を解説

リベンジポルノの実態を解説

リベンジポルノの被害や相談については、平成26年に、「私事性的画像被害防止法」が施行されてからの相談件数を警察庁が公開しています。年度ごとの相談件数の推移がこちらです。

  • 平成27年1,143件
  • 平成28年1,063件
  • 平成29年1,243件

リベンジポルノに関する相談は圧倒的に女性が多く、平成29年の相談件数1243件のうち、女性は1138件、男性が105件でした。また、加害者の61.5%が元交際相手です。次点で多いのが、「ネット関係の知人・友人」となっており、「インターネット掲示板やSNSで知り合った相手に、性的写真の送信を求められ応じたのち、関係が破綻したら公開されたケース」が考えられます。意外と、「加害者が元配偶者、もしくは配偶者」というケースは非常に少なく全体の2.9%です。

リベンジポルノの被害を受けるのは、ほとんどが女性であり全体の90%以上を占めております。年齢層は、被害者加害者ともに20代が極めて多く、30代以降の被害者は急激に減少します。

こちらの統計から、リベンジポルノは多くの20代女性が被害を受けており、加害者は20代男性の元交際相手が中心となっています。

4.リベンジポルノの被害の実例

リベンジポルノ防止法の施行を受けて、リベンジポルノ防止法違反で逮捕される事例が増加しています。5ちゃんねるや、ホスラブ、爆サイなどの匿名掲示板でも、時折リベンジポルノ防止法で禁じられている私事性的画像と見られる画像がアップロードされており、多くの女性や男性の人権が侵害されている様子が伺えます。では実際にどのような被害事例があるのでしょうか。実際の逮捕事例を確認してみましょう。

4-1.インターネットで知り合った30代女性の写真を50代男性がサイトに投稿

令和元年7月17日、宮崎県でインターネットで知り合った女性の性的な画像をホームページに投稿したとして、56歳の男性が逮捕されました。被害者の女性が、自分の写真が投稿されている旨を警察署に相談したことで事件が発覚したとのことです。

4-2.男女共用トイレで盗撮して女性300人分の動画を投稿して逮捕

平成30年10月、東京都の男性がトイレにカメラを仕掛けて女性の排泄動画を撮影し、投稿したとしてリベンジポルノ防止法で逮捕されました。

4-3.出会い系アプリで知り合った女性のわいせつ動画を投稿して逮捕

出会い系サイトで出会った女性との性行為中の動画を、インターネット動画投稿サイトに投稿したとして、30代の男性が逮捕されました。有料動画として投稿して、男性は約8800万円の収入を得ていたとのこと。被害者は複数に渡り30人以上が無断で動画を投稿されていた可能性があるようです。

5.リベンジポルノで逮捕される可能性がある罪とは

リベンジポルノで逮捕される可能性がある罪とは

リベンジポルノは主に「リベンジポルノ防止法(私事性的画像被害防止法)」違反となりますが、それ以外にも様々な罪に該当する可能性があります。リベンジポルノ防止法違反以外の罪について解説します。

5-1.名誉毀損罪

裸の画像や性行為中の画像などを不特定多数が閲覧できるインターネットに公開することで、被害者の名誉が傷つけられたと認められると、刑法230条の「名誉毀損罪」に該当し、有罪になれば3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処されると規定されています。リベンジポルノ防止法違反とともに名誉毀損罪に問われる可能性もあります。
名誉毀損罪は「親告罪」であり、被害者が被害届を出すもしくは告訴状を提出しなければ、罪に問うことができません。

5-2.児童ポルノ禁止法による児童ポルノ公然陳列罪

アップロードした性的な画像や動画が、18歳未満の青少年のものだった場合は、児童ポルノ禁止法違反となります。児童ポルノに該当する画像を投稿すると、リベンジポルノ防止法違反よりも罪が重く、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰に処される可能性があります。
ただし、被写体が児童であることを把握していなかった場合は、罪には問われないと考えられます。

5-3.わいせつ物公然陳列罪

性的な画像をインターネットに公開する、道路にばらまくなどの行為を行なった場合は、わいせつ物公然陳列罪に問われ、有罪になると2年以下の懲役または250万円以下の罰金に処されます。

6.まとめ

まとめ

リベンジポルノ行為は、リベンジポルノ防止法だけでなく様々な法律に抵触する可能性があります。しかし、被害を受けた女性の性的画像は簡単にインターネットから抹消することができず、しかるべき対策を行わなければ、デジタルタトゥーとして一生インターネットに残ってしまうことになります。

リベンジポルノの被害に遭った場合は警察などの公的機関に相談するとともに、速やかに削除要請を行うなどの対策が必要です。リベンジポルノの被害を未然に防ぐことができず、すでに画像が投稿されてしまっている場合は即行動に移しましょう。 リベンジポルノの被害に遭った方がとるべき具体的な対策や、するべきことについては、次回の記事で解説しますので、あわせてご確認の上速やかに対策を行ないましょう。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。