掲示板の誹謗中傷・書き込み削除

5ちゃんねる(5ch)で誹謗中傷した投稿者を特定する方法【2021年版】

2020.04.01
5ちゃんねる(5ch)で誹謗中傷した投稿者を特定する方法【2021年版】

5ちゃんねる(5ch)は、非常に有名なインターネット掲示板「2ちゃんねる(2ch.net)」から生まれたサイトです。2ちゃんねるの時代から誹謗中傷や悪評の温床となっていましたが、5ちゃんねる(5ch)でも相変わらずそのような投稿が後を絶ちません。

もし自分自身や自分のお店・会社が5ちゃんねるで誹謗中傷の標的となり実害が及ぶようになれば、早急に投稿者を特定のうえ、法的措置を検討するほうがよいでしょう。今回は、 5ちゃんねるで投稿者を特定するときの流れや注意点について解説します。

1. 5ちゃんねる(5ch)とは

5ちゃんねる(5ch)とは

5ちゃんねるは、インターネットでも有数の巨大掲示板です。投稿内容のジャンルは、ニュースや政治経済から日々の生活のことまで多岐にわたります。5ちゃんねるは、2ちゃんねる(2ch.net)の流れを受け継いでいるのですが、ここではなぜ2ちゃんねるが5ちゃんねるになったのか、経緯を振り返ってみましょう。

1-1. 2ちゃんねるから5ちゃんねるへ

2ちゃんねるは、1999年に西村ひろゆき氏の個人サイトとしてスタートしました。その後、2014年に経営権をめぐり、2ちゃんねるはRace Queen Inc.の管理する2ch.netと西村氏の管理する2ch.scに分裂します。さらにその後、2ch.netはLoki Technology Incに譲渡され、名称も5ちゃんねる(5ch.net)と変わったのです。以来、5ちゃんねる(5ch.net)と2ちゃんねる(2ch.sc)が今日まで共存しています。

1-2. 5ちゃんねる(5ch)の書き込みは2ちゃんねる(2ch.sc)にコピーされる

5ちゃんねるに書き込みをすると、2ちゃんねる(2ch.sc)にもコピーされます。5ちゃんねるも2ちゃんねるもユーザー数が多いため、誹謗中傷や悪評を書き込まれるとより多くの人の目に晒されることになってしまいます。そのため、5ちゃんねるの書き込みだけでなく、2ちゃんねるにコピーされた投稿も早急に削除しなければなりません。

2. 5ちゃんねる(5ch)の投稿者を特定する目的

5ちゃんねるであまりに悪質な投稿が続いている場合は、投稿を削除するとともに投稿者を特定することが肝要であると考えます。その目的は3つあります。

2-1.書き込みをストップさせる

投稿を削除するだけでなく、投稿者を特定することで、書き込みをやめさせることができます。相手方は「5ちゃんねるは匿名だから誰が書いたかわからないだろう」という理由で投稿していることが多いものです。そのため、自分が書いたことを突き止められると、「これ以上はやめておこう」と投稿を断念するようになると予想されます。

2-2.慰謝料や損害賠償を請求できる

誹謗中傷や悪評の書き込みにより、取引先に取引を終了させられた、客足が落ちて売り上げが減った、うつ病などの精神疾患にかかり通院を余儀なくされた、など実害が生じることがあります。その場合は、書き込みをした投稿者に慰謝料や損害賠償が請求できます。

2-3.刑事告訴できる

誹謗中傷や悪評を削除しても投稿が何度も繰り返される、書き込みの内容が悪質だ、相手方を処罰してもらいたい、などの場合は、相手方を刑事告訴することも検討したほうがよいでしょう。ただ、相手方を刑事告訴するには、投稿者がどこの誰なのかを突き止めなければならず、そのために投稿者の特定が必要になるのです。

3. 5ちゃんねる(5ch)への発信者情報開示請求で注意したいこと

5ちゃんねる(5ch)への発信者情報開示請求で注意したいこと

5ちゃんねるに対して発信者情報開示請求をするとき、気をつけたい点が5つあります。実際に開示請求をする前にこれらの点をよく検討しながら、請求の手続きを行うようにしましょう。

3-1.発信者情報開示請求の要件を満たしているか

発信者情報開示請求はプロバイダ責任制限法で認められている行為です。同第4条1項によれば、発信者情報開示請求を行うには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • インターネット上で不特定多数に向けて発信された情報であること
  • 自分の権利が侵害されたことが明白であること
  • 発信者情報の開示を受ける正当な理由が存在すること
  • 発信者情報の開示を求める相手が、投稿に利用された通信設備の管理者などであること(インターネット掲示板の管理者やサーバーの管理者、プロバイダなど(以下「サイト管理者等」))
  • 開示を求める情報が、発信者の氏名や住所、メールアドレスなど総務省令に定められた情報であること
  • 発信者情報をサーバーの管理者等が保有していること

3-2.プロバイダのアクセスログ保存期間にはタイムリミットがある

プロバイダの保有するアクセスログの保存期間は、長くて6ヶ月です。携帯電話やスマートフォンのキャリアでは、保存期間が3ヶ月ほどしかないところも珍しくありません。そのため、IPアドレス開示請求から発信者情報開示請求まで迅速に手続きを進めることが必要です。投稿者の特定まで視野に入れるのであれば、削除を依頼する段階から、削除請求と同時並行でIPアドレス開示請求も進めると、タイムロスがなくなるでしょう。

3-3. 5ちゃんねるから入手したIPアドレスだけでは特定できない

5ちゃんねるからIPアドレスが開示されても、IPアドレスの情報だけでは、5ちゃんねるに誹謗中傷や悪評を書き込んだ個人を特定できません。IPアドレスなどのアクセスログをもとに、どこのプロバイダを経由したのかを突き止め、そこからプロバイダの保有している投稿者の個人情報の開示を求めることが必要なのです。

3-4.裁判所での手続きが最低でも2回は必要

5ちゃんねるの「削除ガイドライン」によれば、「削除対象投稿者のIP・ホスト情報については、基本的には教えられない」とされています。そのため、IPアドレス開示は任意交渉ではなく、仮処分の申し立てで求めなければなりません。また、IPアドレス開示請求後に行うプロバイダへの発信者情報開示請求も、原則として訴訟により行うことになります。そのため、裁判所での手続きが最低でも2回は必要になるでしょう。

3-5.相手方の資力により損害賠償や慰謝料が得られないリスクがある

投稿者に対して損害賠償や慰謝料を支払ってほしいがために発信者情報開示請求をするときでも、最終的に損害賠償などが得られないことも考えられます。それは、相手方に資力がない場合です。相手方が未成年者や専業主婦(夫)でほとんど収入がない、もしくは失業中で生活していくのがやっとである、という場合は、損害賠償や慰謝料を請求しても希望通りの金額を受け取れないことがあるのです。こういうリスクがあることを念頭に置いて投稿者の特定に臨むほうがよいでしょう。

4. 5ちゃんねる(5ch)で投稿者を特定するときの流れ

5ちゃんねる(5ch)で投稿者を特定するときの流れ

5ちゃんねる(5ch)の投稿者を特定するには、以下の6つの手順が必要です。

  • ①5ちゃんねるの運営会社に対するIPアドレス開示請求の仮処分を申し立てる
  • ②5ちゃんねる(5ch)からIPアドレスを入手しプロバイダを特定する
  • ③特定されたプロバイダにアクセスログ保存要請をする
  • ④投稿者に対する発信者情報開示訴訟を申し立てる
  • ⑤プロバイダから投稿者に意見照会を行う
  • ⑥投稿者の個人情報が開示される

それぞれのフェーズでどんなことをすればよいのか、見ていきましょう。

4-1. 5ちゃんねるに対するIPアドレス情報開示請求の仮処分を申し立てる

先述のとおり、5ちゃんねるは「削除対象投稿者のIP・ホスト情報は、基本的には教えられない」というスタンスを取っています。そのため、IPアドレス開示請求は裁判所の仮処分で行います。ここでいう「IPアドレス」とは、投稿者が利用しているアクセスプロバイダ(以下「プロバイダ」)のIPアドレスのことです。

仮処分とは、裁判所が暫定的に決定を下すことで、裁判の判決とほぼ同じ効力があります。発信者情報開示請求関連の仮処分の申し立ては、原則として相手方の住所地を管轄する地方裁判所で行います。しかし、5ちゃんねるの運営会社の所在地はフィリピンにあり、日本国内に事業所はありません。このように、海外法人で日本国内に事業所も業務担当者もない場合は、東京地方裁判所に申し立てることになります。

※IPアドレスを開示する方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

4-2. 5ちゃんねる(5ch)からIPアドレスを入手しプロバイダを特定する

裁判所が仮処分の命令を下すと、プロバイダのIPアドレスが開示されますので、そのIPアドレスからプロバイダを特定します。

プロバイダの特定には、サイト管理者等が不明なときにも利用する「whois検索」を使います。whois検索では、IPアドレスを入力するとそのアドレスの管理者を調べることができます。すると、投稿者がどのプロバイダを経由して誹謗中傷などの投稿を行ったのかがわかるのです。こうして判明したプロバイダに対して、発信者情報開示請求をすることになります。

最近はスマートフォンを使って投稿するケースも多いのですが、格安スマホの会社は大抵の場合、大手キャリアの回線を利用して運営しています。投稿者が格安スマホを使って投稿している場合は、プロバイダが判明してもそのプロバイダの回線の貸出先に開示請求をするように言われるケースも近年増えています。発信者情報開示請求を行うときには、この点にも留意しておくほうがよいでしょう。

4-3.特定されたプロバイダにアクセスログ保存要請をする

②で判明したプロバイダに対して発信者情報開示請求をしますが、その前にアクセスログの保存要請をします。先述のとおり、プロバイダがアクセスログを保存する期間は非常に短く、ここで保存要請をしておかなければ発信者情報開示請求の手続きをしている間にログが消去されてしまい、投稿者を突き止めることができなくなる可能性があるためです。

アクセスログの保存要請は任意交渉(裁判外の交渉)で行います。プロバイダ側に法律上はアクセスログの保存義務はないものの、要請すれば保存に協力してくれるところがほとんどです。もし、協力が得られないようであれば、裁判所に「発信者情報消去禁止仮処分」を申し立て、ログを消去しないよう裁判所に仮処分命令を下してもらいます。

4-4.裁判所に投稿者に対する発信者情報開示訴訟を申し立てる

ログの保存ができたら、いよいよ投稿者の個人情報を開示してもらうべく発信者情報開示請求をします。ただ、プロバイダは通信の秘密を遵守しなければならないことから、任意での開示請求には原則として応じてもらえません。

発信者情報開示請求には、プロバイダ責任制限法ガイドラインに基づく請求方法と弁護士法23条照会による開示請求方法もあります。しかし、前者は意見照会で投稿者が情報開示に合意しなければ開示されないこと、後者は照会に従う法的義務はないので、得られる効果が限定的であることから、発信者情報開示請求は原則として訴訟で行うことになっているのです。

4-5.プロバイダから投稿者に意見照会を行う

プロバイダは発信者情報開示請求訴訟の申し立てを受けると、投稿者に対して開示に同意するかどうか意見照会を行います。意見照会は第1回目の期日の少し前になされることが多いのですが、回答期限は2週間に設定されるのが一般的なため、第1回目の期日にはまだ投稿者からの回答が来ていないことも少なくありません。

投稿者からの回答パターンとして多いものは、次の5つがあげられます。

「開示に同意しない」という回答しかなく、理由を書いていない
ガイドラインによれば、このような回答が来たときには発信者は特に主張がないものとして扱うとされていますので、判決に影響はありません。
開示に同意しない理由をきちんと書いているが、証拠資料が添付されていない
根拠にもとづかない主張はあまり説得力がないため、期日のときにこちらが客観的な証拠を示しながら反論すればよいでしょう。
「自分はやっていない」と主張している
投稿をしたのが自分ではないことを合理的に説明できていなければ、判決への影響はほぼありません。
無関係な言い訳が書かれている
こちらも判決への影響はありません。
書き込みに違法性がないとする証拠資料が添付されている
書き込みが事実に反するかどうかが争われているケースでは、客観的な証拠資料が提出されれば裁判官の判断材料となることもありえます。

4-6.投稿者の個人情報が開示される

発信者情報開示請求訴訟は、権利侵害が明白かどうか以外はあまり争点がないため、2~3回の期日で結審します。裁判所から発信者情報開示命令が出ると、ほとんどの場合、プロバイダ側から控訴されることなく投稿者の情報が開示されます。5ちゃんねるで誹謗中傷などをした投稿者の氏名、住所、メールアドレスが入手できたら、一連の手続きは終了です。ただ、確定判決前に投稿者側から和解を提案されて和解金が支払われて終了となることもあります。

※発信者情報開示請求については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

5. 弁護士に投稿者特定を依頼するメリット

弁護士に投稿者特定を依頼するメリット

投稿者特定の成功率を高めるには弁護士の協力が不可欠ですが、弁護士への相談は敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。それでも、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

5-1.仮処分や訴訟などの法的手続きが取りやすい

5ちゃんねるでは、任意でのIPアドレス開示請求には応じてもらえないため、裁判所での手続きが不可欠です。また、発信者情報開示請求では原則として裁判所での手続きが2回以上必要になります。弁護士に依頼をすれば、煩雑な法的手続きも弁護士に一任できるので安心です。

5-2.投稿者特定に弁護士法23条照会も利用できる

あまり利用はされませんが、投稿者の特定に弁護士法23条照会も利用できます。これは、弁護士が弁護士会を通じて法人や企業などに対して受任した案件の解決に必要な調査や照会ができるものです。弁護士法23条の2に規定されているので、「23条照会」「弁護士会照会」とも呼ばれます。

たとえば、投稿者が会社のPCから誹謗中傷などの投稿をしていた場合、発信者情報開示請求をしても会社名や会社の所在地しかわかりません。その場合、23条照会をかけることにより、その会社に対して投稿者の情報に関する手掛かりを求めることができるのです。

5-3.誹謗中傷などの再発防止につながる

投稿者が匿名で書き込みをしたつもりでも、発信者情報開示請求で自分の身元がばれるとわかれば、もう誹謗中傷の書き込みはやめようという気持ちになるでしょう。さらに、弁護士が入ったうえで発信者情報開示請求をすれば、5ちゃんねるだけでなくその他の掲示板での誹謗中傷などの再発防止につながる可能性があります。

6. 5ちゃんねる(5ch)で投稿者を特定したいときの弁護士の選び方

5ちゃんねるで投稿者を特定したくても、弁護士を通じての依頼もしくは司法の判断がなければ対応してもらえないことも多くあります。そのため、投稿削除を検討するときは弁護士に相談されることをおすすめします。しかし、弁護士はどのように選べばよいのでしょうか。

6-1.ネット上のトラブル解決の実績豊富な弁護士を選ぶ

ネット上のトラブルを迅速に解決するには、インターネットに関する一定の知識やノウハウが必要です。それらが乏しい弁護士に依頼すると、実際に削除や投稿者特定できるまで時間がかかることがあります。特に、投稿者特定に時間がかかるとプロバイダの保有するアクセスログが消えてしまい、特定に至らずに終わってしまう可能性もゼロではありません。そのため、そういった知識やトラブル解決の実績豊富な弁護士を選ぶことが投稿者特定を成功させるコツでもあるのです。

6-2.「5ちゃんねるが認めた」弁護士を選ぶ

「5ちゃんねる削除体制」には、「表現の自由を配慮したリーガルマインドを持った弁護士と認めた者からの請求については、正当な理由があるものについて、原則として対応する」と記載されています(※)。したがって、過去に5ちゃんねるへの削除依頼や投稿者特定に携わったことのある弁護士を選べば、削除とともに投稿者特定にも素直に応じてもらえる可能性が高くなるでしょう。

6-3.コピーサイト・ミラーサイトにも対応できる弁護士を選ぶ

5ちゃんねるにはコピーサイト・ミラーサイトがあり、5ちゃんねるへの投稿はこれらのサイトにもコピーされています。5ちゃんねるでの投稿削除や投稿者特定を依頼するのであれば、コピーサイト・ミラーサイトの削除についても経験豊富な弁護士を選ぶのがよいでしょう。

7. 5ちゃんねる(5ch)で投稿者の特定にかかる弁護士費用の相場

5ちゃんねる(5ch)で投稿者の特定にかかる弁護士費用の相場

5ちゃんねるで投稿者を特定する際、弁護士に依頼すると弁護士費用がかかります。ここでは、当事務所でいただいている費用と一般的な費用の相場を比較してみました。ただし、投稿の数や難易度により費用は前後しますので、詳しくは実際に依頼される弁護士にお尋ねください。

着手金 着手金 報酬金 報酬金
相場 弁護士法人アークレスト 相場 弁護士法人アークレスト
裁判外での交渉 5~10万円 なし 10~20万円 5~20万円
IPアドレスの開示請求 5~10万円 無料

(案件により発生
する場合あり)

10~15万円 5万円~
仮処分の申し立て 20万円~ 20万円~ 5~20万円 1投稿あたり
5万円~
発信者情報開示請求訴訟 20万円~ 20万円~ 15~20万円前後 20万円~
損害賠償請求 10~15万円 10万円~ 10万円~
または和解金の
16%
10万円~
または和解金の
16%
損害賠償請求訴訟 20万円~ 獲得金額の
16%
獲得金額の
16%
刑事告訴 15万円~ 20万円~ 30万円~ 20万円~

※上記費用に消費税がかかります。

このほか、以下のような費用もかかります。

  • 法律相談料(30分あたり5000円~10,000円。弁護士法人アークレスト法律事務所では初回相談料は無料です)
  • 事務手数料
  • 実費(予納郵券代、収入印紙代、交通費など)
  • 日当(弁護士が裁判所に出頭するときの1日あたりの費用)

8. 5ちゃんねる(5ch)で投稿者を特定した後にできること

5ちゃんねるで投稿者を特定した後は、慰謝料や損害賠償を請求したり、場合によっては刑事告訴も行うことができます。しかし、それらと併せて、損害賠償請求や刑事告訴を行うときのリスクなど事前に検討すべきこともあります。

8-1.慰謝料や損害賠償請求について任意交渉(裁判外の交渉)を行う

5ちゃんねるのように有名なインターネット掲示板で誹謗中傷されたり、悪評を書き込まれたりした場合、個人であればショックのあまり精神疾患にかかって通院せざるをえなくなることもあるでしょう。法人やお店であれば、売上に影響し、人材の採用が難しくなることもあります。

そういう場合は投稿者に対して慰謝料や損害賠償を請求できますが、請求はまず任意交渉で行います。最初から訴訟にしてしまうと、時間も費用もかかるうえに得られる賠償金額も50万円以下(20~40万円程度)と少額になることが多いのが現状です。相手方も裁判になると時間がとられたり自分が訴えられたことが明るみに出るリスクがあるので、裁判外で交渉すれば、訴訟よりも高い和解金を獲得できる可能性があります。ただし、理想とする賠償金が獲得できるかどうかは相手の資力にもよりますので、その点を頭に入れておいたほうがよいでしょう。

8-2.すぐに損害賠償請求訴訟に踏み切るほうが良いケースも

一方で、すぐに損害賠償請求訴訟に踏み切ったほうがよいケースもあります。それは、多くのユーザーから誹謗中傷の投稿が寄せられている場合です。特に有名人や企業などは交渉を待たずに相手方を提訴し、法的措置に踏み切ったことを公表することで、抑止力になることが期待できます。

たとえば、2019年にある女性作家がインターネットでの危害予告を受けて、講演やイベントに登壇できなかった事案がありました。彼女は警察に被害届を提出し、同時に発信者情報開示請求を行って投稿者を特定したのち、損害賠償請求訴訟を起こすことを明言しています。

訴訟における請求金額は、およそ100~300万円に開示費用を加えて設定されるケースが多く見られます。しかし、請求金額があまりにも高額になると炎上のリスクがありますし、早期に損害賠償金を得たくても回収に時間がかかることがありえます。そのため、諸般の事情を総合的に考慮して賠償金額を低めに設定することも戦略のひとつです。

※慰謝料や損害賠償金額の傾向については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

8-3.投稿者を刑事告訴する

投稿が悪質なときは、相手を処罰してもらうために、損害賠償請求だけでなく刑事告訴を検討することもできます。インターネット掲示板でのトラブルで相手方に刑事責任を問えるのは以下のようなケースです。

名誉毀損罪 具体的な事実を摘示しながら公然と相手方の社会的評価をおとしめる行為のこと
侮辱罪 具体的な事実を摘示せずに公然と相手方の社会的評価をおとしめる行為のこと
脅迫罪 本人や親族の生命や身体、財産などに対して危害を加えることを告げて脅迫すること
信用毀損罪 虚偽の情報を流すことで対象となる他人の信用を無くしてしまう行為のこと
偽計業務妨害罪 ウソの情報を流すことにより、相手方の業務に支障が出たり売上が著しく下がったりすること
威力業務妨害罪 犯罪予告などをすることにより、相手方の業務に支障が出たり売上が著しく下がったりすること
著作権侵害罪・肖像権侵害罪 他人の著作物や写真などを無断で利用したり、それらを自分のもののように転載したりすること

この中で、脅迫罪や業務妨害罪については命にかかわることもあるので、警察が迅速に動いてくれる傾向にあります。一方、名誉毀損罪や侮辱罪では、投稿文に実名が記載されていない限りあまり積極的に動いてもらえないことが多いのが実情です。

しかし、ある女性タレントが約3年にわたり「流産しろ」「窃盗していた」などと誹謗中傷する内容を書き込まれていた事案では、そのタレントが発信者情報開示請求を行って投稿者を刑事告訴し、2020年3月に投稿者の女2人が侮辱罪の容疑で書類送検されています。

9. 5ちゃんねる(5ch)投稿者の特定は弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください

5ちゃんねる(5ch)投稿者の特定は弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください

5ちゃんねるで自分自身や自分の会社を誹謗中傷する投稿によって何らかの被害を受けたときは、ネット上のトラブルに関して知識やノウハウを持つ弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士を立てると、5ちゃんねる(5ch)や投稿者がインターネット契約を結んでいるプロバイダが削除や発信者情報開示請求に素直に応じてくれることが期待できます。

弁護士法人アークレスト法律事務所では、5ちゃんねるでの投稿削除や投稿者特定の実績も豊富です。5ちゃんねるでの誹謗中傷にお困りの方はお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。