企業の風評被害

GoogleMap(グーグルマップ)に書かれた悪評口コミ・レビューの削除基準と削除依頼方法|弁護士監修記事

2019.11.09
GoogleMap(グーグルマップ)に書かれた悪評口コミ・レビューの削除基準と削除依頼方法|弁護士監修記事

GoogleMap(グーグルマップ)は、無料で企業や店舗の情報を掲載できるため、多くの中小企業や飲食店、クリニック等の事業主に使用されています。
しかしながら、閲覧者が自由に口コミを投稿できるため、悪評・誹謗中傷などが記載されることも少なくありません。ネガティブな口コミを放置しておくと、風評被害により売り上げの低下や顧客の減少などの悪影響が生じる恐れがあります。
Googleは「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」によって、投稿内容に制限をかけており、それに反するものについては削除に応じるとしています。ところが、ポリシーに反していると判断するまでに時間がかかるため、即座に削除されるとは限りません。また、Googleが「削除に値しない」と判断することも十分に考えられます。

そこで本記事ではGoogleMap(グーグルマップ)に書かれた悪評などの口コミの削除基準や削除方法を詳しく解説していきます。

1.GoogleMap(グーグルマップ)の口コミ機能とは

まずは、Google Map(グーグルマップ)の口コミ機能の概要を説明します。Google Map(グーグルマップ)の口コミとは、Google Map(グーグルマップ)上に表示される施設についての口コミを、Googleアカウントを保有しているユーザーが自由に投稿できる機能です。

GoogleMap(グーグルマップ)は、観光スポットや飲食店などの目的地に向うためのルート検索のためにスマホで使われることが多く、そこに掲載される店舗情報や口コミの影響力は非常に大きくなります。

GoogleMap(グーグルマップ)の利用率は、公式には発表されていないものの、株式会社テスティーが「地図アプリに関するNPS調査」で、目安となる数字を公開しています。調査結果によると、地図アプリの利用率は73.6%で、そのうちGoogle Map(グーグルマップ)の割合は77.5%でした。つまり、調査母数の6割近い人がGoogleMap(グーグルマップ)を使っているのです。GoogleMap(グーグルマップ)は、地図データの精度が高くスマートフォンでの操作性も良いことから多くの人に支持されています。

権威あるGoogleに掲載されている口コミ情報は、多くの人がレストランや飲食店などの店選びや、近くの病院や歯医者などのクリニック選びの参考にします。高評価の口コミより低評価の口コミや批判口コミは、多くの人の目に触れるものです。事実無根の悪評や名誉毀損に該当する口コミも掲載されており、時には当該スポット施設の信頼を損ない風評被害を発生させる口コミも存在します。

星1つが最低評価

評価方法は「5段階の星」をつける方式で、星1つが最低評価、星5つが最高評価となります。それぞれの口コミに、「いいね」ボタンが付いており、「いいね」を押された回数は、口コミの信ぴょう性を高める働きもあります。星1つの口コミに多数の「いいね」がつけられると、その口コミがあたかも事実であるかのように錯覚されるので、イメージダウンによる風評被害は計り知れません。

とある大手企業のGoogleMap(グーグルマップ)上の情報には、様々な誹謗中傷とも言える口コミが書き込まれていました。「残業が多い」、「従業員に犯罪者がいる」、「料金が不当に高額だった」、「ビルが建ったせいで風が吹かなくなった」、「クソ企業」など、到底口コミとはいえないものばかりです。中には「建物の前を通過して中に入っていない」という趣旨の口コミとともに星1つの評価がなされているものもあります。

また、Google Map(グーグルマップ)の口コミには「評価の低い順」に並び替える機能が付いており、誰でも簡単にネガティブな口コミを閲覧可能です。何の根拠もない誹謗中傷等を放置しておくと、風評被害の発生は避けられないでしょう。

1-1.自分が経営する病院・美容室・パン屋が標的になったら…

GoogleMap(グーグルマップ)で悪い口コミが掲載されると、その口コミで発生する風評被害は計り知れません。下記のような、悪評が書き込まれた場合、口コミを見たユーザーにマイナスイメージを与えます。

GoogleMapクチコミ
GoogleMapクチコミ
GoogleMapクチコミ

クリニックや歯医者、美容院といった、接客業においては、技術や態度などの悪評は致命的です。またパン屋などの飲食店においても、味や接客に関するネガティブな口コミは、客足に大きな影響を与えると考えられます。

上記のような口コミは、事実無根であるならば、名誉毀損信用毀損などに該当する可能性がありますので、速やかに削除を求めなければなりません。

2.GoogleMap(グーグルマップ)の口コミとは

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミとは

GoogleはGoogleMap(グーグルマップ)に口コミ機能を搭載した狙いについて、次のように説明しています。

  • さまざまな人が口コミ機能を使ってその場所を評価できる
  • GoogleMap(グーグルマップ)のユーザーに「静か」「にぎかやか」「ロマンティック」といった情報を提供できる
  • 口コミはユーザーに自発的に無償で提供してもらっている(Googleは投稿者に報酬は支払わない)

Googleの説明の全文は下記のサイトで確認できます。

GoogleはGoogleMap(グーグルマップ)の口コミを、善意のユーザーだけが集まり有効な情報をやりとりするサイト上のコミュニティと想定していると考えられますが、実際は匿名掲示板のように、誹謗中傷や悪口などを投稿する場になっていることが少なくありません。

3.GoogleMapの口コミの使い方

病院・歯医者・美容室・飲食店・企業の悪評がGoogleMap(グーグルマップ)上で広がってしまう要因の一つに、容易に匿名での口コミの投稿が出来るという点があります。Googleは「匿名ではGoogleMap(グーグルマップ)の口コミには投稿することはできない」としていますが、実際は架空のGmailアカウントを作成することで、偽名での投稿は可能です。Gmailは、一人で複数のアカウントを作成することが可能であり本人確認書類の提出は不要ですので、ネガティブな口コミを投稿するためだけにアカウントを取得するユーザーも存在します。

4.GoogleMap(グーグルマップ)の口コミ削除基準

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミ削除基準

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミについて、Google社は「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」に禁止されている投稿やコンテンツについて規定しています。主な禁止投稿がこちらです。

  • 悪意があったり暴力的だったり内容が不適切な投稿
  • スパム投稿
  • 実体験を伴わない評価
  • 政治や社会的な主張の表明
  • 違法な投稿(性的なもの暴力的なものなど)
  • 権利を侵害している投稿
  • 中傷的な投稿
  • 現在、もしくは過去の勤務先の口コミの投稿

これらに該当した投稿は、Googleが自動的に検出、もしくはユーザーからの削除依頼によって削除します。それぞれの概要を確認しましょう。

悪意があったり暴力的だったり内容が不適切な投稿

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミでは、わいせつな言動や不適切な言葉を使った投稿を禁じており、発見されると削除の対象となります。

スパム投稿

同一の内容を何度も投稿するスパム行為も禁じられています。同じ口コミを複数のアカウントから投稿する行為も削除できる可能性があります。

実体験を伴わない評価

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミは、実体験に基づいたものに限定されております。

政治や社会的な主張の表明

口コミ欄を用いて、政治的なこと、社会的なことを主張することは禁じられています。国会議事堂の口コミ欄にはこのポリシーに反するものが多数投稿されますので、施設の運営者が削除を申請すれば認められる可能性も考えられます。

違法な投稿(性的なもの暴力的なものなど)

臓器売買や人身売買などに関する投稿や、性的虐待に関する画像や投稿、違法薬物やテロリストに関する投稿も禁止されています。

危険な投稿、中傷的な投稿

他人に危害を加えると脅す投稿や、個人を中傷する投稿も禁じられています。例えば「早く店を閉店させなければ、放火してやる」という口コミは、こちらのポリシーに違反していると考えられます。また、性別や人種、性的指向などに関する差別的な投稿も削除対象です。名誉毀損信用毀損に該当する投稿もこちらに含まれると考えられます。

現在、もしくは過去の勤務先の口コミの投稿

現在の勤務先や経営している会社、または過去の勤務先などに関する投稿は公平性が保たれないため、禁止されています。過去のアルバイトが辞めさせられた腹いせにネガティブな口コミを投稿する行為は、こちらに該当しますので削除が認められる可能性があるでしょう。

5.GoogleMap(グーグルマップ)の削除依頼の手順

GoogleMap(グーグルマップ)の削除依頼の手順

次に、GoogleMap(グーグルマップ)の口コミの削除依頼の手順を解説します。GoogleMap(グーグルマップ)口コミの削除依頼は、ビジネスオーナーおよび第三者による依頼が可能です。

5-1.ビジネスオーナーが削除を依頼する方法

  1. Googleマイビジネスにログインする
    Googleマイビジネスにログインして、該当口コミにアクセスします。
  2. 「その他アイコン」から「不適切なコメントを報告」
    該当する口コミを選択して「不適切なコメントを報告」クリックします。不適切なコメントの種類などを記載するフォームが表示されますので、不適切だと判断した基準を選んだ上で、報告しましょう。

5-2.第三者が削除依頼する方法

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミでは、第三者が削除を依頼することも可能です。

  1. GoogleMap(グーグルマップ)を開いて当該施設をタップする
  2. 該当する口コミを選択
  3. 右上の「その他アイコン」をタップして「クチコミを報告」を選択
  4. メールアドレスと違反の種類を選択
GoogleMapクチコミ

上記Mapは、国会議事堂の投稿を表示してありますが、ポリシーに違反してあるものは、国会議事堂のオーナーでなくても、削除依頼が可能です。

6.評価や評判に関するレビューは削除されない事もある

Googleは、ポリシーに反する投稿は削除するとしており、削除フォームを設けているものの、評価や評判に関するレビューは、削除に応じないケースが少なくありません。例えば「この店のパンがまずい、二度と食べたくない」という投稿がなされた場合、その投稿は主観によるもので、事実かどうかの判断ができません。ポリシーでは、体験に基づくものに対する投稿は許可するとされており、虚偽の投稿は禁じています。

「パンがまずい」という投稿が虚偽であるかどうかは、Googleは判断できませんし、第三者やビジネスオーナーが反論したところで「おいしいこと」は立証できません。そういった事から、味や体験に関する評価や評判は削除されにくい傾向にあります。

6-1.削除が認められるまでには時間がかかる上に確実ではない

Googleには日々膨大な削除申請が送られており、1つ1つについて削除するかどうかが判断されておりますので、削除が認められるまでにはある程の時間を要します。そもそもGoogleMap(グーグルマップ)の口コミは自動でポリシーに違反する投稿を検知する仕組みを備えておりますので、投稿が表示されている時点で判断に迷う投稿であると考えられます。

前述したように、主観に基づく体験は削除の対象とされないなどの傾向があり、Googleへの削除依頼は口コミ対策としては確実ではありません。

7.Googleに依頼しただけではGoogleMap(グーグルマップ)口コミの悪評を完全に削除することは不可能

Googleに依頼しただけではGoogleMap(グーグルマップ)口コミの悪評を完全に削除することは不可能

これまでお話ししたように、GoogleMap(グーグルマップ)の口コミは以下の2点の特徴から、削除は難しくなっております。

  • GoogleMap(グーグルマップ)の口コミに悪口を書くことは容易である
  • Googleの削除フォームでは、GoogleMap(グーグルマップ)の口コミを完全に削除することは難しい

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミの削除は、Googleの削除基準に則って削除するかどうかが判断されます。削除基準に達しているかどうかを判断するのもGoogleですので、ビジネスオーナーや第三者による削除依頼が全て認められるわけではありません。

ただし、当該口コミが、日本の各法律に抵触している場合は、削除依頼が認められる可能性があります。

8.削除基準に合致しなくても削除出来る場合

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミに書かれた根拠のない誹謗中傷や、侮蔑のコメントは刑法に違反する可能性があります。その場合は、上記の削除依頼とは別の方法で削除が認められる可能性があります。代表的なものが名誉毀損に該当するケースです。

8-1.名誉毀損罪に該当する口コミとは

刑法230条では「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています。これを「名誉毀損罪」といいます。

名誉毀損罪が成立するためには以下の条件をクリアしていなければなりません。

  • 事実の摘示であること・・真実を確かめることができる事柄かどうか
  • 公然と・・公共の場所、多くの人の目がある場所での発言や投稿
  • 名誉を毀損する・・社会的な評価を下げること

名誉毀損罪に問うための前提として、「事実を摘示」しているものでなければなりません。例えば「このお店のオーナーは前科者だ」という投稿は、オーナーが何かしらの犯罪で有罪になったことがあるかどうかを確認することができますので、「事実の摘示」と言えます。しかし、「このお店のオーナーはバカだ」という投稿は、オーナーがバカという事実を確認するすべがありませんので、事実の摘示とは言えず名誉毀損罪に問えない可能性が高いでしょう。ただし、名誉毀損罪ではなく侮辱罪に問える可能性があると考えられます。

また、投稿が真実であっても、対象人物の社会的評価を下げるものであれば、名誉毀損です。ただし、投稿が真実でその投稿に公共性や公益性があると認められる場合は、名誉毀損罪が成立しない可能性があります。例えば以下のような投稿です。
「このお店は従業員が手を洗っておらず、年に何度も食中毒を起こしている」
この投稿が真実であれば、公共性や公益性があると判断されて名誉毀損罪には該当しない可能性があります。

名誉毀損以外にも、侮辱罪に該当する場合も削除の依頼が可能ですが、その侮辱が悪質とまでは言えない場合には、削除依頼が拒否されることもあります。

9.弁護士が削除依頼する方法

弁護士が削除依頼する方法

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミの削除はこれまで説明したように、削除の依頼が認められにくく、また時間を要するため、Googleの対応を待っていると風評被害が拡大してしまい、経営に大きな影響を与えてしまう可能性があります。
そこで有効になるのが弁護士による削除依頼です。弁護士による削除の方法は大きく分けて以下の2通りがあります。

9-1.Googleに直接削除を依頼する

Googleでは、該当投稿からの削除依頼だけでなく、「法律に基づく削除に関する他の問題を報告する」というフォームが用意されています。こちらは、該当口コミを指定した上で、抵触している法律の条文を引用した上で説明しなければなりません。
個人で行うことも可能ですが、抵触する法律がどの法律のどの条文であるかを判断した上で説明しなければならず、日頃から各種法律に携わっていなければ正しい削除依頼は困難です。
また、GoogleMap(グーグルマップ)の削除依頼は、スピードが重要ですので弁護士に依頼するのが最適でしょう。

9-2.裁判所に削除を申し立てる

Googleが、上記の削除依頼に応じない場合は、裁判所に削除命令を出してもらうべく申し立てることも可能です。裁判所が削除を認めれば、削除の仮処分決定が下され、悪評口コミは削除されます。この場合は、口コミに違法性が認められなければなりませんので、まずは弁護士に、該当する書き込みが法律に抵触しているかどうかを問い合わせてみましょう。

9-3.GoogleMap(グーグルマップ)への書き込みが抵触する可能性がある罪

GoogleMap(グーグルマップ)に書き込まれた根拠がない悪評は以下の法律に抵触していることが少なくありません。

  • 名誉毀損罪・・「この美容室では客の髪を拭くタオルを洗わずに使い回している」(嘘である場合)
  • 侮辱罪・・「〇〇クリニックのオーナーは無能でヤブ医者だ」

これらの罪に該当する場合は、裁判所に削除を申し立てることができるだけでなく、警察に被害届や告訴状を提出することで、投稿者に刑事罰を課すと同時に、損害賠償を請求できる可能性もあります。

10.まとめ~解決できないときは弁護士に相談を

GoogleMap(グーグルマップ)の口コミは、容易に投稿できる上に拡散力が高く社会的影響が大きい媒体です。ですが、複数アカウントの作成などにより匿名で投稿が可能であることから、誹謗中傷や根拠のない悪口が書き込まれることが少なくありません。 それらの投稿は、多くのユーザーが閲覧しますので、悪評を放置しておくと風評被害が発生して事業運営に支障をきたす可能性もあります。

現在、GoogleMap(グーグルマップ)に悪評が書き込まれている場合は上記の削除方法で迅速に削除を依頼する、もしくは弁護士に相談して一刻も早く口コミを削除してもらいましょう。ご自身で削除を成功させる自信がない、時間的余裕がない、確実に削除したいと考えている方は弁護士法人アークレスト法律事務所までお問い合わせください。投稿の違法性や削除の可否を含め、しっかりと状況を確認した上で、適切なアドバイスをいたします。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。